79-14 非常用施設
『ルトグラ砦』の地下施設。
その管理統括魔導頭脳『イザーク』を無力化したユミィとヴェラ、それに『職人』たち。
「これで制圧できたということになるのかな?」
そんな『職人』291にユミィは、
「いえ、戦闘用ゴーレムと医療用ゴーレムがどこかにあるはずです」
と助言した。
が、『職人』291は、
「ああ、それならもう298と299が見つけている」
と言ってユミィを安心させた。
しかしその時、地下施設のどこかで、扉が開いたような音がしたのである。
「む? 今の音は?」
「扉が開いたような音だな」
「どうやら、まだ我々の知らない部屋があったらしい」
「……この地下施設はなかなか手が込んでいるようだな」
そこへ『職人』295が報告のためにやって来た。
「どうやらここには、さらに地下施設があったようだ。最深部で、より深い地下に通じていると思われる扉が開いた」
「ふむ。……つまり、2重の防衛対策がなされていたということか?」
「そうらしい。というより、そちらが本命なのではないか?」
「ありうるな」
そして『職人』たちは、次に起こることを待ち受けたのであった。
* * *
『ルトグラ砦』の地下施設。
そこは、『魔導大戦』……当時は『対魔族戦争』と言った……の時に作られたもの。
ディナール王国の若手魔導技術者が7人掛かりで建造したのだ(作業者除く)。
それぞれ、班に分けられた彼らは自分の得意分野を担当し、それなりに見事と(大戦末期なら)言われるものを作り上げていた。
1人は地上施設。
1人は地下施設。
1人は戦闘用ゴーレム。
1人は治療用ゴーレム。
1人は地下施設を統括する魔導頭脳。
この班……5人が手掛けた『地上施設』=『ルトグラ砦』と、『地下施設』は戦略上重要な拠点として扱われた。
そして、もう1つの班の2人は、『非常用施設』を。
この『非常用施設』というのは、大戦末期の戦況を反映している。
それは、『魔族』により、地上施設のみならず、地下施設までも蹂躙され続け、じわじわと大陸南に押し込められている現状を鑑みて、もう1段の備えをしようというのである。
「地上施設と、今作られている地下施設。それらが無効化された時に起動する、でどうだろう?」
「うむ、起動条件はそれでいいだろうな」
そんな相談がなされ、地下施設のさらに地下深くに、『第2地下施設』が作られたのだ。
そこは避難所としての機能は持たず、ただただ『報復』のための設備があるだけ。
もちろん、攻撃してきた『魔族』への報復である。
「地上施設も地下施設も、おそらくは『魔族』にやられるだろう」
「そうなったら……あとは魔導頭脳の判断に任せるしかないな」
『非常用施設』を担当した2人は、7人の中でもトップレベルの技術者であった。
そして同時に、やや独善的でもあった。
そんな2人が手掛けた『非常用施設』は、少し……いや、かなり特殊な構成をしていたのである。
起動条件は、浅い階層にある、仁たちが『敵基地』と仮に呼んでいる、魔導頭脳『イザーク』が管理している階層が突破された時。
すなわち魔導頭脳『イザーク』が停止した時、が設定されていた。
『上の階層を管理する魔導頭脳が停止したようだな。何が起こっているのか』
第2の魔導頭脳が目覚めた。
魔導頭脳は現状把握に努める。
およそ30分。
その間に、『上の階層を管理する魔導頭脳』を停止させたと思しきゴーレム10体と、よその施設の対人インターフェースと思われる青髪の自動人形2体を見つけた。
さらに、地上に派遣されていた『ギガース改』が『上の階層を管理する魔導頭脳』の停止とともに動き出し、近くの町を蹂躙する……かと思われた矢先、巨大なゴーレムが天から降ってきて『ギガース改』に戦いを挑んだのを見届けた。
戦いは終始巨大ゴーレムが『ギガース改』を圧倒していた。
そして驚いたことに『ギガース改』の『魔力核』を無傷で手に入れてしまうところも見てしまった。それも2機分。
『侮れん相手だ……が、味方なのか? それとも敵なのか?』
『ギガース改』が、畑や果樹園を損なう前に無力化してくれたわけである。味方であってほしかった。
圧倒的な戦闘力。
だが、巨大なだけで、その設計思想は『ディナール王国』の技術に幾分似ていた。断じて『魔族』のそれではない、とも確信する。
『敵であったら、到底敵わないな』
彼我の戦力差は、正確に分析できていた。
『もう少しだけ、様子を見よう』
魔導頭脳は情報収集に努めることにしたのであった。
『報復』のための設備として作られたはずが、『独善的』な技術者は、総監督の言うことを全て守ったわけではなかったのである。
そしてそれが、この施設の運命を決めた。
* * *
一方、『職人』とユミィ、ヴェラ。
「老君によると、この地下施設のさらに地下に、小規模な施設が見つかったそうだ」
『職人』291は、老君から現状の情報を得ていた。
「それによると、規模は小さく、人が避難できるような施設はない、ということだ」
「だが、独立した施設なのだろう? 用心のいいことだ」
そして待機状態に入る。
時間が過ぎていく中、『職人』291はヴェラに質問をする。
「ここの魔導頭脳は『仲間意識』というものはないのか?」
そんな『職人』291の呟きのような問いかけに、ヴェラは答えた。
「ないのでしょうね。『自分が管理する施設』が最優先なのでしょう。至上主義と言ってもいいかもしれません」
「うむ……」
「なにせ、私たちがいた『島基地』から、こちらの施設に必要そうな資材を根こそぎ持っていくような考え方をしていますから」
「そうだな。それについては老君も言っていた。自分が管理する施設の機能維持を最優先するということ自体は間違ってはいない、と」
だが、同僚といえばいいのか、同列の施設を破壊してまで持ち出すというのは普通ではない。
「確かにそうですね。『分業』といいますか、『役割分担』を極端に突き詰めていった結果なのではないでしょうか?」
ユミィが意見を述べた。
「うむ。君がそう判断するなら、それはより真実に近いのかもしれないな」
『非常用施設』との対決は近い……。
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本日6月17日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
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20210617 修正
(誤)こちたの施設に必要そうな資材を根こそぎ持っていくような考え方をしていますから」
(正)こちらの施設に必要そうな資材を根こそぎ持っていくような考え方をしていますから」
20210714 修正
(旧)それぞれ、自分の得意分野を担当し、それなりに見事と(大戦末期なら)言われるものを作り上げていた。
(新)それぞれ、班に分けられた彼らは自分の得意分野を担当し、それなりに見事と(大戦末期なら)言われるものを作り上げていた。
(旧)
1人は地下施設を統括する魔導頭脳。
(新)
1人は地下施設を統括する魔導頭脳。
この班……5人が手掛けた『地上施設』=『ルトグラ砦』と、『地下施設』は戦略上重要な拠点として扱われた。
(旧)そして、残る2人は、『非常用施設』を。
(新)そして、もう1つの班の2人は、『非常用施設』を。
(旧)「だが、そうなったなら、『ここ』が報復戦を行うだろう」
(新)「そうなったら……あとは魔導頭脳の判断に任せるしかないな」
(旧)
魔導頭脳は情報収集に努めることにしたのであった。
(新)
魔導頭脳は情報収集に努めることにしたのであった。
『報復』のための設備として作られたはずが、『独善的』な技術者は、総監督の言うことを全て守ったわけではなかったのである。
そしてそれが、この施設の運命を決めた。




