76-29 参拝後、オノゴロ島へ
8日朝、ゆっくりした朝食の後、エイラたち3人はロイザート観光へと出掛けていった。
「それじゃあな、ジン。いろいろありがとう」
「ジンさん、お世話になりました」
「ジン殿、いつかまた、『アヴァロン』にも来てくださいよ」
「それじゃあ、気をつけてな」
短い別れの言葉を交わした後、3人は南東区画へと歩いていった。
「さて」
仁は仁で、今日の予定がある。
仁が敬愛したかつての女皇帝、ゲルハルト・ヒルデ・フォン・ルビース・ショウロ、諡『大明慈母皇帝』の廟へ墓参に行くのだ。
祥月命日は4月8日なので、今日1月8日は月命日、となる。
ショウロ皇国……というより、アルスに『月命日』という考え方はないので、これは日本人である仁の考え方となる。
「ジン様、お花の用意もできています」
「ありがとう。それじゃあ、行こうか」
「はい」
皇帝家の墓所があるのはトスモ湖畔の小さな丘陵。
少し離れているので『ハリケーン』で向かう。
広い浜辺に『ハリケーン』は着陸。
前回の墓参時には留守番だったホープだが、今回はホープも含めた全員で向かう。
天然の小さな丘に、3メートルほどの築山でおよそ1キロメートル四方を囲まれた墓所。
一般人は参拝所までだが、関係者である仁一行は霊廟まで入ることができる。
「ようこそ、仁様、礼子様。どうぞお入りください」
墳墓の入口を守っている、過去の仁が作った2体のゴーレム……イメージは『仁王』……が許可を出した。
「ありがとう。……こちらはダイキ・ニドーとココナ・ニドー夫妻で、俺の子孫にあたるんだ」
「承りました」
これで、次からはダイキ・ココナ夫妻だけでも中に通してもらえるだろう。
「それに、これは『ホープ』。覚えておいてくれ」
「はい、仁様」
同時に、ホープの紹介もしておく仁であった。
参道は白い大理石で舗装され、左右に木と花が植えられている。
真冬の今は、ケメリア(椿)の花が道を彩っていた。
やがてたどり着いた白い大理石で作られた献花台に、ココナが花を供える。
そして全員が黙礼し、手を合わせたのだった。
「ようこそお参りくださいました」
目を開けると、過去の仁が作った墓守自動人形の『菊姫』が立っていた。
上下純白の巫女装束に身を包み、柔らかく微笑んでいる。
「菊姫、こちらはお父様の子孫、ダイキ・ニドー様とココナ様のご夫妻です」
礼子が菊姫にダイキ・ココナ夫妻を紹介した。
「菊姫と申します、以後お見知りおきくださいませ」
「こちらこそ、よろしく」
「これは菊姫の弟に当たる『ホープ』だよ」
「そうですか。ホープ、よろしくね」
「はい、こちらこそ」
そんな挨拶を済ませ、仁たちは来た道を戻っていく。
「ジン様、お連れくださってありがとうございました」
「この次からは簡単に中へ入れると思う。俺もそうそう来られないと思うから、命日には代わりにお参りを頼むよ」
「はい、お任せください」
* * *
お参りを済ませた一行は、墓所を出、『ハリケーン』に戻る。
「今日は2人を『オノゴロ島』に案内しようと思うんだ」
「それはそれは! 楽しみですよ!」
「ええ、ええ! 是非、お願い致します!」
2人とも大喜びであった。
屋敷を管理してくれる2人への感謝を込めてのこの招待旅行である。
ショウロ皇国と『オノゴロ島』の時差はおよそ6時間40分。蓬莱島とはマイナス5時間20分。
つまりショウロ皇国が現在午前9時なら、蓬莱島は午後2時20分、『オノゴロ島』は午前2時20分となる。
なのでまずは遊覧飛行をしながら『オノゴロ島』へと向かう。
6時間ほど掛けて飛んでいけば、朝の丁度いい時刻に着けるというわけだ。
もちろん、マリッカには話してあるので、先行して『オノゴロ島』に行ってくれている。
「ああ、いい眺めですねえ」
この日もまずまずの天気なので、下界の眺めはいい。
