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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
80 新たな仲間篇
3021/4356

80-07 気さくな魔導頭脳

 仁Dは『第2地下基地』へ向かうために、開いた隔壁を通過した。

 そのまま、転移魔法陣のある部屋へと向かう……が。


「隔壁が開いているのに、転移魔法陣を使うのか?」

「そうです。隔壁は開きましたが、人間が使う通路は元々ありませんから」

「どういう設計思想だ……」


 仁Dは首を傾げた。


「なあ、もう『魔導大戦』も終わって久しいし、非常時でもないんだから、『第1地下基地』から『第2地下基地』へ行くルートをきちんと設定しないか?」

「はい、それも選択肢の1つですが、私の一存では決めかねます。『第2地下基地』の魔導頭脳とも相談しなくては」

「それもそうか」


 仕方なく、まずは転移魔法陣を使って『第2地下基地』へと移動した。礼子がお供である。


「まず、魔導頭脳のところへご案内します」

「うん」


 仁Dと礼子を案内していくチェル。

 『第2地下基地』内部は、かなりこぢんまりしているな、と仁Dは感じた。

 地下深く設営されているため、壁も天井も床も、基本的に全て天然石である。

 それに強化系の魔法を掛けているようだった。


 避難所としての役割は受け持っていないので、部屋数は少ない。

 基地は3層構造となっており、最下層が物資倉庫だとチェルが説明してくれた。


「魔導頭脳は中層の中央に設置してあります」


 転移魔法陣は上層に設置されていたので、中層へと階段を使い降りていく。


「内部の警備は?」

「はい、整備用ゴーレムが定期的なチェックをしながら巡回しているだけです」

「なるほど。……内部の換気をしているのは?」

「製作者様たちがいらっしゃったときの環境を維持しているのです」

「なるほどな。君たちは、製作者を敬慕しているんだな」

「はい」


 仁Dの言葉を、チェルは素直に肯定した。

 短期間ではあるが、その作業を目にし、『ジン』という『魔法工学師マギクラフト・マイスター』が被造物に注ぐ慈愛を感じていたから。

 製作者が被造物を、被造物が製作者を、互いに想うその事実を、決して否定も嫌悪もしないということを信じられたから。


「会ってみたかったな、チェルの製作者に」

「はい、……アーノルト様も、きっと、ジン様にお会いしてみたかった、と思いますよ」

「そうか」

「はい」


 確かに、チェルから話をちょっと聞いただけでも、わかり合えそうな人物だなと仁Dを操縦しながら仁は思っていた。


 そんな話をしていたら、


「ここが魔導頭脳のある管理室です」


 目的地に到着していた。


「どうぞ、ジン様」

「うん」


 チェルは仁Dに先んじて管理室に入り、安全だということを示し、手招いた。


「『管理魔導頭脳』、最高峰の技術者の代行をお連れしました」

『チェル、ご苦労さま』

「……代行?」


 自分のことを代行とよんだことに仁Dがいぶかると、チェルは微笑んでその理由を説明する。


「はい。あなた……そのボディは『作り物』ですよね?」

「! ……わかるのか」

「はい。体表面に結界をまとっているので直接はわかりませんでしたが、幾つか情報がありましたので、推測することができました」


 チェルによる説明とは。


1.ジンとマキナ3世の配下ゴーレムが、同じ魔力パターンを持っていること。

2.ジンとマキナ3世の連携がよすぎること。

3.ジンが『目立つことを嫌う』と言ったこと。


 の3点から、マキナ3世が、ジンの別の顔であると推理できる。と言う。

 また、先日の『大聖堂』制圧で行動をともにしていて、


1.マキナ3世が、技術系の人間にしては行動力がありすぎること。

2.行動時間に対し、疲労感が感じられなかったこと。


 から、マキナ3世が精巧な自動人形(オートマタ)かそれに類するボディであると推測したという。


「安全性を考えますれば、こうしてこの場にジン様自身がおいでになる必然性はありません。そういうわけで、そのボディが作りものであると判断いたしました」

「……見事だな」


 仁Dを操縦している仁は脱帽の思いであった。


「チェル、君の頭脳は素晴らしいな。推理力、判断力、想像力……君を作った製作者を尊敬するよ」

「ありがとうございます」


 仁Dの言葉に、チェルは深くお辞儀をして、感謝の礼を示した。


「ですが、そのボディを動かしている『精神』と『意志』はジン様のもの。ですのでわたくしはあなたを『ジン様』として敬います」

「ありがとう。そうしてもらえると助かる」


『話は済んだかな? 現代の技術者殿』


 チェルとのやりとりが一区切り付いたタイミングを見計らって、魔導頭脳が話し掛けてきた。


「ああ、待たせたな。俺は仁。二堂仁という。ジン・ニドーとも呼ばれているな。3代目『魔法工学師マギクラフト・マイスター』だ」

『『第2地下基地』を管理する魔導頭脳だ。お会いできて光栄だよ』

「それはこちらこそだ。……チェルは本当に素晴らしい自動人形(オートマタ)だ。その頭脳が特に凄い」

『ありがとう。……とりあえず、本題に入ろう』


 魔導頭脳はそう言って、現状を説明した。

 それによると、『第2地下』の基地は近年劣化が目立ってきているのだが、修理に使う素材が不足しており、このままでは早晩機能に支障が出始めるだろう、ということであった。


『施設内の酸素をなくすことができていれば、もう少し劣化を減らすことができたのだが』

「確かに、酸化して劣化した箇所が多そうだな」

『だが、それはできないし、したくもなかった。この施設は人間の滞在を想定していないとはいえ、人間を拒むものではないからだ』

「なんとなくわかるな」

『そうか、わかってくれるか』

「うん。それで、どことどこが酷い? まずは劣化の酷いところから手を付けていきたい」

『当然だな。酷いというなら、魔導頭脳の外被だが、これは機能に直接影響しないから、後回しでいい。急を要するのはセンサー類だ』

「ああ、なるほど。センサー本体ではなく、導線だろうな?」

『そのとおりだ。察しがよくて助かる』

「……ミスリル銀は……ないのだろうな」

『ない。そもそも、導線はミスリル銀製ではない』

「なんだって?」

『特殊な銅合金だ。黄銅に1パーセントのミスリル銀を混ぜた合金なのだ』


 その組成を聞いた仁Dは、合金の性質をおぼろげながら想像できた。


「なるほど……代替素材としては悪くなさそうだな。展性もありそうだし、強度もそこそこあるだろう」

『そのとおりだ。だが、やはり魔力抵抗はミスリル銀よりも大きい。それに酸化しやすい』

「そうだろうなあ。それじゃあ、ミスリルはこっちで用意するか」

『助かる』


 仁Dは、この魔導頭脳が気さくで、交渉しやすいことにほっとするとともに驚いていた。

 しかし、とりあえずは詳細の決定である。

 仁Dと魔導頭脳の打ち合わせは続いていく。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 仁「隔壁が開いているのに、転移魔法陣を使うのか?」 チ「そうです。隔壁は開きましたが、人間が使う通路は元々ありませんから」 仁「どういう設計思想だ……」 チ「それはもう、第一地下基地を制圧し…
[良い点] 80-07 気さくな魔導頭脳 更新ありがとうございます。 [気になる点] チェルに搭載されている、各種能力は凄いですね。 魔道頭脳が人に対して気さくに対応できるというのも、凄いですね。 …
[良い点] チェルさん気づいてたー?! しかも相手の事情も察するなんて…作ったアーノルトさん…凄スギィ! コミカライズ40話更新。まだの人は早速見に行きませう。 振「義弟がメイドゴーレムの充電器にな…
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