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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
80 新たな仲間篇
3023/4355

80-09 製作者の設定

 仁Dは、チェルの改造を行う前に、1つの実験を行うことにした。


「チェル、君は、『ハーン』を起動させることができるのか?」

「は?」

「いや、俺が見たところ、君の魔力パターンと管理魔導頭脳の魔力パターンは同じだ。なら、『ハーン』だけじゃなく、他の全部のゴーレムを起動させることができるんじゃないかと思ってね」

「やったことはございませんが……確かに、理論的にはできそうですね」

「だろう?」


 現に、自動人形(オートマタ)ではないが、それに近い『分身人形(ドッペル)』である仁Dがゴーレムの起動を行うことができるのだ。

 自動人形(オートマタ)のチェルにできないはずはない。


「改造後の動作チェックをさせたいんだが、チェルが起動させてみてくれないか?」

「わかりました。やってみます。……『起動せよ(ウエイクアップ)』」

「……はい」


 『ハーン』が起き上がった。


「おや? 私を起動させたのは『チェル』、あなたですか?」

「ええ。……それよりも『ハーン』、調子はどうですか?」


 その問いに対し、ハーンはセルフチェックを行う……『アドリアナ式』の。

 もちろん仁Dが組み込んだものだ。


「異常なし。動作効率が途轍とてつもなく向上したのを感じます」

「よし。……そうなると、『ハーン』、君の主人……いや命令者はここの管理魔導頭脳になっているのか?」

「はい、ジン様。同時に、ジン様にもそれに次ぐ命令優先度があります」

「うーん……そうなったか」


 製作者ではないが、大幅な改造を加えた仁Dなので、命令権が大きくなったようである。

 とはいえ、仁もしくは仁Dが『至上の主人(アークマスター)』にならなかったことで、実験はまあ成功だな、と仁Dは判断した。


「よし、次の実験だ。『ハーン』、君がもう1体の汎用ゴーレムを起動させてみてくれ」

「わかりました。『起動せよ(ウエイクアップ)』」

「……はい」


 もう1体の汎用ゴーレムも起き上がり、『ハーン』の命により、セルフチェックも行った。

 命令権を確認したところ、1位が管理魔導頭脳で、2位が仁Dであった。

 その後、『ハーン』ともう1体の汎用ゴーレムは一旦停止させている。


「うーん……これはどう解釈すべきかな……」

「ジン様、どういうことですか?」


 実験の意図がわからず、チェルは仁Dに質問を行った。


「それはな……」


 仁Dは順を追って説明を行う。


 通常、ゴーレムや自動人形(オートマタ)は、製作者を『至上の主人(アークマスター)』と見なす。

 それは、『魔力パターンの共振』によるものである。

 だが、同じ魔力パターンである、同系機種に対してはそうした認識を行わない。

 例えば『職人(スミス)』がゴーレムを作ったとしても、『至上の主人(アークマスター)』は仁である。

 これはなぜか。


 仁たちの説としては、製作者と被造物とでは、魔力パターンが同じとはいえ、何かが異なっているから、ということになっている。

 つまり、仁と『職人(スミス)』とでは何かが違うのだ。


「ですが、今のジン様は作り物の身体を介していらっしゃいます。それでも『至上の主人(アークマスター)』はご本人であるとみなされるのはなぜでしょう?」

「ああ、そこへ気がついたか」


 それは『仁ファミリー』にも長らく不明だった点である。

 が、今は一応の説明が付いている。


「それはな、このボディを使ってはいても、元になる俺の魔力パターンが伝わっているからだと思う」

「つまり、遠隔操縦での魔力パターンはご本人と同じで、被造物の魔力パターンは同じであるとはいえ限定的だと?」

「そうだ。それがわかるなんて、やっぱり凄いな、チェルは」

「お褒めいただきありがとうございます。……ですが、それではまだ、わたくしが起動した際に……あっ……」


