78-17 雑談、そして……。
メルツェ専属自動人形『ララ』が完成したのは午前11時。
「メルツェ、ララにもいろいろ家事を覚えさせてあげてほしいんだ」
「あ、はい。……ララ、このお屋敷のゴーレムメイドさんたちにいろいろと教わって、覚えてちょうだい」
「はい、メルツェ様」
そこで一同、ゴウの工房から屋敷内へと戻る。
「あら、新しい自動人形ね」
厨房へ行くと、ココナがララを目ざとく見つけた。
「はい。皆さんに手伝ってもらって、メルツェ専用の自動人形を作ったんです」
「ララと申します。奥様、どうぞよろしくお願いいたします」
「まあまあ、可愛らしいこと。こちらこそよろしくね」
そんなココナに、ゴウは説明する。
「それで、家事を覚えてもらおうと思いまして」
「ああ、それで厨房へ来たのね」
「はい」
ここで仁は5色ゴーレムメイドたちを呼んだ。
「みんな、この子はゴウが作った『ララ』。メルツェの専属自動人形だ」
「ララと申します。先輩方、どうぞよろしくお願い申し上げます」
仁が作った5色ゴーレムメイドと、ゴウが作ったララの関係がどうなるのか……と仁は考えてみたが、よくわからなかった。
5色ゴーレムメイドは大伯母くらいになるんじゃないかなあと漠然と思っていたりする。
それはそれとして、ララは5色ゴーレムメイドたちから、まずは料理の手ほどきを受けている。
特にメルツェの好みについて、今現在わかっていることを重点的に、だ。
そうしたコーチを行いながら、昼食の準備がなされていった。
* * *
「へえ、今日はホットドッグか」
「はい。焼きたてのコッペパンに、自家製のソーセージを挟みました」
ただし使われているレタスとガンラン(キャベツ)は買ってきたものだそうだ。
その他、チーズを載せたものや、ケチャップの代わりに自家製のソースを掛けたものもあって、バリエーションが楽しめる。
マスタードも自家製で、これは好みに合わせて自分で塗ることになる。
加えてシトラン(オレンジ)が1個付き、飲み物はペルシカジュース。
ちなみに、千切りガンラン(キャベツ)とソーセージを挟んだホットドッグはメルツェの好物であった。
「俺は挟むのはレタスだとばかり思っていたが、キャベツ……じゃない、ガンランも美味いな」
とは、仁の感想。
* * *
「ああ、美味しかったです」
「ほんとね」
「懐かしい味でした」
ゴウ、ルビーナ、メルツェらは、自動人形製作を通じてかなり仲よくなったように見える。
やはり『ララ』を作ってよかったな、と仁は思ったのである。
「ゴウは考えすぎて馴染むのに時間が掛かる。メルツェは少し環境が激変して戸惑っている。……ルビーナはそんなメルツェとすぐに仲よくなれたが、ゴウとメルツェが仲よくなってくれないと、この先いろいろと面倒だからな」
「ん、ジン兄の言うとおり」
エルザも仁の意見に賛成のようだ。
「でもこれで、まあまあ心配はなくなった」
「だなあ」
そこへダイキとココナ、アマンダがやって来て、
「ジン様、エルザ様。あの3人をうまく仲よくさせてくださいましたね」
と、笑顔で話し掛けてきた。
そこで、仁たち保護者組と、ゴウたち子供組に分かれてしばし雑談を楽しむことになる。
ゴーレムメイドやララ、ピスティがジュースを注ぎ足してくれた。
* * *
「ゴウさんって、すごい魔法技術者なんですね」
「そうよ。ほとんどあたしと同じくらい。……まっ、あたしには半歩負けるけどね!」
「ふふ、ルビちゃんって負けず嫌いなんだ」
「そうよ! あたしはやるからには1番を目指したいの!」
「そんなルビちゃんが羨ましいなあ……」
少し力のない言葉だったので、ゴウは少し気になった。
「どういう意味だい?」
「私、そんな目標なんてないし……やりたいこともないし……」
「なければ、見つければいいんだよ」
「え?」
「これから、いろいろなことをやってみて、いろいろなものを見て、いろいろな所へ行ってみて……自分のやりたいことを見つければいいんだ」
「そう、なの……かな」
ここでルビーナも参加。
「そうよ! このお家にいるんだから、ジン様がいろんなところに連れて行ってくれるわよ! ねえ、ゴウ?」
「……そうだね」
「いっそ、この家の子になっちゃえばいいのよ。そうすれば、あたしも遊びに来やすいし」
「……ルビーナ」
「なによ」
「そんな軽く、人の生き方を決めちゃ駄目だろ」
「あんたは難しく考えすぎだけどね」
* * *
「……ふふ」
ゴウたちの雑談は、特にルビーナの声が大きいので、保護者組に筒抜けである。
まだまだ未熟な3人、だけれども真っ直ぐで裏のない言葉。
それが眩しくもあり、もどかしくもある……と感じている保護者組である。
「実は、イェニーの祖先が、先代の関係者だと聞いたんだ」
先代、つまり『2代目』魔法工学師である。
「それで、近いうちにまた『ハリケーン』でセルロア王国南部へ行きたいと思っているんだよ」
「あら、いいですわね」
「……」
ココナは素直に喜んだが、ダイキは少し難しい顔をした。
「わかっているよ。『公平党』だろう?」
「……はい」
「今、陛下も調査していると思うし、俺も動くから」
それを聞いてダイキも安心する。
「ジン様が乗り出してくださるなら安心ですね」
「ちょっと気になるからな」
ヨヒア子爵にしても無関係ではない。『公平党』が報復の対象としてもおかしくないのだ。
老君にそれとなく指示を出してあるから、近いうちに中間報告が聞けるだろうと考えている仁である。
* * *
セルロア王国南部、コーリン地方。
その南端の町がクゥプである。
そしてその南端のさらに先、海の中に小さな島が2つ、浮かんでいる。
なぜかその島には名前が付いていない。
そしてその島を拠点とする団体があった。
その名は『公平党』という。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210512 修正
(誤)「みんな、この子はゴウが作った『ララ』。メルツェの専属ゴーレムだ」
(正)「みんな、この子はゴウが作った『ララ』。メルツェの専属自動人形だ」




