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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
77 仁とショウロ皇国篇
2888/4356

77-03 大番狂わせ

 互角のバトルを繰り広げるゼッケン1、シュウの『紫電』とゼッケン2、ルビーナの『ナイルⅤ』。

 幾度となくバトルを繰り返している2人なので、互いの手の内は知り尽くしているということもあるのだろう、どちらも決め手に欠けるまま時が過ぎていく。

 観客は固唾かたずを呑んでバトルを見守り、製作者のシュウとルビーナは拳を固く握りしめ、専用画面を食い入るように見つめていた。


 ちなみにこの『専用画面』とは、参加者用に設けられたもので、操縦者であるゴーレムの目線が映像として見られるものだ。

 仁ならとっくの昔に酔っているであろうが、2人とも慣れているのか、平気な顔で画面を見つめている。


「うーん、いい勝負だ」


 仁はひとりごちる。観客も、手に汗を握って勝負の行く末を見守っている。


(このルールだと、直線的な飛行は不利だな……常に相手の射線から外れるように動いていないと)


 実弾の場合は限りがあるため、ここぞというときでないと撃てないが、光線銃の場合は照準を付けさえすればいつでも撃てる。


(まあ、実機に準ずる……とはいっても、実弾を撃つ戦闘機なんてないし、光線銃も実用化されてはいないんだけどさ)


