78-36 強化と紛糾
発見された『敵基地』。
それは『ルトグラ』の少し北にある砦の地下であった。
「そこは『魔導砦』なのか?」
『いえ、そこまでのものではないようです』
「そうか」
かつてフランツ王国にあった『クロゥ砦』。それは魔導大戦時に作られた『魔導砦』であり、魔導頭脳によって管理されていた。
それを仁は無力化し、魔導頭脳を改造し『太白』と名付け、崑崙島を管理するようにと指示を与え移設したのである。
が、『ルトグラ』の少し北にある砦は『魔導砦』ではない、と老君は言ったのだ。
『地上部は完全に遺跡化しており、地下にある魔導頭脳はその地上部を完全には管理できていないようです』
「なるほどな。そこもある意味未完成なのかな?」
『その可能性もあります』
とはいえ、その『敵基地』をどうするか。
それが当面の問題である。
「セルロア王国内の砦だしな……一応報告しておくべきだろうな」
『では、『デウス・エクス・マキナ3世』を使いますか?』
「今は手が空いているのか?」
『はい。『大聖堂』から戻り、明日に備えている状況です』
「……だったら、マキナからセルロア王国国王に、その砦地下に魔導大戦時の遺跡が残っているので調査したい、と申し入れさせよう」
少々遠回りのようであるが、ルトグラの町も近くにあるため、勝手に『施設』の立ち入り調査……という名の制圧はしないほうがいいと判断したのである。
そしてマキナ3世と『エクス』は公的に別人扱いなので、短時間なら問題ないと仁は判断。
また、老君がスケジュール調整をしてくれるので安心だった。
「それじゃあ老君、『敵基地』の方はそういう方針で行こう」
『はい、御主人様』
* * *
「それじゃあ、ユミィとヴェラを本格的に強化しようか」
「強化ですか?」
仁の言葉に対し、ユミィが尋ね返した。
「ああ、そうさ。今の2人は応急処置的な修理しかしていない。今後もずっと役に立ってもらいたいから、アンやロルやレファと同等の性能にしようと思っている」
「同等、ですか?」
今度はヴェラの疑問表明。
どうやら先輩青髪自動人形の今現在のステータスが理解できていないようだ。
それも無理からぬこと。ほぼデフォルトの性能である2体には、他者の強さを察知できるほどの機能はないのだから。
「ああ。……そうだな、例の侵入してきたゴーレムを余裕で撃退できるくらい……かな」
実際にはそれ以上の性能になると思われるが、わかりやすい表現をした仁である。
「それは素晴らしいですね。是非お願いいたします」
「ご主人様、お願いいたします」
「よし」
そういう流れで、仁はユミィとヴェラの本格的な改造に取り掛かった。
助手をさせるために礼子をロイザートから呼ぶ。
幸い、今現在ロイザートは夜なので、仁Dも寝ていることになっており、その警護をしている礼子が部屋の中にいないことがバレる心配はない。
「お父さま、お手伝いいたします」
ここのところミニ礼子を通じてしか仁と一緒にいられなかったので、助手を務めることになった礼子の機嫌はよい。
「今現在のレファと同スペックにするぞ」
「はい」
最初の改造以降も、数々の改良を施しているため、レファの性能はとんでもないものになっている(礼子にはかなわないが)。
今現在は、骨格は64軽銀、筋肉組織は『海竜の翼膜』と『地底蜘蛛糸』のハイブリッド。
皮膚は地底蜘蛛樹脂、動力源は『魔力反応炉』。
触覚も持ち、『隷属書き換え魔法』への対策も施してある。
主な仕様は以上。
特記すべきは、ユミィとヴェラに内蔵されていた『暗器』は取り外されたことであろう。
暗器などなくても、十分に強いのだから……。
外見は元のまま。
だが『制御核』はグレードアップされる。
その記憶をはじめとする基本情報はまるまる引き継ぐので性格や言動が変わることはない。
ほとんど新造とも言える改造だが、あくまでも『改造』と仁が言い切るのは、このことがあるからである。
仁曰く、『人を人たらしめるのは魂である』。ゴーレムや自動人形も同じ。
身体が入れ替わったとしても、『魂』に相当する基本情報が変わらなければ、同じ存在である、と。
そんなわけで、仁は2体の改造を礼子とともに進めていった。
* * *
「どうだ、調子は?」
「はい、とてもよい調子です」
「これまでになくよい調子です」
1時間ほどで2体の改造は終わり、仁と礼子は動作確認を行っている。
「それならよし。そのボディの構成や機能についての知識は補助記憶装置にあるはずだが、わかるかな?」
「はい、大丈夫です」
「はい。ただ……」
「ただ?」
「……これは、『侵入してきたゴーレムを余裕で撃退』できるというレベルではない気がします」
それを聞いて仁は笑った。
「ああ、そこまでわかるか。そうだな。推測だが、あのゴーレムが10体いても余裕で撃退できるだろうな」
「……ありがとうございます」
「身命を賭してお仕えいたします」
ユミィとヴェラの忠誠心は最初からMAXであった。
* * *
一方、セルロア王国。
夜だと言うのに、議会では激論が戦わされていた。
「麻薬と一口に言っても、さまざまなものがある。医療用に使えるものから、毒性の強いものまでな」
「それを見極めずに一方的な取り締まりはできないと言われるのか?」
「さよう」
「それはおかしい。我が国は法治国家である。その定めた法に乗っ取り、司法権を行使することの何がいけないのか」
「その法が適切でなければ、改めることに何のためらいがあろう」
「待て待て。それでは、麻薬の取り締まりを行いたくないから法を改正……いや改悪しようと言っているようにも聞こえるぞ」
「何だと? 貴公は私を侮辱するのか?」
「いや、その気はない。ないが、もう一度言っていることを顧みてみられよ」
「ぐぬ……」
「つまるところ、『捜理協会』と『公平党』をどうするか、ということだろう?」
「…………」
議会の最高責任者でもあるセルロア国王ボザール・ヴァロア・ド・セルロアは、内心で溜息をついていた。
(議会のまとまりがない。……これは、捜理協会からの手のものが紛れ込んでいるからなのか、それとも……)
疑念は膨らむばかりである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日5月30日(日)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20210530 修正
(誤)助手を務めることになった例この機嫌はよい。
(正)助手を務めることになった礼子の機嫌はよい。
(誤)「これでになくよい調子です」
(正)「これまでになくよい調子です」




