78-37 調査団
会議が紛糾しているそんな中、セルロア王国国王宛に臨時連絡が入った。
「デウス・エクス・マキナ3世殿が来訪されるとのことです」
「マキナ殿が? こんな時間に?」
「はい。何でも、緊急を要する案件だそうです」
「うむ……」
少し考えたあと、セルロア国王は、会議を一時中断させ、マキナ3世と会うことにした。
ここで時間をおけば、熱くなったメンバーの頭も冷えるだろうと期待しながら。
「宰相も同席してくれ」
「承りました」
* * *
執務室でセルロア国王はマキナ3世を迎えた。
「これはマキナ殿、一別以来ですな」
「陛下もご機嫌麗しゅう。宰相殿もお元気そうで何より」
などというとおり一遍の挨拶の後、マキナ3世は本題に入る。
「緊急を要することというのは、『ルトグラ』の少し北にある砦の地下に、謎の施設があることがわかったのですよ」
「なんと!?」
驚く国王。しかし、宰相が口にしたセリフはマキナ3世を驚かせることになった。
「陛下、あそこには『アヴァロン』から調査隊が向かっておりますぞ」
「え?」
* * *
砦の名前はそのまま『ルトグラ砦』。
魔導大戦初期に建設された砦である。
400年前……リシャール王からセザール王に代替わりした頃から放棄され、久しい。
そんな『ルトグラ砦』を、『アヴァロン』の『アカデミー』から派遣された研究生たちが訪れようとしていたのである。
「急ぎ止めたほうがよろしいか? マキナ殿?」
「そうですね、できうるなら」
「わかり申した」
宰相ダイン・セーメ・ド・パースは、セルロア王国とデウス・エクス・マキナ3世の連名で『アヴァロン』への緊急通信を行った。
だが。
「マキナ殿、一足遅かったようです。もう『調査団』は『ルトグラ砦』に到着したとのことです」
「何だって……メンバーは?」
「確認しますか?」
「いや……もう遅いかもしれないが、これからサポートに向かうことにする」
そう言い残し、マキナ3世はセルロア王国国王の執務室を後にした。
国王と宰相は最初から最後まで、訳がわからなかった。
が、従騎士レイが、
「簡単な報告書です。お読みください」
と言って置いていってくれた1枚の書類を見て、ようやく事態の重要さに気が付いたのである。
その書類には、
『当該砦の地下には『魔導大戦』末期に作られた施設があり、今も不完全ながら稼働中。
問題なのは、施設には戦闘力が残っており、いつ暴発するかわからないため、早急に無力化する必要がある。
『魔導大戦』時の施設のため、『北方民族』を近づけるのは厳禁』
と書かれていた。
「むむ……『調査団』に『北方民族』がいないことを祈るしかないな」
宰相は思わず天を仰いだ。
だが、その祈りは届かなかった……。
* * *
『アヴァロン』の『アカデミー』では、『旧ディナール王国』の技術を解析し、現代に役立てようというプロジェクトが発足していた。
その一環として、各地の『遺跡』の調査を行っていた。
そして今回はセルロア王国の『ルトグラ砦』がその対象になっていたのである。
メンバーは以下のとおり。
団長はアヴァロン技術管理官ギジュウ・シツド。副団長は同じく技術管理官リンカース・カンデ。
団員は実用ゴーレム研究室、通称『ゴー研』からエイラ・シアータとグローマ・トレー。土木研からラザロ・デロッシ。
そして医療研からはカイン・ゲイが参加していた。
他に、世界警備隊からアレオ・ヨカ・ナイツが、セルロア王国からは兵士のショウ・ノリジが護衛として同行。
加えて、『ゴー研』のゴーレム『GXー027』が護衛兼荷物持ちをしている。
また、セルロア王国の考古学者ボンドック・セイクットが案内人として参加していた。
そして、デウス・エクス・マキナ3世がセルロア王国に知らせを入れたその日の昼過ぎには、一行は『ルトグラ砦』に着いていたのである。
「やっと着いたか」
誰ともなく、そんな声を漏らした。
ルトグラの町から砦までは15キロほど。
一行は馬車で移動したのだが、道らしい道もなく、馬車が揺れて非常に乗り心地が悪かったのである。
『アヴァロン』の乗り物を使わないのは、移動も学びの一環としているためである。
「これが通称『ルトグラ砦』か……」
一休みした後、『調査団』は早速調査を開始した。
それはまずは砦の外見から始めることになる。
この砦は、『魔導大戦』時のものとしては平均的な作りである。
石材は付近で採れるものを使っており、ここでは珪岩と呼ばれる石英質の硬い岩だ。
「ふむ、他の砦と構造は似ているな」
まずは土木研のラザロ・デロッシが調査を開始する。
「そうですね。はるか北のトスコシアと少し南西のベシュとイゾルの間にも砦はありますが、ここ『ルトグラ砦』は『魔導大戦』時の遺構として標準的なものでしょう」
考古学者ボンドック・セイクットが歴史的・地理的な説明を行った。
「ここはリシャール王陛下の時代まで現役で使われておりましたので、細部には手を加えております。しかし、全体の構成は古のままであるはずです」
護衛のショウ・ノリジも説明をしてくれた。彼はルトグラの町出身なのでそこそこ詳しいのだ。
「そろそろ日が暮れます。中へ入りましょう」
「そうですね」
全体の観察を終えた一行は、ショウ・ノリジの案内で今宵の宿である『ルトグラ砦』に足を踏み入れた。
「ほう、これは……」
「しっかりした作りだな」
壁、天井、床。
石材の継ぎ目は、隙間がなく、ぴっちりと合わさっている。
建築に詳しくない者が見ても、見事と思ってしまうであろう眺め。
一行は宿泊に使える部屋へと案内された。
煮炊きをするための施設もあり、一行は温かい食事を摂ることができた。
食事の用意をしたのは『ゴー研』のゴーレム『GXー027』。戦闘用寄りの汎用型なのだ。
「うん、美味いな」
「あたしより料理、うまいよな」
「はは、エイラに比べたら、俺だってうまいぞ」
「ふん、悪かったね!」
「げほっ! ……食べている最中に叩くな!」
エイラは料理下手である。
それを揶揄したグローマの背中を思いっきり叩いたエイラであった。
その時。
「な、何だ!?」
砦全体が鳴動し始めたのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は『蓬莱島の工作箱』も更新しております。
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お楽しみいただけましたら幸いです。
20210531 修正
(誤)副団長は同じく技術管理官
(正)副団長は同じく技術管理官リンカース・カンデ。




