78-33 進む解析
ミスで昨夜 78-32 も投稿してしまっています。
お読みになる順序をお間違えなきようご注意ください。
蓬莱島では『エクス』と『レー』の体験を、老君が解析していた。
『『捜理協会』の理念に悪意はなかったのでしょうね……』
だが悲しいかな、現実に即していない、と老君は評した。
『とはいえ、『聖女』は裏のあるような話し方はしていなかったですね』
もしかすると騙されて協会に仕えている可能性も無きにしもあらず、と結論する老君。
そう判断した根拠の1つに、『聖女』アリアンヌも『麻薬』を口にしていたという事実がある。
『彼らにとって『聖女』とはいったい……?』
単なる消耗品なのではないか、とも思えてきた。
『次の段階はそれを調べることですね』
『捜理協会』と『公平党』の幹部との接触が必要だ、と老君と『導師』は考えている。
『明日、できれば別の『聖女』か『導師』と話ができるといいのですが』
そして老君は仁への報告をまとめていくのであった。
* * *
一方、仁サイド。
『施設』の調査をしていたユミィとヴェラから、終わったので報告します、という連絡が来た。
そこで仁は『転移門』で『施設』へと赴いた。護衛はミニ礼子。
『施設』にはランド隊もいるので危険はないと判断したのである。
「わざわざのお越し、恐縮です、ご主人様」
今回はユミィがスポークスパーソンを務めるようだ。
「かなり多くの物がなくなっておりました」
「そうか、残念だ」
「まずは『ギガース改』の魔力核2個がなくなっておりました」
『魔族』(現北方民族)にここを発見された時の最終兵器として2機分、つまり2個置いてあったそうだが、それが2つともなくなっているという。
「医療用ゴーレム2体が行方不明です」
ここは『最後の砦』として避難民を受け入れるために作られたので、当然ながら医療設備もある。
とはいえ、また整備途中であったため、医務室は未整備、医療用ゴーレムも当初の予定の20体には程遠い2体しか配備されなかったようだ。
「戦闘用ゴーレム1体が行方不明、3体が破壊されておりました」
侵入者と戦って破壊されたものと思われる、とヴェラ。
「行方不明の1体は研究用に拉致された可能性があります」
「そうか……。性能はどの程度だ? ああ、お前たちを基準にしてくれるとわかりやすいかな」
「はい、ご主人様。……だいたい私もしくはユミィ10体分です」
「それはなかなか侮れないな」
そんな戦闘用ゴーレムを3体も破壊した相手とはどんな奴なのか、少し気になる仁であった。
が、今は報告が優先である。
「魔法系と技術系の書物が本棚ごとなくなっています。……といっても、まだ3冊しか揃えていなかったのですが」
本棚の方がよほど高価なようだ……。
「本の内容は?」
「医療関係の1つで、精神安定に関するものが1冊、建築関係としてシェルターや基地に関するものが1冊、魔法で薬を調合する入門書が1冊ですね」
「ああ……それは多分『捜理協会』が持ち出したんだろうなあ……」
暗示、麻薬、ピラミッドに似た大聖堂から、仁はそう推測した。
「それに、薬草の栽培室が荒らされていました」
「薬草?」
「はい。『麻薬』に分類される植物もありましたので、悪用されることが心配です」
「どんな植物だ?」
「『ファナ』と呼ばれる植物です。繊維を取る『麻』に似ています」
「それだな……」
「はい?」
仁は、今現在、『捜理協会』という団体が、信者に対し『麻薬』を投与しているらしいと説明した。
「なんということでしょう……『ファナ』は神経系への影響が強いので、常習化しないよう厳重な管理が必要ですのに」
「ちょっと待ってくれ。栽培室って、つい最近まで、『ファナ』が栽培されていたのか? 何百年も?」
「ああ、いえ。そうではありません。『長期保存処理』を施した『種』で保管しておりました」
元々『種』は長期保存のできるものである。
『古代蓮』(大賀ハス)という、2000年以上前のハスの種が芽吹いて育った実績もある。
そういうわけであるから、きちんとした保存環境(種にもよるが、低温で乾燥した状態がよい)で管理したなら、相当長期間保存できるはずである。
「実際、できているわけだしな……それから?」
「はい、『暗示』を発動できる魔導具が3つともなくなっておりました」
洗脳とまではいかないが、特定の行動をするように意識を向けさせる魔法は使いようで恐ろしいものとなりうる。
「あとは?」
「はい、ペンとかクリップとか、日用品が」
「それも『捜理協会』かもしれないなあ」
「以上です。元々、管理している資材・物資はそれほど多くはなかったので」
「あの大金庫は? もっといろいろ入りそうだが」
「はい。『ギガース改』の魔法核だけではなく、もっと多くの武器や兵器を収納する予定でしたが、間に合わなかったのです」
「そうだったのか……」
どこまでも、この『施設』は未完成だった、ということである。
「そうなると、もう一方の侵入者が気になるな」
仁は情報がもっとないかと、ユミィとヴェラに確認した。
「私どもはご説明致しました以上のことは存じませんが、『清掃用ゴーレム』に記録が残っているかもしれません」
「何だって?」
「『清掃用ゴーレム』には『記録装置』が付いております」
「ふうん?」
どうやら、『清掃用ゴーレム』の設計者は、掃除をした部屋の記録を取ることを必要と考えたらしい。
その『清掃用ゴーレム』は、各部屋に通じる専用の通路を持っているとのこと。
出入り口が塞がっていても部屋に出入りできる強みがある。
そして、その部屋が会議や打ち合わせなどで使用中の場合は掃除は後回しにすることになる。
『どうして掃除をしなかったのか』というクレームに対し、『部屋が使用中だった』という実証を示すための機能だったようだが、それが功を奏するわけだ。
そういうわけで、ユミィとヴェラは『清掃用ゴーレム』の映像記録を調査するという。
それが終わるまでの予定時間は1時間。
仁は一旦蓬莱島に戻ることにしたのであった。
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