78-34 解け始めた謎
蓬莱島に戻った仁を待っていたのは老君からの報告である。
『御主人様、マキナ3世がいろいろと新しい情報を引き出してきています』
「うん、聞かせてもらおう」
『まずは、『聖女』アリアンヌも『麻薬』を摂取しているという事実が判明しました』
「何だって……!?」
老君が急ぎ調べたところ、『ファナ』の依存性と身体への影響、残留などはごく小さい『らしい』。
そもそも、『賢者』以来禁止されたらしく、臨床データがほとんどないのだ。
『おそらくは、『影響がごく小さい』ために『聖女』にも服用させているのでしょうね』
そして『ファナ』が『覚醒系』の『麻薬』であることも、使用されている理由の1つであろう、と老君は続けた。
『頭がはっきりする、というのは一般的にいえば『いいこと』ですから』
「それはそうだな」
『ですが、『賢者』は、そして『御主人様』は、『麻薬』の常習をお認めにならないでしょう?』
「もちろんだ」
仁個人の倫理観と言ってしまえばそれまでであるが、このアルスでも、そして『始祖』も、『麻薬』の常習は諌めている。
また、どんな副作用があるか、未知な部分もあるからには、使わないに越したことはないであろう。
まして、『麻薬』の『覚醒作用』と似た効果を発揮する魔法もあるのだから。もちろんそちらは有害な副作用はない。
(ただし、『覚醒感』が癖になる、つまり『常習性』はある)
「まあ、その議論を延々とするつもりもないしな」
今現在問題視しているのは『捜理協会』の闇だ。
「その『アリアンヌ』という女性以外にも『聖女』っているのかな?」
『はい、御主人様。どうやらあと2人、いるようです』
「『聖女』が3人か……。その上にいるのが『導師』だって言ったな?」
『はい』
「うーん……。『マキナ』を主に操縦しているのが『導師』の名を持つ魔導頭脳だっていうのは皮肉なのかな?」
『私にはなんとも……』
「まあいいや。次はその『導師』の調査か?」
『それはなかなか難しいようです。というのも、『導師』は普段は一般人の前には姿を見せないということですので』
「そうなのか……それは厄介だな」
『はい。……この件は私にお任せください』
「そうだな、頼むぞ、老君」
『はい』
そして『暗示』についての話となる。
「『暗示』の効果のあるペンダントか……間違いなく魔導具だな。ユミィたちが言っていた、なくなった3つのうちの1つだろう」
『はい。その可能性が大です』
「悪用しているということか……そういえば、『施設』に侵入した人物についてはまだわかっていないんだな?」
『はい。今現在、優先度が低いので』
「それはそうだ」
そしてもう1つ、懸念事項があるが、それは今現在解析中である。
「老君は、もう1つの謎の侵入者って何者だと思う?」
『はい、御主人様。情報が少なすぎて、有効な推論さえできません』
「それはそうだろうな」
『ですが、可能性を追っていくと、幾つか挙げることはできます』
「聞かせてくれ」
『はい。まずは『マルキタス、もしくはその関係者』ですね』
「うん……だが、奴は『ギガース』は所有していなかった」
『はい。その危険性を悟って処分した可能性が無きにしもあらず、ではありますが、あくまでも可能性の1つとして』
「うん。……他には?」
『まだ未発見の『始祖』の基地関係のゴーレム、ですね』
「ありうるか……」
『それから、我々が把握していない、『仁ファミリー』の子孫ですね』
「ああ、そういう可能性も、確かにな……」
『これ以上は、情報がないため、推測ではなく想像になってしまいます』
「わかった、そっちはいい」
あと少しすれば、ユミィとヴェラから何らかの報告があるはずなのだから。
* * *
そして、仁待望の報告が行われた。
「お待たせいたしました、ご主人様」
『施設』に移動した仁を、ユミィとヴェラが出迎える。
簡単なテーブルと椅子が用意されており、仁は椅子に腰掛けた。
ミニ礼子は仁の前にちょこんと座る。
「まず、これをご覧ください。『清掃用ゴーレム』が記録していた画像から、辛うじてサルベージした侵入者の姿です」
「おお」
ユミィが1枚の紙を差し出した。
侵入してきたゴーレムのスケッチである。
清掃用ゴーレムの情報を検索し、辛うじて残っていた不完全な画像から再構築したものだという。
ちなみに、今回はユミィがスポークスパーソンだ。
「私どもは知らない型ですが、これはおそらくディナール王国の技術者が開発したゴーレムです。それが2体、侵入してきました」
「なるほど」
仁も旧ディナール王国の技術にはそれほど詳しくはないので、ここはユミィとヴェラの説明を素直に受け入れることにした。
「これもまた推測になりますが、大戦末期に開発された最新型でしょう」
「ふうむ」
そして、推測を交えての説明がなされた。
体型はマッチョタイプ。パワー型に見える。
身長はわからないが、2メートル前後ではないかと思われる。
外装は合金鋼のようだが、『強化』されていると思われ、関節部はアダマンタイトで補強されているようだ。
土属性魔法を使えるようで、パワーもかなりのもの。カスタマイズされたユミィやヴェラの50倍はありそうである。
「かなりの自律性を持っていると思われます」
ここで、仁は疑問を口にする。
「ええと、2人がやられたのはこいつになのか?」
「はい」
「同じ旧ディナール王国のものなのに、攻撃されたのか?」
「そういうことになります」
「それはなぜだろう?」
「わかりません。ですが、推測でよろしければ」
「聞かせてくれ」
「はい。……当該ゴーレムと、その所属する施設の『魔導頭脳』が、ここの『施設』を認めていないのです」
「それはなぜ?」
「未完成だからです」
「ああ……」
要は、未完成の施設から資材を徴収して、自分が管理する施設を充実させようと考えたのではないか、ということだ。
有り得る話だ、と仁は感じた。
「だが、だとすると、その施設は、まだ戦争が終わったことを認識していないのかな?」
仁の疑問、心配ごとはそれであった。
『旧ディナール王国』の『施設』でいろいろ問題ごとが起きている。
好むと好まざるとに関わらず、仁は巻き込まれていく……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210528 修正
(誤)ここはユミィとヴェラの説明を素直に受け入れることにした。」
(正)ここはユミィとヴェラの説明を素直に受け入れることにした。




