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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
80 新たな仲間篇
3029/4352

80-15 引き合わせ

 タイカゾ山とタホカ山の鞍部あんぶを通って『ハリケーン』は北へ向かった。


「……で、そういうわけで2代目『魔法工学師マギクラフト・マイスター』が北方民族に協力することになって……」


 少し速度を落としている『ハリケーン』の中で、仁はアーノルトにこれまでのことを掻い摘んで説明した。


「なるほどな。つまり、結局は人間も魔族……いや北方民族も、その『始祖(オリジン)』の子孫なわけだ」

「そういうことになるな。混血した相手が違うのと、暮らしていた環境の差もあって、今ではかなり違う民族になってしまったが、遺伝的には同一の民族……というか生物学的に同一の種族なんだ」

「それが『デキソコナイ』とやらの陰謀で仲違なかたがいを……なあ」

「もちろん、北方民族にも悪い奴や野心家はいたけどな」

「それは人類も同じだよな」

「アーノルトの言うとおりだ。『魔導大戦』の後にも『魔法連盟』なんて連中が文化文明の発達を邪魔したわけだし」

「まったくだ、愚かな者のせいで、人類は幾度も後退しているんだろうな」


「アーノルト様、眼下に地峡が見えました」


 ちょうど話が一段落した時、チェルから声が掛かった。

 『ハリケーン』はちょうど『パズデクスト大地峡』の上を飛び越えているところだ。


「あれが大地峡か。話に聞いただけだったが、本当に細いな」

「昔はあの付近に『百手巨人(ヘカトンケイル)』が結構いたらしい」

百手巨人(ヘカトンケイル)か……本で見たことがあるだけだ」

「あれも『遺伝子実験』の産物だったというのがなあ」

「遺伝子……か……概念は学んだが、よくわからないな」


 アーノルトの時代は、まだ『賢者(マグス)』シュウキ・ツェツィの教えが、一部とはいえ正しく伝えられていた時代なので、その程度の知識はアーノルトも持っていた。


「まあ、人の体を作るための設計図が、細胞の中に入っていると思えばいいよ」

「そうなんだろうが……それほど小さいものをいじれるというか……どう弄ったらどうなる、ということを知っているということが信じられない」

「それは同感だな」


 仁自身、遺伝子操作などという所業はあまり好きになれないのだった。


「今はほとんどいないようだから」

「うん。……ああ、いよいよゴンドア大陸かあ。ちょっと緊張するな」

「大丈夫さ。これから行く所は、みんな気のいい人ばかりだから」


*   *   *


 『ハリケーン』が着陸したのは『森羅しんら』の氏族長の館前。

 シオンには老君から事前に連絡が行っているので、シオンをはじめ、氏族長ベリアルス、シオンの母ロロナが迎えに出てきていた。

 仁たちは、仁、礼子、ホープ、アーノルト、チェルというメンバーである。

 『ハリケーン』は『森羅しんら』の人たちがきちんと管理してくれることになる。


「いらっしゃい、ジン」

「ジン殿、ようこそ」

「ジンさん、よくいらしてくださいました」

「やあシオン。ベリアルス、久しぶり。ロロナさんもお元気そうで何よりです」


 そんなやり取りを見たアーノルトとチェルは、少し驚いている。

 やはり理屈ではわかっていても、敵対していた相手がこれほど間近にいるのは初めてなのだから。

 だが、仁が気やすそうに話しているのを見て、警戒心も解けていく。

 

