80-29 源流部
チェルによる、『隠し扉』の正体看破。
それは、
「これ、多分『掃除用のロッカー』です」
「なんだって……」
その内容に、肩の力が抜けるアーノルト。
『ハリケーン』で様子を見ていた仁もガクッと来た。
「おそらく、この中に掃除用ゴーレムも格納されていると思います」
「……チェルが言うんだからそうだろうな。でも、どうしてわかったんだ?」
「いえ、こうした施設のロッカーは得てしてこういうものなので」
「そ、そうか」
「開けるのでしたら、多分この辺にロック解除のレバーが……ああ、ありました」
ロッカー下方の右側に、指が入るくらいの四角い穴が空いており、そこに人差し指を差し込んで中のレバーを軽く引くと、かちゃりと音がして扉が開いた。
「開きました」
「……本当に掃除用具入れだったな……しかし、ここの掃除用ゴーレムは人型か……」
身長150センチほどの中性的な体格をしたゴーレムが2体格納されていた。
その他にホウキ、ちりとり、モップ、布巾などの清掃用具も。
「わかった、もういい。閉めてくれ」
「はい、アーノルト様」
チェルは『掃除用具ロッカー』を閉じ、帰り支度をする。
といっても、散らかした工房を元に戻すだけだ。
これはチェルの拘りであった。
そしてアーノルトとチェルは『コマンド1』と『ミニモグラ』を手に持って転移魔法陣を使い、地上へと戻ったのである。
* * *
「おかえり。ご苦労さま」
「ただいま。なかなか興味深かったよ」
「ただいま帰りました」
仁はアーノルトたちを労った後、『コマンド1』と『ミニモグラ』のメンテを行った。
「ご苦労だったな。まだ出番があるかもしれないから、ここにいてくれ」
「ハイ、ワカリマシタ」
それが済むと船室に戻り、アーノルトたちと打ち合わせである。
「なんだか、別の施設の情報があったようだな?」
「うん。チェルによると『最終兵器の製造は、ボーダー川の源流部で行われている』……らしい」
「だいぶ北だな」
「でも、戦場からはかなり離れているから、当時の施設がそのまま残っていてもおかしくはないよ」
「そうか。……行ってみるか?」
「行こう」
「よし。……あ、その前に」
「どうしたんだい?」
「『ミニモグラ』が空けた穴を塞いでくる」
水が入ったり小動物が潜り込んだりしないよう、仁は礼子に頼んで『岩石崩壊』で穴を崩壊させた後、自ら『融合』で岩を一体化し、穴の後始末をしたのだった。
* * *
その後、『ハリケーン』は再び空へ。
もちろん、簡易天幕とその中の転移魔法陣は撤去している。
蛇足ながら、仁はアーノルトたちが戻ってくる前に軽食を済ませていた。
「で、『ボーダー川の源流部』ってどこになるんだ?」
「おそらく『スホント山』と『トコナコン山』の鞍部だ」
「ええと、地図では……ああ、ここか」
仁は壁のモニタに地図を映し出し、位置を確認した。
「すごく精密な地図だな。……空から測量したのか」
「そういうことだよ。……で、このあたりか?」
仁は地図上を指差した。
「おそらくな。近くまで行って、また自由魔力素の動きを調べてもらえばわかるだろう」
「よし」
『ハリケーン』は一路北へと飛んでいく。
距離は200キロほど、時速400キロなら30分で到着だ。
「ああ、まだ雪が残っているな……」
見渡す限りの銀世界である。
この緯度、この標高だとまだ積雪期といえよう。
「だが、源流部っていうとこのあたりだな。礼子、また調べてみてくれ」
「はい」
今回も、飛行はホープ、『魔力素探査機』は礼子という分担で調査を進めていく。
そして20分が過ぎた。
「地下に自由魔力素反応発見」
「お、見つけたかな? 深さは?」
今回は聞かれる前に三角測量を行っており、すぐに返答がきた。
「地表部から地下へ150メートルほどです」
「このあたりの標高は……」
「2000メートルくらいですね」
「そうか」
雪の深さは3メートルくらいあるようで、いきなり『ハリケーン』を着陸させるのは躊躇われた。
「どうするかな……部分的に雪を溶かすか、あるいは固めるか」
「ちょっと待ってくれ、ジン」
「どうした?」
「もしかしたら、こっちの転移魔法陣は無事かもしれないぞ」
「そうか……だけどどうやって探す?」
「僕に考えがある」
そしてアーノルトは仁にアイデアを説明した。
「近い性質の簡易魔法陣を付近で作動させるんだ。もし近くに別の簡易魔法陣があって、性質が似ていたらわずかに反応する……かもしれない」
「なるほど、魔力の共振みたいなものを使うんだな」
「そういうことになるね。さっき撤去したやつがあるだろう?」
「ああ。簡易天幕の床に描いてあるから、消してはいないよ」
「それを使って、向こうに転移してまた戻ってくればいい」
「なるほど、やってみる価値はあるな」
そこでさっそく、『ハリケーン』の床に簡易天幕用の床を広げ、転移魔法陣の準備を行った。
「デハ、ワタシガイッテキマス」
『コマンド1』が実験を自ら買って出た。
『ミニモグラ』と一緒に転移すれば、万が一戻れなくても脱出してこられるだろうという理由からだ。
実際には転送装置を内蔵しているので、120メートル程度の地下からの脱出は問題ないのだが、今のところアーノルトたちにはまだ秘密なのである。
(そろそろ打ち明けたいよなあ)
アーノルトたちの為人も大分わかってきたので、『仁ファミリー』に入ってもらえればな、と考えている仁なのである。
「デハ、イキマス」
『ミニモグラ』に乗り込んだ『コマンド1』は転移魔法陣へと進入、その中心に乗った時に魔法陣が作動し、転移して消えた。
そして10秒後に再び魔法陣の中央に現れる。
「どうだ、礼子?」
「はい、お父さま。ここから少し上流部で反応がありました」
「お、それかな? とにかく行ってみよう。ホープ、頼むぞ」
「はい、ご主人様」
ホープは『ハリケーン』を上流部へ向けた。
およそ2キロの地点に大岩があり、その根本に大きな割れ目があった。
「あの中かもしれないな」
というアーノルトの推測に、仁も賛成だった。
その付近の積雪量は1メートルほどとやや少なく、チェルが見てくると言うので『ハリケーン』の高度を下げ、地表1メートルのところで静止。
チェルはハッチを開け、飛び降りた。
お腹のあたりまで雪に埋まるが、問題はない。
そのまま雪を掻き分けて大岩に到達、割れ目から中へと入っていったのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日8月12日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20210812 修正
(旧)
水が入ったり小動物が潜り込んだりしないよう、仁は『岩石崩壊』で穴を崩壊させた後、『融合』で岩を一体化し、穴の後始末をしたのだった。
(新)
水が入ったり小動物が潜り込んだりしないよう、仁は礼子に頼んで『岩石崩壊』で穴を崩壊させた後、自ら『融合』で岩を一体化し、穴の後始末をしたのだった。
(誤)そのまま雪を掻き分けで大岩に到達
(正)そのまま雪を掻き分けて大岩に到達
20210813 修正
(誤)今回は聞かれる前に3角測量を行っており、すぐに返答がきた。
(正)今回は聞かれる前に三角測量を行っており、すぐに返答がきた。




