77-06 準決勝第2戦
『準決勝第2戦はゼッケン3、ゴウ・アガートの『メイストーム』対ゼッケン6、ヴェルナー・ランドルの『マーキュリー』です!』
再び競技場を歓声が包む。
「あなた、ゴウくんの対戦ですよ」
「うむ」
どうやらダイキ・ココナ夫妻はゴウを応援しているようだ。
* * *
「あなた、どちらが有利かしら?」
「難しいところだな。ゴウは新人だ。経験が不足しているだろう。が、その分手の内を晒していないから、相手も対策を立てづらいだろうしな」
「1回戦がそうでしたものね」
「そういうことだ。これを予想するのはジンでも難しいだろうな」
ラインハルトとベルチェは勝敗を予想しようとしているがなかなか難しい、と言い合っている。
* * *
「ジン兄はどう予想するの?」
「実際難しいよ。1回戦はあっという間に勝敗が決まったから、『メイストーム』の性能もよく見られなかったし」
「それでも予想してと言われたら?」
「ゴウが有利かな」
「どうして?」
「ルールを理解し、ルールに沿った機体になっていると感じたからさ」
「どういうところが?」
「相手を撃墜……まあ疑似だけどな……することに特化しているよな」
まず低翼面荷重にして離陸までの時間を大幅に短縮したところを仁は挙げた。
「それから、胴体が細いだろう?」
「あ、命中率が下がる?」
「そうそう。その分主翼は大きいけど、主翼だと『撃墜』『大破』判定は数発喰らわないと出ないだろうしな」
「なるほど、そういうこと」
「俺が見たのはその2つだが、実際にはまだ隠している特性がありそうだと思う」
仁たちは仁たちで、ゴウの機体特性を分析していた。
* * *
その時、スタートの号令が掛かり、2機は滑走を始めた。
ヴェルナーの『マーキュリー』もまた、『メイストーム』と同じデルタ翼機である。
そこで揚力を稼ぐため、一気に機首上げを行い、大仰角での離陸を試みた。
『おおっ、ゼッケン6『マーキュリー』、ゼッケン3『メイストーム』の離陸の早さに対抗しております!』
大仰角でフルパワーを使い、『マーキュリー』は『メイストーム』にほんの僅か遅れただけで離陸した。
これほど僅かな差では、さすがの『メイストーム』といえど、1回戦と同じ戦法は使えない。
離陸後、2機は逆方向へ斜め45度ほどで上昇していく。
『これは……! 『メイストーム』、どんどんと離れていきます! 何を考えているのか! これも作戦なのでしょうか!!』
「お父さん、これってどうなの?」
「うむ、吾にも見当がつかないな。もう少し見守ろう」
「はーい」
『長老』ターレスにも、『メイストーム』の思惑は推測できないようだった。
そして、この状況に我慢できなくなったのは『マーキュリー』が先であった。
『マーキュリー』は北東、『メイストーム』は南西に向けて斜めに上昇していたのだが、いきなり『マーキュリー』はその向きを変えたのだ。
インメルマンターンに近い機動を行って、飛行方向を180度転換。南西方向へと向かう。
この状態だと、追う形になる『マーキュリー』の方が有利かと思われた。
しかし。
『メイストーム』は突如飛行方向を斜め下へと変更したのだった。
そして、下降により上がった速度を利用して『逆宙返り』を行う。
あっという間に『マーキュリー』の腹側に肉薄した。
そのまま撃墜……かと思いきや、『マーキュリー』も黙ってやられるわけではなく、『宙返り』を行い、『メイストーム』の攻撃をかわした。
だが『メイストーム』はそんな『マーキュリー』の機動も読んでいたのか、宙返りで背面になったところへ銃撃。
『マーキュリー』は宙返り中にロールすることでそれをかわした。
「おお、ヴェルナーのゴーレムも反応いいな」
仁が感心した、その後。
『ああっ、失速です! 『マーキュリー』。宙返り中の強引なロールにより、銃撃はかわしたものの、失速!!』
高度が高いため、失速してもエンジンパワーで十分に立て直せるため、そのまま墜落はしない。
だが、立て直しに必要なその数秒があれば、『メイストーム』にとって十分だった。
『失速を立て直す隙をつかれ、『マーキュリー』、大破! 勝者はゼッケン3、ゴウ・アガートの『メイストーム』です!』
両者の健闘を讃え、拍手が贈られる。
そんな拍手と歓声の中、2機は着陸した。
『30分の休憩時間の後、決勝戦を行います!』
場内アナウンスが響き、観客たちはトイレへ行ったり軽食をつまんだりドリンクを飲んだりしている。
仁とエルザもペルシカジュース(オノゴロ島製)で喉を潤した。
「……あともう1つ、気が付いた」
「何、ジン兄?」
「ゴウのゴーレムは、射撃特性に優れている」
「どういうこと?」
「うーん……俺もミリタリー方面は疎いから、うまく説明できないんだが、一言でいうと『予測計算』かな」
「予測……つまり、数秒後の相手の機体がどうしているか、ということ?」
「そうそう。数秒なのか、もっと短いのか、それはわからないけどな」
その数値を算出してくれたのは礼子だった。
「お父さま、『メイストーム』の動きと射撃の時間を観察したところ、およそ2秒先までの挙動予測を行っているといえましょう」
「2秒か。トリガーオンから発射までのタイムラグが1秒あっても、なんとかなるな」
「はい」
この1秒のタイムラグは大きい。照準器に対象が入ったところでトリガーオンしても、1秒経たないと光線は発射されない。
光線自体は0秒フラットで相手に到達するが、その1秒で相手は移動してしまうのだ。
「俺が見たところ、そんな予測機能を持っているのはゴウのゴーレムだけのようだからな」
他は皆、ゴーレム自身の頭脳……つまり制御核で同様の計算を行っている。
だが、高速で飛ぶ機体の操縦という困難な作業をしているため、その計算速度は遅い。
最適条件で行う計算の2倍、3倍の時間が掛かってしまうわけだ。
だが、ゴウのゴーレムは、専用のコプロセッサを持っているらしく、その計算が速い。
そのため、射撃の命中率が高いというわけである。
「うーん、マリッカの弟子というだけあって、なかなかやるなあ」
「ん」
いよいよ次は決勝戦である。
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