79-13 『タイタン』VS『ギガース改』
蓬莱島から派遣された『コンドル』1と2が現場に到着した。
『コンドル』は4つのリング状の『魔法型噴流推進機関』を持ち、現代日本でいう『ドローン』のような形状をしている。
その中心部に『タイタン』をぶら下げているのだ。
『御主人様、このままではルトグラ周辺の畑や果樹園が踏み荒らされます』
「よし、『タイタン2』、『タイタン3』、『魔法障壁』を全身に展開。その後、降下だ」
『はい』
『ギガース』は周囲の自由魔力素を集め、自分のエネルギーとする。
それは触れた相手にも及ぶので、『魔法障壁』を展開する必要があるのだ。
その場合、『魔力反応炉』は一時停止し、こういうときのための『魔力貯蔵庫』に蓄えられた魔力素を使用する。
『『コンドル1』、『タイタン2』リリース。『コンドル2』、『タイタン3』リリース』
2体の超大型戦闘用ゴーレム『タイタン』は、50メートルの上空で切り離され、それぞれ『ギガース改』の頭上へと落下、いわゆる『フリーフォールキック』をお見舞いした。
凄まじい轟音が響き、2体の『ギガース改』の上半身が粉砕された。
その音に、避難していた人々は振り返り、迫りきていた怪物が、銀色の巨大ゴーレムに押し止められているのを目にしたのである。
「おお、あれは味方なのか!?」
「そうらしい。……頑張れー!」
幾人かは足を止め、『タイタン』を応援する。
* * *
『タイタン2』は礼子による操縦である。
人間には耐えられない加速度や衝撃も、礼子には何の痛痒も与えない。
30メートル強の距離を落下し、『ギガース改』の頭部を粉砕しながらの両足蹴り。
強化された『タイタン2』のボディはその衝撃に耐えたものの、『ギガース改』を構成している岩石は砕け散る。
危なげなく着地する『タイタン2』。
だが、『ギガース改』もまだまだ余力があるようで、周囲の岩石を集め、再生しかけていた。
「相変わらずしぶといですね」
『ギガース』も『ギガース改』も、周辺の自由魔力素を利用して動作する。
そして周囲の岩石を集め、身体を形成するのだ。
「やはり、『魔力核』を破壊する必要がありますね。……老君から、研究のために1つは確保してほしいと言われてますが、それは『タイタン3』に任せましょうか」
だが、万が一を考慮し、『タイタン3』が『魔力核』を確保するまではこちらの『ギガース改』を破壊するのは見合わせておこうと考え、少し距離をとったのである。
* * *
『タイタン3』は老君が操縦する機体である。
その視覚センサーからの情報と、『覗き見望遠鏡』による映像を利用し、広い視点での行動ができるのが強みだ。
ちなみに、礼子の操縦する『タイタン2』はパワー重視のチューニングが、老君の『タイタン3』は精密動作重視のチューニングが施されている。
さらに、今回出動しなかった『タイタン1』は半自律タイプで、中庸なチューニングとなっていた。
その『タイタン3』もまた、上空からの『フリーフォールキック』を行ったあと、『ギガース改』の背後に着地した。
『ふむ。『改』といえども、周囲の様子を察知するセンサーはそれほど性能がよくなってはいないようですね』
擬似的に形作られた関節の構造からいって、前面が優先されており、背後への攻撃手段がないのである。
『御主人様も『ギガース改』の『魔力核』には興味を持たれると思いますから、確保しておきますか。……礼子さんにも一応頼みましたが、多分破壊を優先されるでしょうからね』
礼子の性格を十全に理解している老君であった。
これが仁自ら礼子に頼んだのなら、絶対に背くことはないのだが。
『では』
フリーフォールキックを受け、大破した上半身の再生中を狙い、右拳での正拳突き。
『ギガース改』の身長はおよそ18メートル。『タイタン』は3機とも15メートル。
若干の体格差はあるが、動作速度とパワーは遥かに『タイタン』の方が上である。
再生途中だった『ギガース改』の上半身が再び吹き飛んだ。
そしてもう一撃。
腰のあたりまで吹き飛ぶ『ギガース改』。
その、ちょうど腰の部分に『魔力核』があった。
『『ギガース』は胸部でしたが、『改』は腰部ですか』
老君は『タイタン3』の両手に『魔法障壁』を局所展開し、その『魔力核』を掴み取った。
『魔力核』による制御を失い、残った下半身は瓦礫となって崩れ去る。
そして老君の操縦する『タイタン3』は『ギガース改』の『魔力核』を確保したのであった。
* * *
老君の操縦する『タイタン3』が『魔力核』を確保したことを知った礼子は、もう加減は無用と、『タイタン2』のフルパワーによる拳を『ギガース改』に叩きつけた。
砕け散る『ギガース改』の右肩。
もう一撃。今度は左肩が砕け散り、『ギガース改』は両腕を失う。
痛みを感じない『ギガース改』はそれでも『タイタン2』に向かってくる……が、さらなる拳撃に、上半身が砕け散った。
その腰部に『魔力核』があることを礼子は知っているので、再生が始まる間に破壊するべく、手刀を突き込み、『魔力核』を取り出したのである。
「確保できちゃいましたね……2個あって困るものでもないので持ち帰りましょう」
『魔法障壁』を展開した掌で『魔力核』をしっかりと確保する『タイタン2』。
『ギガース改』の残った下半身が崩壊するのを尻目に、『魔法障壁』を展開した掌で『魔力核』を持ち、『タイタン2』は『タイタン3』と合流した。
そこへ、老君からシールドケースが転送されてきたので、『魔力核』を2個ともそこへ入れて封印すれば、『ギガース改』の脅威はなくなった。
* * *
「おお、すげー!」
「救世主だ!!」
ルトグラ町の住民は『ギガース改』と『タイタン』の戦いを遠くから眺め、『タイタン』の勝利に快哉を叫んでいた。
後に、この戦いは半ば伝説化して後世に伝えられていくのだが、それはまた別の話である。
* * *
「ご苦労だったな、礼子、老君」
蓬莱島では、戦闘の一部始終を見ていた仁が老君と礼子を労っていた。
『いえ、なんということはありませんでした、御主人様』
『お父さま、これから帰ります』
『タイタン』2機は『コンドル』に運ばせ、礼子は『タイタン』内蔵の『転移門』で蓬莱島へ戻ってきた。
「ただいま戻りました」
「おかえり、礼子」
「『ギガースの魔力核』は老君に任せてあります」
「ああ、それでいい。この騒動が終わらないとゆっくり解析もできないだろうしな」
そして仁は、ユミィとヴェラ、それに『職人』たちの様子を確認するのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210616 修正
(誤)『ギガース改』の驚異はなくなった。
(正)『ギガース改』の脅威はなくなった。




