表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
78 過去からの縁篇
2968/4341

78-35 敵基地

「……ちょっと話はそれるがな」


 仁は、考えをまとめるように一息ついてから切り出した。


「『施設』という呼び方をなんとかしよう。向こうもこっちも『施設』と呼んでいると紛らわしい」

「確かにそうかも知れませんね」

「ご主人様の仰ること、わかります」


 呼称というものは重要である。紛らわしい名前で読んでいると思考も混乱するし、相手がいる場合は意思伝達に齟齬そごが生じる可能性さえある。

 それを察したユミィとヴェラも同意してくれたので、それぞれの呼び方を考えてみることにした。


「島にある『施設』の方は『島基地』。未知の施設は『敵基地』と仮に呼ぶことにしましょう」

「まあ、区別ができればいいかな」


 ユミィの提案が、わかりやすかったのでそれを採用することにした。

 あくまでも『当面』の呼び名であり、話をする上での誤解が生じないようにすることが目的だからだ。


「それじゃあ改めて話をしよう。……『敵基地』には管理統括する魔導頭脳があるのかな?」

「あります」


 ヴェラが即答した。ここからは彼女がスポークスパーソンとなるらしい。


「再起動し、状況を問い合わせた際に返答したのが魔導頭脳でした」

「それもそうか。……その魔導頭脳って、もう『魔導大戦』が終わっていることを知っているはずだよな?」

「はい、間違いなく」

「うーん……だとしたら、どうして『ギガース改』なんて欲しがったのかな?」


 仁が知る限り、『ギガース』という兵器は平和利用などできそうもない。

 それを必要とするということは、『軍備拡張』に他ならない、ということになる。


「『北方民族』……君たちが『魔族』と呼んでいた民族との和解が成立していることは知っているのかな?」

「はい、存じております。『老君』様から『知識転写(トランスインフォ)』で教えていただきました」

「それならいい」


 仁は内心でほっとしていた。と同時に、気が付いたことがある。

 もしもの話ではあるが、発見時にここ『島基地』が『始祖(オリジン)』の基地だと早合点してマリッカを連れてきていたら、一触即発だった可能性がある。


(……今回は『遺跡の管理者(レリックマスター)』の出番はないな……)


 そして、そこから連想したことがある。


「……『敵基地』の魔導頭脳は、『魔導大戦』が終わったことは知っていても、『北方民族』との融和が成立していることを知らないとしたら……?」

「ご主人様、その可能性はあると思います」

「やっぱりか」


 そうなると、『敵基地』では、『魔導大戦』の次となる戦いに備えている、ということになる。


「現状を正確に把握してくれていればそんなことにはならないんだろうけどな……」


 仁がつぶやくと、ヴェラがそれに答える。


「どこかで、何かが狂ってしまった可能性もありますね」


 それなりに昔に作られた『魔導頭脳』であるし、その前提条件は古く、もはや時代に即していない。


「だとしたら危険だな……」


 今の世界を見渡せば、どこかしらに『北方民族』がいる。

 それを感知して攻撃を加えるようなことがあれば……。と、仁は心配していたのだ。


「ああ、そうした『北方民族』を既に感知しているのかもな」


 狂った……というよりも、本来の役目を果たしているだけということになる。


「早急に、『敵基地』がどこにあるのか見つけ出さないとな。……何か手立てはあるかな?」

「そうですね……こちらから連絡をしてみたらどうでしょうか。応答するかはわかりませんが……」

「やってみて損はないな」


 通信装置を作動させ、その通信波が指向性を持っていれば、『敵基地』の特定が楽になる。

 そして、盗聴の対策のため、指向性を持たせているはずなのだ。

 同時に仁は老君へ指示を出す。


「……そういうわけだ。老君、頼むぞ」

『はい、御主人様(マイロード)


 そんな短い言葉でも、老君は何をすべきか瞬時に察し、探知準備を整えていった。


 そして仁はユミィにも指示を出す。


「よし、やってみてくれ」

「はい、ご主人様」


 ユミィは壁際まで歩いていき、その一部を手で押した。その部分はくるりと回転し、コンソールが現れる。通信機らしい。

 緑色のボタンを押すユミィ。


「呼び出し信号が発せられているはずです」


 1分ほどそのままで待つ。だが、何の反応もない。

 さらに1分、また1分。

 計5分間、呼び出しを行ってもらったが応答はなかったのである。


「申し訳ございません」

「いや、ユミィのせいじゃないから」


 『敵基地』が『通信管制』をしている可能性が高い、と仁は考えている。

 魔導頭脳が『戦時中』もしくは『準戦時中』と考えているなら、であるが。


『その可能性は高いと思います』


 老君も仁の推測を支持した。


「応答してくれないとなあ……」


 結局、この方法では『敵基地』の位置を特定できなかった。


 だが、そこは老君。

 通信波は、完全な指向性を持っていたわけではなかったが、かなり狭い範囲に向けられていたのだ。

 その方向は北北西。

 そちらにはショウロ皇国との国境線があり、『イゾル』『ベシュ』『ルトグラ』という町があり、『イゾル』と『ベシュ』の間には古い砦がある。

 そして『ルトグラ』の少し北にも同様に古い砦があるのだ。


 このどちらかの地下に『敵基地』があるのではないか、というのが老君の推測であった。


 そして、対象地域を絞ることができたなら、老君には『覗き見望遠鏡(ピーパー)』がある。

 それを用いて地下を探っていけば……。


御主人様(マイロード)、『敵基地』と思われるものを発見しました』


 程なくして、目的の基地を発見できたのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。

     https://ncode.syosetu.com/n5250en/

     お楽しみいただけましたら幸いです。


 20210529 修正

(誤)そうなると、『島基地』では、『魔導大戦』の次となる戦いに備えている、ということになる。

(正)そうなると、『敵基地』では、『魔導大戦』の次となる戦いに備えている、ということになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 導師辺りからの情報提供があるとは言え、辺りを付ける早さは流石老君。 [気になる点] 魔導砦もそうですが、 スホント山の施設の様に、宗教時代からの隠れ里も、見付かっていないだけでまだいくつか…
[一言] 状況考えればあらゆる方向に通信を向けるなんてありえないか 何せ、最後の砦扱い 当然、ここに来た時点で戦況は相当悪い状態 そんな時に無差別に通信波ばらまいたら、それこそ危険だし、絞れるなら絞っ…
[良い点] ユミィとヴェラのネーミングセンスもマギクラ並みのクオリティなんだぜ、誇ってもいいのよ? ホ「「…いいのよ』っと。まさかご主人様と同等のセンスとはやりますねぇ。」 \カチャカチャ…ッターン!…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