79-15 第2地下
「あの施設を作った連中にも『こんなこともあろうかと』な考えをしていたやつがいたんだな」
報告を聞いた仁が顔を顰めながら呟いた。
そして老君も、『覗き見望遠鏡』で地下施設のさらに地下を探査し、報告を行う。
『御主人様、小規模な施設が地下100メートルに存在します』
「100メートルか。シェルター的な施設かな?」
『いえ、生物用の施設ではありませんね。魔導頭脳と戦闘用と思われるゴーレムが3体。汎用と思われるゴーレムが2体。それに白い髪の自動人形が1体』
「白い髪? 青じゃなく?」
『はい』
「違うコンセプトの自動人形かな?」
『はい、御主人様。いずれにせよ、ゴーレムも自動人形も動いておりません。起動したのは魔導頭脳のみのようです』
老君の説明を、仁は自分なりに考えてみた。
「それって、様子見をしているということか?」
『はい、御主人様。そうだと思われます』
だとすると、こちらの魔導頭脳は、『イザーク』よりも高度な知性を備えている可能性があるな、と仁は警戒感を強めた。
「で、他に動きは?」
『はい。その『第2地下』と『第1地下』を繋ぐ隔壁が開いたようです』
「人間がいないからいいが……空気はどうなんだ?」
数百年換気されていなかった空気であれば、酸素がなくなっている可能性が高い。
それ以上に、施設の長期保存のために窒素で満たされていた可能性だってあるわけだ。
『はい、御主人様。『職人』291からの報告によればノーマルです』
「そうか」
『ここは向こうの出方を待つしかないようですね』
「うむ、そうするか」
ここから先は、その魔導頭脳の出方次第だな、と待つことにする仁たちであった。
* * *
その『現場』、『ルトグラ砦』地下では、『職人』たちとユミィ、ヴェラが相談を行っていた。
「老君からもうしばらく様子見をするよう指示が来た」
「了解だ」
「わかりましたわ」
待機の時間となる……が、それはそう長いものではなかった。
開いた隔壁を通って、『汎用』ゴーレムが1体、『第2地下』から上がって来たのである。
そのゴーレムが口を開いた。
「む? ……ゴーレムか。それに青髪の自動人形……いったい何があった?」
どうやらこのゴーレムとは話ができそうだ、と『職人』たちは感じた。そこで『職人』291が代表で話をすることにした。
「そちらは、ここよりさらに地下にある施設に所属するゴーレムだな?」
「そのとおりだ」
「現状を知りたいか?」
「そうだな。教えてもらえるならその方が手っ取り早い」
その返答を見ても、魔導頭脳『イザーク』の配下より遥かに話が通じることがわかろうというもの。
「わかった。音声がいいか? 通信がいいか?」
「時間を掛けたくない。通信で頼む」
「よし」
そうして、『職人』291は汎用ゴーレムとやり取りするための魔力波の周波数を決めていく。
「できるだけ低周波で頼む」
「それはなぜだ?」
「干渉を避けるためだ。お前たちを疑うわけではないが、信用しているわけでもない」
高周波の魔力波には、多少なりとも洗脳・暗示の効果が混じっているもの……らしい。
「それはわかる。……では……《これくらい》でどうだ?」
「うむ、ちょうどよいな」
そこで、かなり低い周波数帯域を使い、現状の説明を行う『職人』291。
低周波とは言っても、1秒で状況説明を終わらせられる。
《……ということだ。わかったか?》
《うむ。そんなことが……俄には信じられん》
《とはいえ、真実だ》
《感謝する。一度戻って、『魔導頭脳』に報告してくるとしよう》
そう告げて汎用ゴーレムは来た道を戻っていったのであった。
* * *
その様子もまた、仁と老君、礼子らが観察していた。
「どう思う、老君?」
『はい、御主人様。明らかに『イザーク』よりもできのいい制御核を持っていますね』
「やっぱりそう思うか」
「わたくしもそう思います」
「礼子もか。……どういう関係なんだろうな?」
『……やはり、バックアップといいますか、最後の手段といいますか、そんな扱いの施設が動き出したのでしょう』
そのきっかけは魔導頭脳『イザーク』が停止したことにあるはず、と老君は推測している。
「そうか……。しかし、『イザーク』か……」
「どうなさいました、お父さま?」
「いやな、『イザーク』って知り合いがいるからさ……」
『ああ、『タジー村』の村長さんの娘さん『ヘルガ』さんの幼馴染の方ですね』
「そうそう。多分カチェアも知っているだろうしな……」
もしも無力化後に改造するなら、違う名前にしてやろうと密かに思った仁であった。
* * *
そして『ルトグラ砦第2地下』。
『なるほど、それが現状か』
「100パーセント信用できるかどうかはわかりませんが、参考にはなるかと」
『そうだな。参考にはなった』
「どうされますか?」
『そうだな……対人インターフェースを出し、世界を確認させてみよう。情報が真実なら、対人インターフェースが害されることはあるまい』
白い髪の自動人形。
その身体的能力は人間の1.5倍程度、不慮の事態に対応しきれる保証はない。
だがこの『魔導頭脳』は、いま得たばかりの情報により、いきなり攻撃され、破壊されるような事態にはならないだろうと判断したのである。
『念の為、護衛を付けよう』
今情報を持ち帰った汎用ゴーレムを護衛に付け、2体を外部調査に送り出すことにしたのである。
「一つ提案があります」
汎用ゴーレムが口を開いた。
『何だ? 聞こうではないか』
「はい。……『上』にいる自動人形かゴーレムの1体に、案内するよう申し入れるというのはいかがでしょうか」
『ふむ、なるほど。無闇矢鱈と歩き回るよりも効率はいいだろうな』
「そういうことです」
『その案を採用しよう。お前から申し入れるがいい』
「わかりました」
そして2体は動き出し、上へと向かう通路を上っていったのである。
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