78-14 専属オートマタ
「ところでメルツェ、相談……というか提案があるんだけど」
夕食後、お茶を飲みながら仁が切り出した。
「あ、はい。なんでしょうか?」
まだ少しだけ緊張した声で返事をするメルツェ。
「いや、そう身構えなくてもいいよ。……この礼子を見てどう思う?」
「可愛らしいと思います」
「ありがとう。……じゃあ、ここにいるゴーレムメイドたちは?」
「可愛いのに仕事ができて凄いなあと思います」
「うん。じゃあ、ゴウが作った『ピスティ』は?」
「ご自分で作れるなんて凄いなあと思います」
「……つまり、ゴーレムや自動人形に対し、嫌悪感はない?」
「はい」
「……作るところに興味あるかな?」
「はい、見てみたいと思います」
「よし」
ここまで質問して、仁はほっとした。
エルザたちとのこれまでの話し合いを経て、先程思いついた手を試せると確信したからだ。
それは、仁、ゴウ、ルビーナの3人、場合によってはエルザにも手伝ってもらって4人で、メルツェ専用の自動人形を作ろうというものだ。
ゴウ、ルビーナ、メルツェが意見を交わし合うことで、3人の絆が深まるだろうと考えたのだった。
「ゴウ、今日これから、ゴウの工房でメルツェ用の専用自動人形を作ろう」
「え、ジン様、あたしは?」
「ルビーナも興味あるか?」
「もちろん!」
よし掛かった、と仁は内心でほくそ笑んだ。
メルツェと遊ぶ方が面白くなってきている節もあったが、やはり根は工作好きなルビーナ。
こうして機会を与えてやれば、参加表明をしてくるだろうと思っていたが、案の定であった。
「……うん、お茶飲み終わった! さあ、行くわよ、ゴウ!」
「ちょっとお待ち」
椅子を蹴るようにして立ち上がったルビーナの頭を抑えた者がいた。祖母アマンダである。
「お、お祖母ちゃん!?」
「まだジン様もゴウ君もメルツェちゃんも、お茶を飲み終わっていないだろう?」
「あ、はい」
「お前はもうちょっと落ち着きを覚えなさい」
「はーい……」
そんなルビーナとアマンダのやり取りを仁は微笑ましく思いながら眺め、お茶を飲み干した。
「さて、ゴウもお茶を飲み終わったかな?」
「はい!」
猫舌の仁が一番飲み終わるのが遅かったのである。
「では、そうだな……工房へ行く前に、メルツェにどんな仕様の自動人形を作ればいいか、聞いてみよう。ゴウ、頼む」
「え、僕が聞くんですか?」
「そうだ。ゴウは、必要な仕様をまとめるのはうまいからな。やってみるんだ」
仁にそう言われては、やらないわけにはいかない。
「わかりました」
「礼子、筆記を頼む」
「はい、お父さま」
議事録的なことを礼子に頼み、ゴウを司会として仕様検討会を行うことになった。仁はオブザーバーだ。
普段の仁はこのようなことはやらないが、もちろんゴウとルビーナに基本を教えるためである。
「ええと、それじゃあ、メルツェさんに質問します。……まずは基本的な体型を決めようと思います」
ゴウが切り出した。
「はい」
「お付きにしたいので、女性型にしようと思うんですが、何かまずいでしょうか?」
「い、いいえ、別に」
「いいぞ、ゴウ。その調子だ」
「あ、はい。ありがとうございます」
あまり最初から考えさせるのは、こうした経験が皆無のメルツェには酷だろうと、基本的な部分は製作者側から提案し、承認して貰う形にしていくとよい。
ゴウはそんなセオリーをきっちりと守っていた。
「体型は、うちの5色ゴーレムメイドくらいでいいでしょうか?」
「はい」
「外見年齢はどうしますか?」
この段階で、初めて考えてもらうことになる。
「ええと……」
「メルちゃん、あまり難しく考えなくてもいいわ。後から修正だってできるんだし」
「そ、そうなの?」
「そうよ。例えば……ええと……ゴウ、なにかいい例ないかしら?」
「え? ……そうだなあ……ああ、外見年齢をレーコさんくらいにしたい、というなら体型もそれに合わせて小さくすることになりますけど、今しているのは正にそういう仕様決定ですから、いくらでも試行錯誤していいんですよ」
(ほう……)
ゴウはこういう話になると、なかなか説明がうまいな、と仁は感心している。
その上で、さらにいろいろと話し合った結果、仕様が決定した。
*女性型。体型は標準。5色ゴーレムメイドに準ずる。具体的な身長は155センチ。
*外見年齢は少女〜成人女性くらい。具体的には17〜8歳。
*目の色は青。髪色は、人間との違いをはっきりさせるために緑色とする。髪型はセミロング。
「これだけ決まれば製作に入れるな」
体重は素材によるし、性能についてはメルツェに聞いても決めかねるだろうということでこちら(製作サイド)で決めることにする。
メンテナンスフリーにするとか、非常時にはメルツェを守るとか、そうした機能も製作サイドの問題とする。
「よし、それじゃあ、明日の朝から製作開始だ」
仁が宣言した。
「え、今からじゃなくて?」
「おいおいルビーナ、今から始めたら完成するのは夜中になるぞ」
「……はーい」
ということで、翌日の朝食が済んだなら、すぐに製作に入ることとなったのである。
* * *
翌12日、朝食後、宣言どおりに仁たちはゴウの工房に集まっていた。
集まったメンバーは仁、エルザ、ゴウ、ルビーナ、メルツェ、礼子、ピスティ。
「ええと、メルツェさんはここに座っていてね」
椅子を差し出すゴウ。
そんなゴウにメルツェは、
「あの、ゴウ様……、私のこと、呼び捨てにしてください」
と頼むのだった。
「え、いいの……かい?」
「はい、ぜひ」
「……わかったよ、メルツェ」
ゴウとメルツェの距離も少し近くなったようだ。
「さあ、始めるぞ。メインの作業はゴウだ。俺とエルザ、ルビーナはサポートを行う」
「えっ」
「何を驚いてる? ここはゴウの工房なんだから、ゴウが主導で作業しなくちゃな。将来を見据えて……な」
「は、はい」
両親の形見でもある自動人形、『アミィ78』をより完成した形で修理したいと思っているゴウなのである。
「頑張ります! サポート、よろしくおねがいします」
「うん」
「ん」
「任せて!」
いよいよ、ゴウの自動人形製作が始まろうとしていた。
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