80-35 報告、追加
「帳簿には、『魔導大戦』末期における資材の量が記されていました」
「ふむ、兵器開発をしているのなら、必ず物の流れが生じるからな」
「はい。主なものは鉄で、2500万トン。銅が90万トン、錫が30万トン……でした」
「な、な、なんという量だ……」
宰相はその数値に驚きを隠せない。
「昨年のセルロア王国における鉄の生産量は20万トンですぞ? その100倍以上とは……」
もっとも、魔法のある世界における鉄の用途は、現代日本のあり方からは想像できないであろう。その逆もまた然り。
アルスでは、一般的な剣、鎧冑、盾などの武器、鋤・鍬などの農具、金槌・金床・釘・鍋・車軸などに使われる。
もちろんゴーレムにも。
また、フランツ王国へも輸出されている。
その総量が20万トンである。
これは西暦1700年代後半〜1800年代前半のイギリスと同レベルである。
ちなみに同じ頃、銅の生産は1万トンくらいであったようだ。(この間の伸びが著しいので何年頃、と特定はできない)
「ですので、鉄もしくは鋼で巨大な兵器を作ろうとしたのではないかと想像しております」
「ううむ……アーノルト殿の推測が当たっているとしたら、どこかに巨大な兵器が埋もれているということか……」
宰相は身を震わせた。
「探すことはできるのでしょうかな、ジン殿?」
「そうですね……鉄でしたら、『磁力』を応用して探すこともできそうですが……巨大な建造物と仮定して、ですが」
「なるほど……」
「それ以上に、探索範囲が広すぎるのが問題ですね」
「それは確かにそうですなあ」
「僕としては、先に土地の浄化を進めた方がいいのではないかと思うのですが」
「アーノルト殿はそういうご意見ですか」
「ええ、荒れた国土を元のような肥沃な大地に戻したいと思っていますよ」
その言葉に国王ボザールが微笑んだ。
「ありがたいな。国家は変わっても、国土は変わらない。人が作った国家ではなく、人を育む国土を愛しているのだな、アーノルト殿は」
「え、ええ、はい」
「われわれも見習わなくてはな。本当に守るべきなのは国家という人が作った組織ではなく、国土という人を育む環境なのだろう」
アーノルトの言葉に、国王ボザールは何かを感じ取ったようであった。
ちょっとしんみりした雰囲気の中、仁が発言した。
「ええと、実は、お話ししておくことがもう1つありました」
「何だね、ジン殿?」
「クゥプ南にある島の施設『島基地』と『ルトグラ砦地下の基地』についてです。マキナと協力して調査していましたが、大体のところがわかりましたので」
それを聞いて、宰相は興味深そうに頷いた。
「あの時はショウ・ノリジという兵士が功を上げましたな」
「マキナ殿とレイ殿が救援してくれたのだった」
「そうでしたな、陛下。マキナ殿から中間報告を聞いてはいましたが……」
そんな宰相に、仁が説明する。
「はい。最終的な報告ができると思いますよ。閣下、陛下」
「おお、聞かせてもらおう、ジン殿」
「はい。……まず、『捜理協会』と関係していたことはご存知かと思います」
「うむ。なんでも、その施設から『麻薬』に使える植物の種を持ち出したと聞いている」
「はい」
そして仁は、施設について説明した。
時系列に沿っての説明では、『忍部隊』の説明をしないわけにはいかなくなるので、判明したことを列挙していくような形にする。
『島基地』で、『ユミィ』と『ヴェラ』という青髪の自動人形を発見、修理したこと。
その2体の協力で施設内の調査が効率的に行えたこと。
当該施設は、『ルトグラ砦』のゴーレムによって資材の略奪をされていたこと。
また、『アヴァロン』を巻き込んでのゴタゴタについても少しまとめる。
デウス・エクス・マキナ3世と連携しての情報、という建前だ。
『ギガース改』が起動したこと。
『ルトグラ砦』地下の調査を『アヴァロン』関係者が行った際、『北方民族』の血を引くものがおり、それを感知して魔導頭脳が暴走したこと。
このあたりは、『王家の魔力パターン』を測定させてもらった際にも少し説明していた。
「おお、その頃、王国議会では、『捜理協会』と『公平党』をどうするか、について意見が戦わされていた頃だな」
国王ボザールが言った。
しかし、紛糾するだけでまったくまとまりが付かなかったという苦い思いもある。
「確か、『『北方民族』を敵と見なしたままの魔導頭脳では百害あって一利なし』とマキナ殿は言っておったな」
「はい、陛下。……それで、先日命令権を設定した、あれに繋がるのです」
魔導頭脳を、情報はそのまま残し、思考・制御部分を新造したわけである。
その際、『イザーク』が暴走したことについては触れないでおく。
「なるほど、それで繋がった」
「説明感謝する、ジン殿」
「いえ。……ちょっと時系列順ではない説明になってしまいましたが、何か、不明な点はありますか?」
あえて幾つかの点をぼかして説明した仁なので、何か聞かれるだろうと思っている。
「そうだな。……その『島基地』だが、今後どうすればいいかね?」
「場所が場所ですので、所有権はこちら、セルロア王国としつつ、『維持管理』は『アヴァロン』に移管したらいかがでしょうか」
「うむ。……それも手だな」
ここで国王が仁に質問を行う。
「ジン殿、その……『島基地』か? 『島基地』の機能はどのようなものであったのだ?」
「ああ、その説明が抜けておりましたね。申し訳ないことをしました」
そして仁は『島基地』について説明を行うのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は『蓬莱島の工作箱』も更新しております。
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お楽しみいただけましたら幸いです。
20210818 修正
(旧)デウス・エクス・マキナ3世と共有しての情報、という建前だ。
(新)デウス・エクス・マキナ3世と連携しての情報、という建前だ。