 そんなアーノルトが半歩踏み出したのを見た礼子が、


「お父さま、こちらをご紹介して差し上げませんと」


 と声を掛けた。


「お、そうだな。……こちらはアーノルト。向こうはチェル。新しい友人だ」

「まあ、そうなの? アーノルトさん、チェルさん、よろしくね」


 ロロナが進み出て2人の手を取った。


「え、あ、はい。アーノルトです、よろしくお願いします」

「チェル、といいます。アーノルト様の従者です」


 2人は面食らいながらも自己紹介したのであった。


「さあ、それ以上は中で話しましょう」


 シオンの言葉に、一同中へと入った。そのまま応接室へ。


 出されたお茶を一口飲んで、仁はアーノルトとチェルの素性の説明を行う。


「……実は2人は……」

「…………」


 『森羅しんら』の面々はじっと黙ってその説明に耳を傾ける。


「……そんなことが…………」

「……」

「まあまあ、なんてことかしらね……『負の人形(ネガドール)』の被害者がこんなところにも……」


 シオンは驚き、ベリアルスは絶句し、ロロナは憤慨した。

 次いでベリアルスはアーノルトに謝罪する。


「申し訳ない、アーノルト殿、チェル殿。そそのかされたとはいえ、先に手を出したのは北方民族(こちら)だ。代表してお詫び申し上げる」

「いえ、とんでもない。僕は、そのようなお詫びを受けられるような者ではありません」


 本当に、『魔導大戦』時の責任者でもなんでもないので、謝罪されても面食らってしまう、と言ったアーノルトなのである。


「まあ実際、当時の人間の代表扱いされても困るでしょうし」


 仁が助け船を出す。


「そうでしょうね。……これは、こちらの気持ちの問題だから」


 シオンが、むしろ『許されたい気持ちの表われ』だと告げる。


「それはお互い様でしょうし」


 アーノルトが言う。

 こうしてみて、当時の人間といえども、ちゃんと北方民族と会話ができていることに仁はほっとしていた。

 チェルの表情も、来たばかりの時に比べ、ずっと和らいでいる。


「今日はゆっくりしていってね」


 シオンはそう言うと、


「ローたちも呼ぶから」


 と付け加えたのだった。


「ロー?」


 怪訝そうなアーノルトに、仁は説明する。


「ロードトスっていって、シオンの曾孫ひまごなんだよ。俺とも面識があってさ。多分その他にも、ロードトスの妹のヴィータとか、ロードトスの許嫁のリュドミラとかも呼ぶんだろうなあ」

「楽しそうだな」

「ああ。……彼らもまた、ローレン大陸に住む者たちと同じ人間だとわかるさ」

「いや、もうわかったさ。……本当に、不幸なすれ違いで、我々は争ってしまったんだな。残念だ」

「そうだな。でもそういった過去を乗り越えて、よりよい未来につなげるのが、生きている者たちの務めであり、散っていった人たちへのはなむけになるんじゃないかな」

「なるほどな。いいことを言う」

「ありがとう。……昔誰かから聞いた言葉に、『祈りは人の想いであり、人の想いこそが希望となり未来を拓く』なんてのもあったな」

「ふんふん、祈りは想い、か。そうかもなあ」


 アーノルトは、ここに連れてきてもらってよかったよ、と仁に礼を言ったのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日7月29日(木)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20210729 修正

(誤)『魔導大戦』時の責任者でもなんでもないアーノルトなので、謝罪されても面食らってしまう、と言ったアーノルトなのである。

(正)本当に、『魔導大戦』時の責任者でもなんでもないので、謝罪されても面食らってしまう、と言ったアーノルトなのである。


(旧)「……で、そういうわけで俺は北方民族に協力することになって……」

(新)「……で、そういうわけで2代目『魔法工学師マギクラフト・マイスター』が北方民族に協力することになって……」


 20210730 修正

(旧)今ではかなり違う民族になってしまったが、遺伝的には同一の民族なんだ」

(新)今ではかなり違う民族になってしまったが、遺伝的には同一の民族……というか生物学的に同一の種族なんだ」

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― 新着の感想 ―
シオン「今日はゆっくりしていってね」 ⬆ゆっくりシオンですか?(笑) ゆっくり聞いてたら、3000行くの思ったより遅くなりましたm(_ _)m 素敵な小説ありがとうございますm(_ _)m このマギク…
[一言]  >遺伝的には同一の民族  理系人間としては「生物としては同一の種」のほうが収まりが良かったですけど、仕方ないということで。  >遺伝子操作などという所業  私からすると、動植物の品種改良…
[良い点] 80-15 引き合わせ 更新ありがとうございます。 [一言] 良い話でした。 次回の更新も、楽しみにしております。
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