時折綿雲の間を突っ切りながら『ハリケーン』は西を目指す。
そしてほぼ時差と同じだけの時間を掛け、『オノゴロ島』上空に到着したのである。
「あれが『オノゴロ島』ですか。空から見るのは初めてです」
「楽しみですわ」
『ハリケーン』はホープの操縦で、ゆっくりと降下していく。
いつもは『転移門』で来ているので、仁としても新鮮な体験であった。
* * *
「ようこそ、ジン様。ようこそ、ダイキさん。ようこそ、ココナさん」
「『オノゴロ島』へようこそいらっしゃいました」
「歓迎致します」
『ハリケーン』を降りると、マリッカと、トライハルト・スザンヌのランドル夫妻が出迎えてくれた。
「お久しぶりです、ダイキさん、ココナさん」
「ご無沙汰しております」
「なかなかお伺いできなくて面目ないですよ」
「いえいえ、それはお互い様です」
「さあ、堅苦しい挨拶はそこまでにしよう。みんな『仁ファミリー』の子孫なんだから」
ことさら明るく仁が言い放つと、トライハルト・スザンヌ夫妻とダイキ・ココナ夫妻は互いに顔を見合わせ、微笑みあったのである。
「そうですよ。さあさあ、こちらへ」
「それじゃあ……トライハルト、スザンヌ、2人をよろしく頼むよ」
「はい、お任せください、ジン様」
ダイキ・ココナ夫妻はトライハルト・スザンヌ夫妻に任せることにする仁。
そして仁自身は、この『オノゴロ島』でちょっとやりたいことがあったのである。
「マリッカ、少しいいか?」
「は、はい、ジンしゃま。なんでしょうか?」
「『テスタ』と少し話をしたいんだ」
「わかりました」
『テスタ』は『オノゴロ島』の統括管理魔導頭脳である。
マリッカの配下であるから、質問などはマリッカとともに行う方が効率がいいのだ。
* * *
「『テスタ』、久しぶりですね」
〈マリッカ様、お元気そうで何よりです〉
「今日は、質問があってやってきました」
〈何でしょうか? 私に答えられることでしたら、何なりと〉
「それはジンしゃ……様から聞いてください」
〈わかりました。……ジン殿、何をお知りになりたいのでしょうか?〉
「うん、『始祖』が君たちを作ってから……そうだな、1500年くらい前までのことを聞きたいんだが」
「どうなのでしょう、『テスタ』?」
この質問内容はマリッカも知っている。そして彼女もまた、その答えが気になっているのだ。
〈それは……〉
テスタの答えに仁とマリッカは耳を澄ましたのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210305 修正
(旧)「あれが『オノゴロ島』ですか」
(新)「あれが『オノゴロ島』ですか。空から見るのは初めてです」
(旧)
「はじめまして、ダイキ・ニドーと申します」
「ココナ・ニドーです。以後、よろしくお願いいたします」
「さあ、堅苦しい挨拶はそこまでにしよう。みんな『仁ファミリー』の子孫なんだから」
ことさら明るく仁が言い放つと、緊張を顔に浮かべていたダイキ・ココナ夫妻もほっと小さく息を吐き出した。
「そうですよ。さあさあ、こちらへ」
「そうだな。……トライハルト、スザンヌ、2人をよろしく頼む」
(新)
「お久しぶりです、ダイキさん、ココナさん」
「ご無沙汰しております」
「なかなかお伺いできなくて面目ないですよ」
「いえいえ、それはお互い様です」
「さあ、堅苦しい挨拶はそこまでにしよう。みんな『仁ファミリー』の子孫なんだから」
ことさら明るく仁が言い放つと、トライハルト・スザンヌ夫妻とダイキ・ココナ夫妻は互いに顔を見合わせ、微笑みあったのである。
「そうですよ。さあさあ、こちらへ」
「それじゃあ……トライハルト、スザンヌ、2人をよろしく頼むよ」
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