 途中で気が付いたらしく、チェルは言葉を途切れさせた。


「そう。『製作者』と同じ魔力パターンなので、『書き換え』られなかったんだろうと思う」


 チェルと『ハーン』……いや、他の戦闘用ゴーレムと汎用ゴーレムも、製作者は同一人物だった。

 おそらく『制御核(コントロールコア)』を作ったのが同一人物であり、ボディの他の部分は違う技術者が作ったのかもしれないが、それは今はどうでもいいこと。


「俺が改造したとしても、最終的にチェルが起動したから、『至上の主人(アークマスター)』の設定は書き換えられなかったんだな」

「……」

「それだけ強固な書き込みだったんだよ、君たちの製作者の書き込みは」

「で、ですが、制御核(コントロールコア)も交換したではないですか!」


 それならその際に『至上の主人(アークマスター)』が書き換えられるのではないかとチェルは言った。


「いや。今回俺が使ったのは『知識転写(トランスインフォ)』ではなく『複写(コピー)』だからな」


 仁Dは、オリジナルの想いを残しておきたかったので、知識転写(トランスインフォ)ではなく複写(コピー)を使った、と説明した。


 知識転写(トランスインフォ)の場合は、一旦術者の魔力パターンに置き換えてから書き込みを行うが、複写(コピー)の場合はそっくりそのまま複製するところが違う。

 ちなみに、知識転写(トランスインフォ)は人間の脳内情報を魔結晶(マギクリスタル)に転写することもできるが、複写(コピー)は単に魔結晶(マギクリスタル)から魔結晶(マギクリスタル)への複写しかできない。


「そうなると矛盾といいますか、わからないことが1つあります。……ジン様はわかっていらっしゃるのですか?」

「何をだ?」

「ジン様は先程例として、『職人(スミス)』殿が起動した場合でも製作者であるジン様が『至上の主人(アークマスター)』のままとおっしゃいました」

「うん」

「でしたら、わたくしや『ハーン』がゴーレムを起動した場合の『至上の主人(アークマスター)』は……『アーノルト様』になっていなければいけないのでは?」

「そのとおりだな。『ハーン』や他のゴーレムの『至上の主人(アークマスター)』はその『アーノルト』って人のままだと思うよ」

「え……?」


 仁Dは『ハーン』他のゴーレムの制御核(コントロールコア)を複製する際、念のためにバックアップを取っていたのだが、その時に気が付いたのである。


「ええと、ジン様は制御核(コントロールコア)の内容を言語に直さなくても、じかに閲覧できるのですか?」

「できるぞ」

「…………それが『魔法工学師マギクラフト・マイスター』なのでしょうね……」


「ええと、だからな、チェルの整備を行ったあと、『ハーン』に起動してもらえば、その『アーノルト』って人が『至上の主人(アークマスター)』のままになっているはずだよ」

「そうなのですね……嬉しいです」

「やっぱり、その人は特別な人だったんだな」

「はい」


 おそらく礼子にとっての自分のような存在だったのだろうか、と仁Dを操縦している仁は想像したのである。


「それじゃあ、チェルの整備をしたいから、『ハーン』を起こしてもらえるかな?」

「わかりました。『起動せよ(ウエイクアップ)』」


 そして、いよいよチェルの整備と改良が開始される。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 直ぐにチェルを魔改造せずに『至上の主人』の上書き検証を行う辺り、 仁のアーノルトリスペクト具合が良く分かろうという物で。 [気になる点] 確か、仁がエレナを魔改造した際は、 仁だけでなく、…
[一言] 既に故人ですからね アーノルトさんに再起動してもらうことはできませんし、整備・再起動されて残された繋がりを消したくなかっただろうチェルには最良の結果でしょうなあ
[良い点] 80-09 製作者の設定 更新ありがとうございます。 [気になる点] 一部(何処?!)で話題になっていたであろう問題が解決ということでいいのでしょうか?!←適当なことを言っている(おいw…
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