表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
80 新たな仲間篇
3045/4345

80-31 戦時式

 通路東側の扉を開いた先にあったもの。


「これは……」


 それは、試作ゴーレムの廃棄場所とでもいうべき部屋だった。


「ひどいな……」


 戦闘用と思われるゴーレム。

 中には、アーノルトが知らない型のものも多数あった。

 そして、1体だけ、場違いな形式……汎用というより日常の雑務用と思われるゴーレムがあった。


「全部で13体か……」


 戦闘用ゴーレムは12体。

 うち9体は、アーノルトも知っている型であったが、残る3体は見たこともない型であった。

 既知の型のものは腕や脚が欠けており、動きそうもないが、残った3体は一応五体満足に揃っている。


「ここで開発されたものかな?」


 興味深い発見に、アーノルトの技術者魂が騒いだ。

 ちょっと調べてみよう、と五体満足なゴーレムに近づいた。

 その瞬間。


「!」


 雑務用ゴーレムが腕を持ち上げたのである。

 とっさに後ろへ飛んで距離を取るアーノルト。

 だが、攻撃ではなかった。


 そのゴーレムの手には、『魔結晶(マギクリスタル)』が2つ、握られていたのである。


「受け取れ、というのか?」


 アーノルトの声が聞こえたのか、ゴーレムは頷くような仕草を見せた。

 それで、アーノルトはゆっくりとゴーレムに近づき、その魔結晶(マギクリスタル)を受け取った。

 魔結晶(マギクリスタル)が手から離れた瞬間、そのゴーレムは崩れ落ち、動かなくなったのである。


「この雑務用ゴーレムは、誰かに魔結晶(マギクリスタル)を渡すためにずっと待っていたのかな?」

「そう、かもしれませんね、アーノルト様」


 他のゴーレムは動き出す気配がない。油断はできないが。


 そこでアーノルトは受け取った魔結晶(マギクリスタル)を2個とも一旦チェルに預け、戦闘用ゴーレムを調べてみることにした。


「ふむ……内骨格系のゴーレムだな……メインフレームは既知の形式だが、より洗練されている……か。僕の知るものよりも高性能だな」


「時間を掛けていられないので、ざっと見るだけになるのが残念だな」

「またのちほど、ごゆっくり解析なさってください」

「そうだな」


 チェルの助言に従い、アーノルトはゴーレムの解析を打ち切り、施設の調査を再開した。

 その部屋はゴーレム以外になかったので、廊下を挟んで反対側の部屋を見てみることにした。


「こちらも……似たようなものか」

「ですが、こちらの部屋は、なんというか……」


 反対側の部屋もゴーレム倉庫であった。

 前の部屋と違う点は、こちらのゴーレムは全てアーノルトが知らない形式だったということ。

 また、戦闘用には見えないゴーレムが半数を占めていたこと、である。


「戦闘用が5体、汎用が5体、か」

「ぱっと見ただけで内骨格だということがわかりますね」

「そうだなあ。……おそらく全部『アドリアナ式』だ」


 魔導大戦中期には、ゴーレムの製造は量産性重視となったため、『アドリアナ式』は採用されなくなっていったのである。


「『外骨格式』は量産に向くからね……」


 骨格と装甲を共通にできるという利点があり、製作期間の短縮に寄与していた。


 だが、ここに並んでいるゴーレムは、全て『アドリアナ式』であろうと思われた。


「いや、『アドリアナ式』はある意味万能型だよね。でも、ここの戦闘用ゴーレムは、『アドリアナ式改』……いや、『簡易アドリアナ式』とでも言う形式に見える」


 アーノルトが見たところ、可動域をせばめてでも部品点数を減らし、構造の脆弱性を改善しようとしているようであった。


*   *   *


「興味深いな」


 『コマンド1』の視覚を通じ、仁もまたアーノルトが見たものを見ていた。


「『アドリアナ式』は動作がなめらかになるし、自由度が高いし、制御もしやすい。だが、製作と調整に職人技が要求されるんだよな」


 それを事もなげにこなしてしまう己のことは棚に上げ、仁が呟いた。


