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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
80 新たな仲間篇
3034/4349

80-20 案内 2

 上層から中層へは階段で下りていくのだが、途中に丈夫な隔壁がある。


「この隔壁の向こうにも階段があるのですが、その先は行き止まりなのです」

「へえ、つまり罠というわけなの?」

「はい、王弟殿下。厳重な隔壁があるため、こちらが正規のルートだと勘違いさせ、袋小路に誘い込んでから毒の水を流し込みます」

「えげつないね……」

「もちろん、今はその機能はありません。ですが、当時の戦争とはそういうものだったのです」

「うん、そうした過去から目をらしちゃいけないね……」


 王弟マルセルは自戒するように呟いたのである。


 そして、正規のルートはそのまま階段を下りた後、狭い通路を20メートルほど抜けるのである。


「こちらの通路にもかつては罠がありまして、左右の壁から槍が飛び出す場所、雷属性の魔法が放たれる場所、そして床がいきなり抜ける場所、天井が落下してくる場所がありました。もちろん今は仕掛けは撤去され、普通の通路になっております」

「そ、そうか。ジン殿、感謝する」


 さすがの国王も引き気味であった。


 そうした通路を抜けると中層である。


「ここが中層です。ここには管理魔導頭脳をはじめとするいろいろな設備があります」


 いろいろな、を具体的にいうと、『空調』『簡易工場』『資材倉庫』『エネルギー供給』などである。


「まずは『統括管理魔導頭脳』のところへ行きましょう」

「うむ」


 チェルは一行を中層中央にある魔導頭脳室へと案内した。


『ようこそいらっしゃいました、陛下。私のことは『イザーク』とお呼びください』

「う、うむ、余が現国王ボザール・ヴァロア・ド・セルロアである」

『そちらの方はご血縁の方ですか?』

「わかるのか?」

『はい。魔力波形が似てらしたもので』

「おお、なるほどな。我が弟である」


 先日仁から『魔力波形分析機マギスペクトラムアナライザー』による分析結果を知らされているので、国王ボザールはすぐに得心がいったようだ。


「『イザーク』、君への命令権を設定しようと思う」


 仁が説明を行う。


「第1位が国王陛下、2位が王弟殿下、3位が宰相閣下だ」

『わかりました』

「では、設定するぞ。……『隷属(マスタースレーブ)』設定。1位、ボザール・ヴァロア・ド・セルロア国王陛下。2位、マルセル・ヴァロア・ド・セルロア王弟殿下、3位、ダイン・セーメ・ド・パース宰相閣下」


 これで、当面の命令権が設定された。


「次に、特別枠でダイン・セーメ・ド・パース宰相閣下を設定する。『隷属(マスタースレーブ)』……」


 これは、命令権順位とは独立して、命令権の変更ができる権限を与えるのである。いわば『命令順位認定権』である。

 条件は、第1位が空席になった場合に行使できる。行使しなければ第2位がそのまま第1位となる。


「これはどういう意味があるのだね?」


 宰相からの質問。


「ええ、今はすたれていますが、戦時中は普通だった設定のようです」


 説明は仁から行う。


「命令権と、命令順位認定権、と言います。命令順位認定権を持っていても、命令権の順位が高いわけではありません」


 似たような例を挙げるとすれば、教皇(法王)が国王を認定する(戴冠式)に近いだろうか。

 もちろん、自分の命令権の順位を上げることはできない。

 

 そういった一連の説明を行う仁。


「なるほどな。万が一、引き継ぎをし忘れた際にも、命令権の順位を変更できるわけか」

「はい。そして……あまりいい話ではありませんが、最悪の事態でも大丈夫なようにしておきます」

「うむ、それは必要なことだ」


 国王ボザールは、仁が何を言いたいか察したようだ。つまりは1位のものが急逝きゅうせいした場合、ということになる。

 国王の座を巡って、骨肉の争いが生じることはままある。歴史を見れば明らかだ。


 管理魔導頭脳への命令権に関しては明確な順位が必要となるので、戦時中にこうした制度が生まれたらしい。


*   *   *


 魔導頭脳に関する説明と設定が終わったあとは……。


「『ドリス』、陛下に挨拶してくれ」

「はい」


 仁の言葉に応じ、白髪のオートマタ、『ドリス』が姿を見せた。


「おお!」

「チェルとよく似ているな」


「魔導頭脳の補佐自動人形(オートマタ)です。『ドリス』と言います。皆さん、名乗ってください。それで彼女を通じ、魔導頭脳に登録されます。今回の『登録』は、管理魔導頭脳への命令権と同じ順位になります」


 仁はドリスを紹介し、彼女への命令権についても説明した。


「ドリスと申します、以後、よろしくお願い申し上げます。陛下、殿下、閣下」

「うむ。国王ボザールだ。『ドリス』、よろしく頼む」

「王弟マルセルです。よろしく」

「宰相を務めているダインだ。よろしくな」


 国王に続き、王弟マルセル、宰相ダインも名乗り、ここにドリスへの命令権も確立した。


「ドリスは動けない魔導頭脳の代わりに手足……や目や耳となる自動人形(オートマタ)です。軽度〜中度の故障なら修理できます。警備もしてくれます」


 仁はドリスの存在意義と能力の説明を行った。


「なるほどな。つまり、チェルも同じことができるわけだな」

「はい、陛下」

「チェルとドリス……は互いに整備し合うこともできるのですよね」

「そういうことです、殿下」

「故障の確率を下げられるというわけだな」

「そうなりますね、閣下」


 三者三様に、管理魔導頭脳と補佐自動人形(オートマタ)の関係を理解してくれたようである。


*   *   *


「さあ、それでは他の施設をご案内いたしましょう」


 中層で残っているのは『空調』『簡易工場』『資材倉庫』『エネルギー供給』などの施設である。


 『空調』設備と『エネルギー供給』設備は特に見るべきところはなく(仁にとっても自分が修理した施設なので)こういうものか、で終わる。


 だが。

「こちらが『簡易工場』です」

「おお」

「簡易、っていうけれど、かなりのものでは?」

「はい。ゴーレム程度でしたら製作できます」

「やっぱり……」

「それは決して『簡易』ではないと思いますぞ……」


 国王は素直に感心し、王弟は『簡易』に疑問を(いだ)き、宰相はツッコミを入れるのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210804 修正

(誤)「命令権と、命令順位権認定権、と言います。

(正)「命令権と、命令順位認定権、と言います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 国王陛下の理解力も大したもんだw そして、最後の三者三様のリアクションw 国王陛下:完全にマギクラに染まっている 王弟殿下:普通ってなんっだっけ?(哲学)状態 宰相閣下:ナイスツッコミw有…
[気になる点] >「命令権と、命令順位権認定権、と言います。命令順位認定権を持っていても、命令権の順位が高いわけではありません」 命令順位権認定権 → 命令順位認定権 権が1個多い [一言] >こ…
[一言] 今は罠が無力化されてますが、営業を始めたら非致死性の罠が稼働します 触手とか、ぬとぬとしたゼリー状の液体とか、ゴムでできた槍とか…… ジ「岩そっくりに見える、巨大なスポンジ玉とかな」 礼「…
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