80-34 報告とこれからと報告と
「さて、この後どうする?」
地下施設をひととおり確認した後、仁Dがアーノルトに尋ねた。
「そうだな、一応気は済んだよ」
「そうか。それじゃあ、一旦『ハリケーン』に戻ろうか」
「うん、それでいい」
そういうわけで、一行は来たときと逆のルートを通り、岩の割れ目へ。もちろん『コマンド1』と『ミニモグラ』も一緒である。
ちなみに、地下施設にはもう見るべきところがないことは、老君が『覗き見望遠鏡』で確認済みである。
「ここの出入り口だが、もう少し深く埋めておこうか?」
岩の割れ目を出る前に、仁Dがそう提案した。アーノルトは頷く。
「うん、その方がいいな」
「よし」
周りから土や砂利を持ってきて埋めていく仁D。作業は礼子がほとんど行った。
5分ほどで終了。
「これで、地下へ行くにはより手間がかかるようになったな」
「まあまあ安心できるだろう」
偶然見つけられる心配がぐっと減ったわけである。
仁たち蓬莱島勢なら『転送機』で内部に転移できるので問題ない。
そして、いずれ近いうちにアーノルトたちにも打ち明けるつもりの仁なのである。
* * *
『ハリケーン』に戻った仁Dは、仁と交代した。一時的に老君と操縦を代わり、転移門で蓬莱島から戻ってきたわけだ。
念のために仁Dは『ハリケーン』に残しておいたが。
「お、ジン本人に戻ったな」
「ああ。ここは安全だからな」
少し落ち着こうと、仁はお茶にすることにした。もちろん礼子が淹れた。
「この『緑茶』って美味いね」
「気に入ってくれて何より」
少し寛いだ後、仁が言う。
「そろそろ夕方だ、一度、王城へ報告に戻ろう」
「ああ、そうだね」
今回の調査はセルロア王国国王からの依頼なのだから、キリのいいところで報告するのは妥当である。
そこで『ハリケーン』は首都エサイアを目指した。
* * *
首都エサイアまでの距離はおよそ200キロ、『ハリケーン』は現地時間午後4時半に王城に到着した。
ここのところ何度も訪れているので、上空を守護する飛行船部隊も慣れっこになってきたようで、『ハリケーン』はスムーズに王城内に着陸できたのである。
「ジン殿、アーノルト殿、お疲れさまですな」
宰相ダインが一行を出迎えた。
「調査が終わりましたので陛下に報告をしようとやってまいりました」
と仁が言うと、宰相ダインはびっくりした顔をする。
「なんと! もう終わりましたか! さ、さすがですなあ」
そして、この日はもう国王の執務時間は予定でいっぱいなので明日の朝一番でお願いしたい、と告げた。
「ええ、いいですよ」
「僕も構いません」
仁とアーノルトが承知したので、宰相は一行を前回と同じ貴賓室に案内し、ゆっくりしてくれ、と言って立ち去った。
それぞれ礼子とチェルがいるので王城の侍女は付かなかった。
「まあ、明日までのんびりしよう」
「はい、お父さま。……入浴なさいますか?」
「ああ、そうだな」
「お背中、お流しいたします」
……と、仁たちが寛いでいる同じ頃、アーノルトとチェルものんびりしていた。
「今日も楽しかったよ」
「アーノルト様が楽しそうで何よりです」
「そうか」
「はい。わたくしは、アーノルト様がご満足ならば、何もいりません」
「ありがとうな、チェル」
……と、そんな会話をしながら入浴していたのであった。
* * *
そして翌日、つまり2月最後の日、30日。
午前8時半、仁たちは馴染んだ小会議室にいた。
出席者は国王ボザールと宰相ダイン、それに仁たち(仁、礼子、アーノルト、チェル)である。『コマンド1』はいない。
「まずはジン殿、アーノルト殿、素早い調査と報告、感謝する」
宰相ダインがそう告げて、報告会が始まった。
「まずは、『オノユニ山』の真西にあると思われた地下施設ですが……」
スポークスマンはアーノルトが務める。
「ふむ、施設へ行く転移魔法陣がなくなっていたというのに、そんな方法で……さすがとしか言いようがないな」
「おそれいります。……で。そうして訪れた地下施設では、土木工事用と思われる機械の一部があったくらいです」
「そうなのか?」
「はい。……ですが、もう1つ、重大な発見が」
「それは?」
「『最終兵器』を作っていたと思われる施設に関する情報です」
『最終兵器』。この単語に、宰相と国王は仰天した。
「何だと!?」
「なんですと?」
「あ、いえ、『最終兵器』と言っても、そういう開発名だと思われます。……当時は、『究極兵器』とか『最強ゴーレム』などという威勢のいい名称を開発プロジェクトに付けることがはやっていましたから」
「そうなのか? ……まあまあ納得できる話ではあるが」
「はい。……それで、その場所は『ボーダー川』の『源流部』らしいことがわかったのです」
ここで一時的に仁が説明を受け継ぐ。
「そういうわけで、時間もまだあったため、『ハリケーン』で当該場所へと行ってみたんです」
「ふむ、なるほどな」
「それで、一応その施設も発見しました」
「おお! さすがだな」
「さすがのお2人ですなあ」
「そこで見つけたのは……ええと、『飛んでいって相手にぶつかると爆発する矢』『遠距離を攻撃できるバリスタのようなもの』『狙った相手を追跡して飛び、ぶつかると爆発する槍』みたいなものです」
仁は『バズーカ砲』『攻撃砲』『ミサイル』を、こういう言葉で説明したのである。
「ううむ……なんだ、そのとんでもない兵器は?」
「おそらく未完成ですが、『魔導大戦』末期に開発が進められたものです」
「うむ……」
仁はここで提案を行う。
「こうした兵器は『アヴァロン』に移管したほうがいいのではないかと思いますが」
「うむ……そうであろうな。我が国が所持していても使い途がないし、他国からあらぬ疑いをかけられるのも避けたいからな」
国王ボザールはあっさりと決定したのだった。
「それがいいでしょうな」
そして、宰相ダインも、国王の考えを肯定する。
「まあ、どんな物なのか、ちょっとだけ調べさせてもらうくらいは要求したいですがね」
「そうでしょうね」
仁は笑って頷いた。
「その時は、俺とアーノルトも同行させてもらいますよ」
「おお、それはありがたい」
これで報告は終わり……ではなく、もう1つあった。
「あと、見つけた帳簿について報告します」
「そんなものがあったのか……」
少し興味を惹かれた国王と宰相であった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210817 修正
(誤)「ふむ、施設へ行く転移魔法陣がなくなっていたにも関わらず、そんな方法で……さすがとしか言いようがないな」
(正)「ふむ、施設へ行く転移魔法陣がなくなっていたというのに、そんな方法で……さすがとしか言いようがないな」