「あれは、以前『ロッテ53型』で使われ、『アヴァロン』でも一般化しつつある『簡易アドリアナ式』ともちょっと違うな」


 仁としては『簡易アドリアナ式』とは呼びたくない、と感じた。


「かといってアドリアナ式『改』でもないんだよなあ」


 全体的な性能では劣っているので『改』とは呼びたくない仁であった。


「『疑似アドリアナ式』……駄目か。『似非えせアドリアナ式』……うーん……」

「お父さま、いい呼び方が思いつかないのでしたら、そのまま『戦時用』を付けたらいかがでしょう」

「『戦時用アドリアナ式』か……まあそれでいいかな」


 名前に拘りすぎても本末転倒なので、とりあえず『戦時用アドリアナ式』にしておく仁であった。


*   *   *


「なるほど、『戦時用アドリアナ式』かい」


 『コマンド1』から仁の命名を聞いたアーノルトは頷いた。


「まあ名前はそれでいいけど、注目すべきはここだな」


 アーノルトは戦闘用ゴーレムを指差した。


「全部サイズが少しずつ違う。身長でいうと1.8メートル、2メートル、2.5メートル、3メートル、2.7メートル、となっている」


 これはおそらく最適な大きさを模索した結果だろう、とアーノルトは結論づけたのだ。


「大きい方が強いかというと、一概には言えないからね。大きくなりすぎると鈍重になるし……」


 ここの研究者たちは2.7メートルが最適値だと判断したのだろう、とアーノルトは思ったのである。


*   *   *


「それじゃあ、次の部屋へ行こう」


 そしてアーノルトとチェルは廊下の突き当たりにある部屋へ。

 転移魔法陣のあったホールの壁に掲げられていた見取り図では、ここが最後の部屋である。


 扉に鍵は掛かっておらず、簡単に開いた。


「お、やっぱり工房だったね」

「はい」


 あるいは研究室、と言ってもいいかもしれない。

 作業台が6つもあり、そのうち3つには作りかけの魔導機(マギマシン)が載っていた。


「これは……『砲』かな?」


 直径30センチはありそうな筒が回転する台座に付いている。

 長さは60センチほど、砲身だとしたら短いな、とアーノルトは思った。


「これも砲かなあ」


 別の作業台の上にあったのは、直径10センチ、長さ1メートルほどの筒。

 もちろんいろいろな付属部品が付いており、仁なら『バズーカ砲』あるいは『ロケットランチャー』とでも言ったであろう外見をしている。


「ゴーレムに持たせる武器かな」


 人間が持つには重すぎる、とアーノルトは思った。


 そして3つ目の作業台の上に載っていたのは……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。

     https://ncode.syosetu.com/n5250en/

     お楽しみいただけましたら幸いです。


 20210814 修正

(誤)その部屋はゴーレム以外になかったので、廊下を挟んで反対側の部屋を見てることにした。

(正)その部屋はゴーレム以外になかったので、廊下を挟んで反対側の部屋を見てみることにした。


(旧)だが、製作と調整に職人芸が要求されるんだよな」

(新)だが、製作と調整に職人技が要求されるんだよな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] オノユニ西施設に転がっていたアクチュエーターが、「なんだかムーバ○ルフレームっぽい」と思ったら。 [気になる点] >「これは……『砲』かな?」 つまり、魔導大戦時には『爆発力か何かで物体を…
[一言] 研究開発が行われていた当時のまま残ってるとは これは調べ甲斐がありますねえ
[一言] >可動域を狭めてでも部品点数を減らし、構造の脆弱性を改善しようとしているようであった。 いわゆる戦時設計ってやつか。 劣化して原型を留めてなさそうだけど、木と魔導樹脂で中身を作ったものもあ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