 そんなバトルの決着が付くのはいつになることか……と仁が思った、その時。

 膠着状態を嫌ったか、ルビーナの『ナイルⅤ』が乾坤一擲けんこんいってきの勝負に出た。

 急激な機首上げを行ったのだ。

 追っていたシュウの『紫電』は不意をつかれ、『ナイルⅤ』を追い越す。

 と、『ナイルⅤ』は機首をいきなり下げ、『紫電』の背後に付いた。


「あ、すごい!」


 エルザも声を上げた。


「あれ、なんて言ったっけな……何だっけ、蛇……そうだ、コブラだ。不完全だが」

「コブラ?」

「うん。……俺のいた世界の蛇の一種だよ」


 コブラが鎌首を持ち上げるように、水平飛行から急激な機首上げを行い、失速寸前に持っていくことで、追随する敵機を先行させ、その背後に付く高等機動である。

 機体のエンジンパワーが不足していると、完全に失速して墜落の憂き目に合う、危険な技でもある。


 そして、『ナイルⅤ』は見事に『紫電』を『撃墜』したのであった。


*   *   *


 満場の拍手に迎えられ、ルビーナの『ナイルⅤ』が着陸した。


「ルビーナ、やられたよ」


 製作者のシュウ・ニドーが、自分の監督席を出てルビーナの席を訪れ、右手を差し出した。


「シュウも手強かったわ。また、いい試合をしようね!」


 そして2人は握手を行う。

 その様子は競技場内にも中継されており、惜しみない拍手が2人に贈られたのだった。


*   *   *


『さあ、第2戦です。ゼッケン3、ゴウ・アガート『メイストーム』対ゼッケン4、グリーナ・クズマ『ゼフィルス』の対決! ゴウ・アガートは今回が初出場です!』


「グリーナ、頑張れ」


 歓声が沸き、観客席のフレディも声援を贈った。


 2機が滑走路を走り……『メイストーム』はふわりと浮き上がった。

 グリーナの『ゼフィルス』はその2秒後に離陸する。

 この2秒は大きかった。

 上空を押さえた『メイストーム』は、速度が乗らない『ゼフィルス』をあっという間に撃墜したのである。


『こ、これは! 何ということでしょうか! ゼッケン4『ゼフィルス』、大破、撃墜! ゼッケン3『メイストーム』の勝利です!』


「ああ、グリーナ……」

「残念だったわね……」


 フレディとエリスは落胆した。そして仁は、


「うーん、作戦勝ちと言えば言えるが、それ以前にあの機体は翼面荷重が小さそうだな……」


 つまり、機体重量の割に主翼面積が大きく、従って滑走距離が短くて済むわけだ。


「それに、初出場ということでゴウの情報が皆無だからな」

「それは、確かに」


 ゴウ側は対戦者の情報から戦術を考えることができたが、グリーナにはそれはできなかったということだ。


「相当軽量化したんだろうな……強度は……『モノコック化』かな?」


 モノコック構造とは、機体と構造材の区別がなく、完成した機体全体が1つの構造物となるような作りをいう。

 軽く丈夫にできるのが特徴だが、その反面、一部の破損や歪みが全体に影響を及ぼしてしまうというデメリットも有る。


 仁の見立てでは、ゴウ・アガートの『メイストーム』はこのモノコック構造を採用し、他の機体より2割から3割もの軽量化に成功しているようだった。


「軽さを目一杯生かした戦術か……やるな」


 これまで仁と面識がなかった子孫にも、優秀なものがいるという証左しょうさである。

 後でゴウと話をしてみたいな、と思った仁であった。


*   *   *


 ゼッケン5、シーリーン・エッシェンバッハの後退翼機『ガーベラ』と、ゼッケン6、ヴェルナー・ランドルのデルタ翼機『マーキュリー』の対戦は『マーキュリー』に軍配が上がった。


 そしてゼッケン7、エルヴィス・アルコットのデルタ翼機『パンサー』とゼッケン8、フローレンス・ファールハイトの後退翼機『フォーゲル』の対戦は『フォーゲル』の勝利となったのである。


 これで4強が出揃った。次は準決勝である。


 その前に昼食を含む休憩時間が取られたので、仁は特別席を離れ、『仁ファミリー』の面々と合流した。


「いやあ、手に汗を握ったよ」


 ラインハルトが、いまだ興奮冷めやらぬといった顔で言った。それはベルチェも同様だったようだ。


「この人ったら、本当に子供みたいで……でも私も、あのバトルには手に汗を握りましたけど」


「まずは昼食にしよう」

「そうだな」


 仁、礼子、エルザ、ラインハルト、ベルチェらは食堂へ向かった。

 ダイキ・ココナ夫妻や『長老』ターレスたちもそれぞれの小グループで食堂へ向かう。

 フレディは1回戦で敗退したグリーナを慰めに行ったようなのでそっとしておく。


「ジンしゃま、皆さん、こっちです」


 食堂ではマリッカが一行を手招きする。

 どうやら個室を取ってくれていたようだ。ありがたく利用させてもらうことにする仁たち。


 結局、仁、礼子、エルザ、ラインハルト、ベルチェ、マリッカの6人で個室を使うことになる。

 食事はもちろん5人分が運ばれてくる。

 サンドイッチ、パスタ、ホットドッグ、ハンバーガー、おにぎりといった軽食の詰め合わせのような献立が、今日の昼食であった。


「しかし、ある意味大番狂わせだったな」


 サンドイッチを口に運びながら仁が言った。


「まったくだ。あのゴウという新人、なかなか……いや、相当やるなあ」


 おにぎりをぱくつくラインハルトも感心していた。


「最近頭角を現した子なんですよ。私の弟子なんです」


 と、マリッカ。


「え? 初めて聞いたぞ」

「はい、あの子がデビューするまで黙っていて欲しい、と言ってたので……しゅみません」

「いや、それはいいけど……なら、あとで少し話をしてみたいな」


 と仁が言うと、


「あの子も喜びます」


 と保証してくれたマリッカであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日3月11日(木)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20210311 修正

(誤)他の機体より2割から3割もも軽量化に成功しているようだった。

(正)他の機体より2割から3割もの軽量化に成功しているようだった。

(誤) ゼッケン3『ゼフィルス』、大破、撃墜! ゼッケン4『メイストーム』の勝利です!』

(正) ゼッケン4『ゼフィルス』、大破、撃墜! ゼッケン3『メイストーム』の勝利です!』

(誤)サンドイッチ、パスタ、ホットドック、ハンバーガー、おにぎり

(正)サンドイッチ、パスタ、ホットドッグ、ハンバーガー、おにぎり

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― 新着の感想 ―
[良い点] 77-03 大番狂わせ 更新ありがとうございます。 [気になる点] マリッカが弟子を?! どことなく仁に似ているとか?! [一言] 次回の更新も、楽しみにしております。
[良い点] >「最近頭角を現した子なんですよ。私の弟子なんです」 今まで面倒見てくれたお婆ちゃん先生が、死んだと思ったら自分達と同年代になって戻ってきて、 しかもスキンシップ具合は相変らず、ともなれば…
[良い点] 大番狂わせとニューカマー来た〜! 帝「(ガタっ)カマですってぇ!」フンスフンス 振「陛下、違うと思います。あと、鼻息荒すぎです。」墓に帰ってくれ [一言] ハ「ルビーナちゃん、事実上決勝戦…
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