80-22 次への示唆
『ルトグラ砦第1地下基地』の案内はこれで終了した。
「実はですね、陛下」
「うん? 何かな、ジン殿?」
「実はここのさらに地下に、第2の地下基地があったんです」
「なんだと!?」
「なんですって?」
「なんですと!?」
公王、王弟、宰相らは三者三様の驚き方をした。
「それはまことか、ジン殿?」
「はい、宰相閣下。実は、このアーノルト殿とチェルさんはそちらの所属なのです」
「ううむ……」
「『第2地下基地』と呼んでおります。……『公平党』のこともありましたので、王城で報告しませんでした。それにつきまして、お詫び申し上げます」
仁は建前的な理由を述べ、謝罪した。
「いや、詫びは必要ない。ジン殿、よくぞ発見してくれた。そしてアーノルト殿とチェル殿をよくぞ救ってくれた。むしろこちらが礼を言わねばな」
「恐縮です」
ここでアーノルトが口を開いた。
「陛下、ジン殿に黙っていてほしいと頼んだのは私です。どうぞ、叱るなら私を」
「いや、アーノルト殿にも理由があったろう。余は怒ってはおらぬ」
「寛大なお言葉、いたみいります」
頭を下げたアーノルトは、『第2地下基地』について説明を行う。
「『第2地下基地』は人間用の設備ではありません」
「ほう?」
「最後の最後に、当時でいう『魔族』に報復するための施設が作られました」
「……ふうむ」
わかりやすい説明を心掛けるアーノルト。
「私とチェルはそちらの所属です。『第1地下基地』を整備したジン殿が『第2地下基地』を見つけ、私たちを整備してくれました」
「そういうことであったか」
「はい。私の場合はボディの新造を。チェルもほとんど新造に近い整備を。そのおかげで、こうして陛下、殿下、閣下方とお会いできたわけです」
「なるほどな」
国王ボザールは納得したようだ。王弟と宰相も。
「そういうわけで、私とチェルは独立して動くことができるのです」
「それはそうであろうな」
「陛下におかれましては、是非とも私とチェルの自由行動をお許し願いたく」
「それが願いか」
「はい、陛下」
「……」
アーノルトがこのような願いを国王にするというのは仁にとっても予想外であった。
が、その気持ちもわからなくもないので、応援することにした。
「陛下、自分からもお願いいたします。アーノルト殿は、700年前の技術知識を有しておりますので、きっと国益になると思います。チェルも、その補佐を務めてくれるでしょう」
「そうか、ジン殿もそう言うか」
国王は目を閉じ、1分ほど黙考した後、ゆっくりと目を開け、
「よろしい。条件付きでさし許す」
と告げたのである。
「陛下、その条件とは何でしょうか?」
「自由行動の際には、予定表を提出すること。期限を明確にすること。そして終了後、簡単でいいので報告書を提出すること。……どうかな?」
それを聞いた仁は、有給休暇の申請みたいだ、と感じた。
もっとも有給休暇をとっても報告書は提出しないので、どちらかというと出張かもしれない。
「わかりました」
アーノルトとしても、特に断る理由はないので条件を呑んだ。
チェルも同じである。
「うむ、これで万事丸く収まったな」
国王ボザールは満足そうに頷いた。
「陛下、それではそろそろ戻りませんと……」
ここでボザールは1つの提案を行う。
「アーノルト殿、ジン殿、この『第1地下基地』と我が王城を結ぶ転移魔法陣を設置してもいいだろうかな?」
一応はセルロア王国の領土内の施設なので許可はいらないということも言えるのだが、国王ボザールはアーノルトたちに誠意を示したかったのだ。
今後、非常用の資材や食料を備蓄するためにも、転移魔法陣があれば非常に効率がよくなるからだ。
「はい、陛下。それでは、上層の1室に転移魔法陣を設置しましょう」
「おお、ジン殿、そうしてもらえると助かる」
転移魔法陣の技術は既に確立し、各国が管理した上で輸送網として運用されている。
一般に広めないのは、密輸やテロなどの悪事に利用されないようにという理由からだ。
* * *
仁は『イザーク』と『ドリス』と相談の上、使われていない倉庫に転移魔法陣を設置した。
大きさは転移エリアの直径が3メートルという、中規模なもの。
食糧を運び込むにせよ人間が訪れるにせよ十分実用的である。
そして一行は『ハリケーン』でセルロア王国首都エサイアへと戻ることにしたのである。
* * *
首都エサイアへの道中、アーノルトが希望を口にする。
「ジン、西の川沿いに飛んでくれないかな」
「西の川……ショウロ皇国との国境になっているボーダー川か?」
「ああ、それだ」
「陛下、よろしいでしょうか?」
「一向に構わん。むしろそうしてくれ」
「陛下……」
国王の許可が出たので、仁はホープに指示を出す。
「ホープ、頼む」
「承りました」
そこで『ハリケーン』は進路を西に寄せ、ボーダー川を見下ろせるよう、高度1000メートルほどで飛行する。
「これでいいか?」
「ああ、十分だ。ありがとう」
礼を言ってアーノルトは床窓を一部開けてもらい、眼下に広がる荒野を見つめた。
「やはり……ない……か」
「何が?」
小声での呟きだったが、たまたま近くにいた仁の耳に、アーノルトの声が聞こえたのである。
「ああ、聞いていたのかい、ジン」
「聞こえたんだよ」
「まあどっちでもいいけどな」
「で、なにがないって?」
「基地だよ」
「基地?」
「うん。このあたりに1つあったはずなんだ」
位置的には『オノユニ山』のほぼ真西に当たる。
「戦場からやや外れているので残っていると思ったんだけどね」
見下ろす大地は、殺風景な岩と土の荒野である。
「このあたりにも基地があったのか……」
700年という歳月に朽ち果てたとしか見えない。
「小規模なものだけどね。地下施設が大半だったから、もしかすると地下部分は残っているかもしれない」
「なるほど」
そんな会話を聞いていた宰相が、仁に声を掛けてきた。
「失礼、ジン殿、アーノルト殿。もしも今の話が本当なら、そういった潜在的な脅威……まあ脅威ではないかもですが、調査したいですな」
「わかります」
「そこでですが、期限は切りませんので、ジン殿とアーノルト殿、チェル殿とで調査をしていただけませんかな? 謝礼につきましてはこの後、王城で相談いたしましょう」
「自分は構いませんが」
古の基地に興味がある仁は、そう答えてアーノルトを見た。
「僕もいいですよ。というか気になっていますので、やりたいと思います」
というわけでアーノルトも快諾する。
「おお、それではよろしく頼みます。詳しくは王城で……」
そういうことになったのである。
古の廃施設で彼らを待つものは……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日8月5日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20210805 修正
(誤)「西の川……ショウロ皇国とのになっているボーダー川か?」
(正)「西の川……ショウロ皇国との国境になっているボーダー川か?」




