80-08 改造開始
仁Dと魔導頭脳の打ち合わせは、互いにノリノリで行われていた。
「それじゃあまず、この『第2地下基地』直轄の秘密部隊を作って……」
『お、それはいいな。じゃあ、そうした隠密行動ができるよう、ゴーレムを改造してもらいたいのだが……』
「いいぞ。纏うのは『消身』か?」
『それ以外になにかあるのか?』
「あるぞ。消身だと、紫外線や赤外線は誤魔化せないが、俺が開発した『不可視化』ならそういうことはない」
『では、それで頼むとするか』
「あと、ここにいるゴーレムは、総じて設計の割に素材がしょぼいから、グレードアップをお勧めする」
『今の時代は、素材は豊富なのか?』
「潤沢だと思うぞ」
『なら、頼むとするか』
「そうすれば、戦闘用ゴーレムは今の5倍、汎用ゴーレムも3倍くらいは性能アップすると思う」
『それは頼もしいな』
「あと、『隷属書き換え魔法』対策もしたほうがいいな」
『お、それは何だ?』
「制御核の内容を上書きしてしまう魔法だ」
『そんなものがあるのか! ……それは是非対策をしてもらいたいな』
「わかった。ゴーレムと自動人形、全部に施そう。ついでに整備もしようか」
『頼めるか?』
(……楽しそうで何よりなのですが、何か不穏な単語も混じっていたような……いえ、ジン様ですからこれが平常なのですね)
そばで聞いているチェルは、その会話の内容を聞いて、少々驚きを隠せないでいた。
やがて打ち合わせは終わり、仁Dはチェルに、
「まずはゴーレムの整備を行うから、保管場所に案内してくれ」
と告げた。
チェルは頷き、管理室を出て、来た通路を少し戻る。
「こちらが戦闘用ゴーレムの格納庫です。通路を挟んで反対側の部屋が汎用ゴーレムの格納庫です」
「わかった」
仁Dはまず、戦闘用ゴーレムの部屋に入った。汎用ゴーレムは『ハーン』を見ていたので、戦闘用ゴーレムの確認をしたかったからだ。
そしてもう1つの理由。
「『ハーン』も整備するから、呼び戻してくれないか?」
「わかりました」
『ハーン』が戻ってくるまで、先に戦闘用ゴーレムの整備をしてしまおうというわけである。
「ほう……」
戦闘用ゴーレムは3体。専用の『ハンガー』とでも呼ぶべき支持台に収まっていた。
支持台はそのまま作業台として横に寝かせられるようになっており、なかなか使い勝手がよさそうであった。
仁Dは3体とも支持台を寝かせ作業台モードとし、チェックを始めた。
「ふうん、保存状態はいいな。だが、やっぱり素材の質が悪いのが難点だ。……礼子、『ハリケーン』から素材を持ってきてくれるか?」
「はい、わかりました」
礼子は仁Dの要望に答え、大急ぎで『ハリケーン』へと向かった。
「あの指示で、必要なものがわかるのですか?」
単純過ぎる指示を不思議に思ったチェルが仁Dに尋ねた。
「わかるよ、礼子だから。……というのは冗談で、俺の本体が『ハリケーン』で礼子に改めて指示を出すから大丈夫だ」
「ああ、そうなんですね」
話をしながらも、仁Dの手は止まらない。礼子が戻るまでに3体の戦闘用ゴーレムは分解が終わっていた。
「ただ今戻りました」
「お、ちょうどよかった」
絶妙のタイミングで礼子が素材を持って戻ってきた。決して狙ったわけではない……はずだ。
「まずは骨格の強化……その前に『純化』……やっぱりな」
骨格は軽銀だったのだが、かなり不純物が混じっていたようで、体積にして5パーセントほども不純物が除去された。
不純物の筆頭は酸素。その次は鉄、以下窒素、炭素、マグネシウムであった。
純度の高い軽銀となった骨格は不純物を抜いた分スカスカになっているので、そこへアルミニウムとバナジウムをそれぞれ重量比で6パーセントと4パーセント加えるため、
5パーセント分の軽銀を除去した後、添加元素を加える。
そして『合金化』と『均質化』で完了だ。
「これでいいだろう。形状もそのままで、うまく強化ができたぞ」
「す、凄い、いえ、凄まじいですね……」
その作業を見ていたチェルは驚嘆していた。
「これで骨格はOKと。関節にはアダマンタイトコーティングをして、魔導神経線はミスリル銀に交換しよう。あ、『魔法筋肉』も交換しておこう」
「……」
「制御核の品質も上げよう。……複写……」
「…………」
「『魔素変換器』と『魔力炉』も魔結晶を交換して効率を上げておこう」
「………………」
礼子を助手に、テキパキと作業をすすめる仁Dの様子を見て、さすがのチェルも引き気味であった……。
* * *
「よし、こんなもんか」
「……こんなもんって……どれだけですか」
1体あたり10分を掛け、戦闘用ゴーレムを改造した仁Dは、満足そうに頷いた。
「パワーは10倍、耐久性は50倍くらいになっているはずだ」
上昇率が著しいのは材質が貧弱だった分、改造の効果が著しかったのである。
「さて、続けて汎用ゴーレムもやってしまおう」
通路を挟んで向かい側の部屋へと入る仁Dと礼子、チェル。
『ハーン』はもう戻ってきており、自ら『ハンガー』に身体を固定していた。
「『ハーン』、これから整備と再調整、若干の改造を行う。いいな?」
「望むところです、ジン殿」
「よし」
『ハーン』を停止させた仁Dは、こちらの支持台も寝かせて作業台とし、2体の汎用ゴーレムの改造を開始した。
その作業内容は先程とほぼ同じ。
「そういえば、『ハーン』の足首にダメージが蓄積していたな。……ああ、加工ミスみたいだな。直しておこう『変形』」
「…………」
「これでいいだろう」
外装を取り付けて終了。
今回は15分で終了した。
「これでよし」
「……ありがとうございます」
「さて次は」
「まだやるんですか!?」
「いや……チェルを……」
「わたくし!?」
「そりゃあ、他のゴーレムを整備しておいてチェルだけやらないというわけにはいかないだろう?」
「それもそうですね……では、お願いします」
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日7月22日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
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20210722 修正
(旧)仁Dは3体とも支持台を作業台に寝かせ、チェックを始めた。
(新)仁Dは3体とも支持台を寝かせ作業台モードとし、チェックを始めた。
20210723 修正
(旧)
「す、凄い、いえ、凄まじいですね……」
(新)
「これでいいだろう。形状もそのままで、うまく強化ができたぞ」
「す、凄い、いえ、凄まじいですね……」




