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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
78 過去からの縁篇
2949/4413

78-16 ララ

 ゴウの自動人形(オートマタ)作りは佳境に入っていた。

 今は、頭部……つまり『顔』作りである。


「メルツェ、顔について、希望はあるかい?」

「顔……ですか? ええと……」


 ここでお母さんそっくりにしてみる? と口にしないだけ、ゴウは自制心があった。


「誰かに似せてみるというのでもいいし……モンタージュしてみるのもいいな」


 モンタージュとは、元々は映画用語で、『複数のカットを組み合わせて用いる技法』のことである。

 それが転じて、いろいろな目や鼻などを切り貼りして目的の顔(大抵は犯人)を作る際にも用いられるようになった。


 ゴウの使い方にはかなり誤用が混じっているが、要は『メルツェのいうとおりに顔をいじってみよう』という意味である。


「そんなこと、できるんですか?」

「できるよ。……ほら、魔導樹脂(マギレジン)


 魔導樹脂(マギレジン)に顔料を混ぜ、肌の色に近いものとして頭部の模型を作り、いよいよ開始だ。髪の毛がないのは致し方ない。


「丸顔、面長、どんな感じ?」

「やや面長、でしょうか」

「うん。……『変形(フォーミング)』……どう?」

「ええと、もう少し面長がいいです」

「わかった。『変形(フォーミング)』」

「あ、そのくらいで」

「うん、後からでもいじれるからね。それじゃあ、次は目だ。……」


 このような感じで、少しずつメルツェ好みの顔に近づけていく。


「……悔しいけど、ゴウってこういうのうまいわよね」

「ルビーナの言うとおりだな。ゴウは論理的、というか、情報を視覚化するのがうまいと言うか……」


 特徴を聞きながら似顔絵を描ける人がいるように、ゴウもまた、そうしたセンスがあるようだ。

 直感で行動するルビーナにはちょっとできない芸当である。

 ちなみに仁はゴウとルビーナの中間くらい。バランスがよいと言えば言えるが、中途半端とも言える。


 それはさておき、顔作りはそろそろ終盤だ。


「口元は?」

「ぼってりした唇は嫌です」

「うん」

「あまり大きいのも嫌です」

「うん。……『変形(フォーミング)』」

「ああ、それくらいで」

「よし」


 そして完成した『顔』。


「…………」

「なんていうか、『平凡』ね」

「おい、ルビーナ!」

「あ、ごめんなさい、メルちゃん」

「……」

「メルちゃん?」

「……あ、ご、ごめんなさい、ルビちゃん、何?」

「ううん、なんでもない。メルちゃんこそ、何を考えていたの?」

「この顔……」

「顔?」

「……母さま、に似ているの」

「お母さんに?」


 それを耳にした仁は、どうやらメルツェは、無意識のうちに母親の面影を追っていたようだな、と考えた。

 それを直截ちょくせつ的な言葉で指摘するのはどうかと考えていると、エルザが口を開いた。


「メルツェさん、子供が親の影を追うのは当たり前のこと。ちっとも恥ずかしいことじゃ、ない」

「エルザ様……」

「あなたがそうと意識せずに望んだ顔、嫌なものじゃあないでしょう?」

「もちろんです!」

「ん、なら、この顔で作ってもらえば、いい」

「はい!」

「……というわけだから、ゴウ、お願い」

「わ、わかりました」


 エルザはそれで引っ込み、仁の隣に腰を下ろした。


「さすがだな」

「ん、これくらい、なら」


 女の子の心理だから、やっぱりエルザのほうがよくわかっているよなあ……と、少しほっとした仁であった。


 髪の色は緑、セミロング。瞳の色も緑とした。

 これで自動人形(オートマタ)の印象は、メルツェの母とはかなりかけ離れたようだ。

 そしてそれでいい、とメルツェは言ったのである。


*   *   *


「ええと……被覆はルビーナに頼んで、いいかな?」

「もちろん。と言うか、ゴウが言い出さなかったら蹴っ飛ばしていたわよ」

「……」


 女性型自動人形(オートマタ)への被覆とは『魔法外皮(マジカルスキン)』で覆うことだ。

 つまり、被せることで一気に人間らしくなる。

 そういうわけで思春期入り口のゴウには少々……いや、かなり気恥ずかしかったのである。


「服は私が、作ってあげる」


 そしてエルザも協力を申し出た。


「助かります」


 こうして、最後の最後はルビーナとエルザの協力もあって、無事に『メルツェ専用自動人形(オートマタ)』は完成したのである。


*   *   *


「よくやったな、ゴウ。ルビーナもサポートお疲れさん。エルザも服をありがとうな」

「ありがとうございます」

「いい勉強になったわ。ジン様、ありがとう」

「うん。チェックをして…………大丈夫だな。起動してもいいぞ」

「その前に、メルツェに名前をつけてもらいましょう」

「わ、私がですか?」

「そうだよ。これはメルツェの自動人形(オートマタ)なんだからね」

「私の……」

「だから、名前をつけてあげて欲しい」

「わかりました」


 言われてメルツェは首を傾げながら一所懸命に考えている。


「ええと、それじゃあ、『ララ』というのはどうでしょう?」

「うん、いいんじゃないか?」

「いい名前ね、メルちゃん」

「いい名前だと思う」


 こうして、名前は『ララ』に決まった。


「よし、それじゃあゴウ、起動してみろ」

「はい。……『起動(スタート)』」

「はい、『製作者様』」

「きゃ」


 メルツェが小さな声を上げた。

 グロ耐性はあっても、自動人形(オートマタ)がいきなり動き出すのは驚くらしい。


「君の名前は『ララ』だ」

「はい、私は『ララ』です」

「ララ、調子はどうかな?」


 『ララ』はセルフチェックを行い、問題なし、と報告した。


「よし。それじゃあ、君の主人はこちらのメルツェだ」

「はい。メルツェ様、これからよろしくお願いいたします」

「こ、こちらこそ」


 こうして、メルツェ専用自動人形(オートマタ)『ララ』が完成したのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210511 修正

(誤)ゴウのセリフ場合、かなり誤用が混じっているが、

(正)ゴウの使い方にはかなり誤用が混じっているが、

(誤)ちっとも恥ずかしことじゃ、ない」

(正)ちっとも恥ずかしいことじゃ、ない」

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― 新着の感想 ―
>「なんていうか、『平凡』ね」 >「おい、ルビーナ!(四字熟語を使え!)」 「『平平凡凡』ね」 うむ。
[一言] どこかで母の面影を追っていたとしても、完全に母親と同じ顔かたちの相手が傍にいるのは何か違うわな 親戚とか身内のような気分にはなれそうだけど
[良い点] ゴウくん最初はそっけないというか、疎ましい感じ出してたのに結構メルツェさんに気を使っていますねぇw 女性に逆らってロクな目に遭うことはないからねぇw ゴウ「言い方ぁ!」否定はしないけど […
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