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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
80 新たな仲間篇
3032/4350

80-18 セルロア王国訪問

 チェルの頭脳部分は10体の自動人形(オートマタ)の頭脳を統合した集大成であった。


「そうやることで熟成……は言葉が悪いな。……熟練した思索家のような思考ができるようになるんだなあ」


 とはいえ、元となる制御核(コントロールコア)のことを考えると、仁はやってみようとは思えなかった。

 この場合、元になった制御核(コントロールコア)がなくなったり壊れたりするわけではない。

 だが、自動人形(オートマタ)の頭脳、あるいは『心の』を単なる『材料』として使う、ということに抵抗があるからだ。


 アーノルトのような事態になった場合は致し方ないだろうとは思う。その場合、自分でも同じことをする……かもしれないが、と仁は思った。


 そういう意味では、『礼子』が、仁にとって唯一の、『融合』自動人形(オートマタ)であると言えようか。

 確かに、そうした場合には、感情が豊かになったり、制御核(コントロールコア)の働きがよくなったりするようだ、と仁は分析した。

 とはいえ、礼子は集大成とか統合とか、そんな単純なものではない。

 初代が作った『おちび』の制御核(コントロールコア)が壊れかけていたのでそれをそのまま『知識転写(トランスインフォ)』で魔結晶(マギクリスタル)に書き込み、さらに自分の基礎制御魔導式(コントロールシステム)を追記して融合、一体化したもの……が礼子の制御核(コントロールコア)である。

 これはこれで、世界に1つだけの逸品なのだ。


「ジン、どうかしたのか?」


 考え込んだ仁に、アーノルトが声を掛けた。


「あ、ああ、いや、ちょっと考えごとをしていた」

「それは、制御核(コントロールコア)の統合についてかい?」

「まあそうだ」

「やってみるなら止めはしないが、成功率は低いぞ」

「そうなのか?」

「うん。僕の他にも……特に、軍事的な理由で試みた者が大勢いたけど、誰一人として成功した者はいなかった」


 おそらく特殊な条件があるんだろう、とアーノルトは言った。


「条件か……」


 もしかすると、元になる制御核(コントロールコア)の持ち主がそれを願っているかどうかかもな、と仁は思ったが、あまり学術的な仮説ではないので口には出さなかったのである。


*   *   *


 そうこうするうちに、『ハリケーン』はようやくセルロア王国に到着した。

 約1時間という時差を考慮し、現地時間で午前10時になるよう、ゆっくり飛んできたからである。


 『ハリケーン』に描かれた『丸に二つ引』の紋を見て、上空警備の気球たちは空路を空けてくれた。


「本当に信用されているんだなあ」


 その様子を見たアーノルトが感心したように言う。

 そして『ハリケーン』は王城の前庭に着陸した。


 そこに現れたのは、近衛兵に守られた国王ボザール・ヴァロア・ド・セルロアと宰相ダイン・セーメ・ド・パース。

 仁、礼子、チェル、アーノルト、ホープの順に『ハリケーン』を出る。


「ようこそ、ジン殿」

「陛下共々、待っておりましたぞ」


 国王も宰相も、少し疲れた顔をしている。


「今日は、ご紹介したい者がおりまして」


 と仁が言えば、


「そちらの方々ですかな?」


 と宰相が察した。

 近衛兵たちは自然体だが、一応警戒をしているようだ。

 仁と一緒であるとはいえ、見知らぬ者に対して、それは当然のことである。


「ええ。ルトグラ砦地下基地の関係者です」

「ほう、それは興味深い話であるな」


 とはいえ、前庭で話し込むのはまずい。

 宰相は仁たちを王城へと招いた。


「では、中へどうぞ」


 そして小会議室へと案内する。

 王城内の会議室は、全て王族が列席してもいいような作りになっている。つまり、王族専用の席がちゃんと用意されているのだ。


 部屋の中の上座に相当するその席に国王が座ると、その右に宰相が座り、国王の左右後ろに近衛兵が護衛のために立つ。

 小会議室のテーブルはほぼ正方形。中央には同じく正方形の空間が空いている。

 国王の正面を避け、反対側に仁とアーノルトが腰を下ろした。

 礼子とホープ、チェルはその背後に立つ。


「さて、では改めて挨拶をしよう。私はダイン・セーメ・ド・パース。宰相を務めている。こちらは国王陛下である」

「自分はジン・ニドーです。礼子とホープ、です……で、こちらはアーノルト殿。従者はチェルと言います」

「アーノルトです」

「チェルと申します」


 これでようやく挨拶と紹介が終了する。


「まずはこの2人の紹介から始めたいと思います」

「うむ、ジン殿、余も気になっていたところだ」

「ルトグラ砦の関係者だと言われましたね?」


 国王も宰相も興味津々のようなので、仁は手早く説明することにした。


「まず最初に申し上げておきます。このお2人は自動人形(オートマタ)です」

「え?」

「は?」


 呆気にとられる国王と宰相。


「……」

「……ジン殿、それはまことですかな?」

「はい。……ええと、それで、地下基地の関係者といいますか、要は地下基地に所属しているわけですね」

「はい!?」


 国王は言葉をなくし、宰相は呆れたような驚いたような声を上げた。


「そういうことです。私は貴殿たちが『旧ディナール王国』と呼ぶ王国に仕えるものでした。今現在はセルロア王国となっているようですが、そのルーツは同じと認識しております」


 アーノルトは建前を口にした。


「こ、これはいたみいる。貴殿……アーノルト殿は、その、本当に自動人形(オートマタ)なので?」

「そうです」

「ジン殿……がボディを作った、ということですな?」

「ええ」

「ううむ……素晴らしい。人間そっくりですな」

「ありがとうございます」


 ここで、ようやく落ち着きを取り戻した国王が口を開いた。


「ジ、ジン殿、まさかとは思うが『地下基地』の整備が終わった……ということではないだろうな?」

「いえ、終わりました」

「なんと!」


 依頼をしたのが24日、今日は28日。実働3日間で地下基地整備を終えてしまうとは思っていなかったようだ。


「それでですね、地下基地を統括する魔導頭脳があるのですが、それの命令の優先順位を決定したいんです。具体的には、陛下を最優先するように」

「なるほどな」

「それには、どうしてもご本人にいらしていただかないと設定できないので、日程を調整したいのです」

「ふむ、それにはどのくらいの時間が必要なのだ?」

「設定自体は1分もあれば終わります」

「そんなに短いのか!」


 むしろ移動時間がほとんどである。

 その移動時間も、仁の『ハリケーン』なら片道1時間くらいである。

 あとは、地下基地を確認のため見学する時間か。


「そうだな……」


 国王ボザールは、考えた末に結論を口にした。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日8月1日(日)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


20210801 修正

(誤)あまり学術的は仮設ではないので口には出さなかったのである。

(正)あまり学術的な仮説ではないので口には出さなかったのである。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 80-18 セルロア王国訪問 更新ありがとうございます。 [気になる点] 国王一行が、どのぐらいで地下基地に入られるのか? [一言] 次回の更新も、楽しみにしております。
[良い点] マギクラさんにとっては、救済措置でもない限りは制御核の統合は禁忌になるわけですね。 振「義弟も人格の使い捨てみたいな真似なんかしたくないだろうしな。」 仁「フリッツの脳チップって複数になっ…
[一言] >「そうやることで熟成…… 熟成した貴腐人?w >命令の優先順位 特に設定しなくてもディナール王国の王家の子孫であれば優先順位は高そうだけど。 実は子孫じゃなかったとかw >国王ボザ…
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