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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
76 アドリアナ記念館篇(3901年〜3902年)
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76-22 準備と新たな課題

 『記念メダル発行機』のあとはパンフレット作成に取り掛かる仁たち。

 これにはヴィヴィアンも呼んで、助言をもらうことにした。


「ええと、そもそもパンフレットの目的って何かしら?」

「記念館の沿革の説明とか、展示物の紹介かな」


 いずれは書籍も販売したいと考えているが、まずは無料配布のパンフレットからとする。


「A4サイズの紙を3つ折りにする。つまり6ページだな」


 写真……はやめておいて、絵とイラスト、それに文章を半々くらいの割合で印刷する。

 絵はもちろんヴィヴィアンに描いてもらうわけだ。


「『アドリアナ記念館』の全体像、『初代』『賢者(マグス)』『智者(ラビ)』の肖像を頼むよ」

「わかったわ」


 仁はポンプの動作イラストを書くことにした。

 デザイン性とは無関係の図面書きなら仁も得意なのだ。


 そしてエルザには記念館の沿革紹介の文章を頼んだ。


「仁、手伝おうか?」


 と声を掛けてきたのはグース。


「ああ、そうだな。そうしたら、『賢者(マグス)』と『智者(ラビ)』の簡単な紹介文を頼む」

「わかった。任せてくれ」


 そして仁はポンプ動作の説明イラストを描き終えたあと、『初代』の紹介文を書き始めたのである。


*   *   *


 他の『仁ファミリー』メンバーや老君に推敲、チェックしてもらって、パンフレットが完成したのは夕方だった。

 やはりモノづくりとは勝手が違うなと感じた仁たちである。


「3つ折りにして、表が記念館の絵と沿革か」

「裏が記念館の内部案内ね。確かに便利だわ」

「開くと偉人3人の肖像画と説明が1ページ、魔法工学略年表が1ページか」

「その反対側にはポンプの動作説明と……入れ替える展示物の紹介だな。この部分は変えていくんだな?」

「そう。常設展はあまり入れ替えないが、各国から贈られてきた作品は年4回くらい入れ替えていこうと思ってさ」

「そのたびにこの部分の印刷を変えるのか」

「まあそうなるな」


 そのあたりは以降は職員自動人形(オートマタ)である『スタフィ』にやってもらおうかと思っている仁であった。


*   *   *


 そしてお茶の時間。

 クッキーとクゥへもしくはお茶(テエエ)の組み合わせで皆寛いでいる。


「あとはエスカレーターなんだが、主要部品はこっちで作って、残りは現場で……だろうなあ」


 クゥへを飲みながら仁がつぶやくと、皆それがいい、と賛成してくれる。


「僕も手伝おう」

「ああ、ラインハルトが来てくれると助かるよ」

「じゃあ、明日だな」

「うん、頼む」


 そういうことになった。


 そしてそのまま、なんとなく雑談をする『仁ファミリー』の面々。


「今年は『ライトミスリル』について調べてみたいなあと思っているんだよ」


 やや唐突に今年の抱負を述べ始めたサキ。


「ライトミスリルか……」


 別名軽魔銀。軽銀よりも強靭な素材であるが、非常に希少な金属である。

 仁は初期の礼子の骨格に使ったこともある。

 だが、マギ系素材の開発に伴って、この金属の利点がなくなったため、今では使われなくなった不遇の金属とも言える。

 希少だが用途が限られてしまうのでは、工学的な素材としては使いづらいわけだ。


 その正体は……。

 軽銀が、原子番号22のチタンの中性子26個のほとんどが魔力子に置き換わったものであるのに対し、電子・陽子までもが魔粒子(マギエレメンタル)に置き替わったものが魔軽銀だ。


 軽銀ライトシルバーはチタンの『魔力同位元素(マギアイソトープ)』であるが、魔力による強化を施すとそれよりも強靭である。


 魔粒子(マギエレメンタル)とは魔力子(マギトロン)魔陽子(マギプロトン)魔電子(マギエレクトロン)などの総称である。

 それぞれ中性子、陽子、電子と対応するが、まだ詳細な研究はなされていない。


「くふ、中性子が魔力子に置き換わったものが『魔力同位元素(マギアイソトープ)』だろう? なら、陽子や電子もそれぞれ魔陽子(マギプロトン)魔電子(マギエレクトロン)に置き換わっていたら何て言うんだろうね?」

「うーん……『魔力同位元素(マギアイソトープ)』の一種ではあるんだろうが……」

「ジン、それにさ、衛星アルファから得られる例の『ネオ素材』とも違うんだろうね?」

「……いっぺんに言うな」

「くふ、悪い悪い。ちょっと興味深いからさ」

「気持ちはわかるけどな」


 『ネオ素材』とは……資源とするためにヘール軌道まで運んできた惑星ジパートの衛星『アルファ』の鉱石から精錬した金属素材である。

 その全てが自由魔力素(エーテル)との親和性が高くなっている。


「あくまでも『魔原子(マギアトム)』であって『魔力同位元素(マギアイソトープ)』じゃないと思うぞ」

「『魔原子(マギアトム)』かあ……。いったいどんな環境で作られるんだろうねえ」

「それは確かに気になるな」


 『世界』……この場合は『宇宙』を含む閉じられた空間という意味……間を人間が渡る際に、欠損部を『魔原子(マギアトム)』が補う、というような仮説があった。

 アドリアナ・ティエラもそのようなことを知っており、ごくごくまれに、そうやって世界を渡ってくる人間が、シュウキや仁以外にもいた……のかもしれない。

 あくまでも想像であるが。


「ただ、そういう風にして世界を渡った素材が『魔原子(マギアトム)』に置き換えられるということは考えられる」

「くふ、確かにね。……うん? 待てよ? ……そうだ!」

「どうした、サキ?」

「ジン、昔、グースと出会った頃、『賢者(マグス)』が持っていたという腕時計を直したろう?」

「ああ、そんなことあったな」

「あの腕時計の金属を調べれば、今の仮説を検証できるんじゃないか?」

「なるほど! それに、自転車とか本とかあったな!」


 それらの多くが『魔原子(マギアトム)』でできていたなら、世界を渡った素材が『魔原子(マギアトム)』に置き換えられるという説の信憑性が増す。


「近いうちにフソーへ行ってみるか」

「くふ、楽しみだね。グースも一緒に連れて行こう」

「それはもちろんだな」

 

 グースの故郷でもあるフソーへ行くなら、当然連れて行くべきだろう。

 もう、グースのことを知るものもいない、フソーだが……。


 新年早々、いろいろな目標ができた仁たちであった……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  このパンフレットは内三つ折りですね。紙折機も作ったのでしょうか。入れる方向を間違えて、表紙が内側になった、なんてことのないようにしなければ。ゴーレムに折らせるほうが綺麗にできるような気もし…
[一言] 写真……はやめておいて、絵とイラスト、それに文章を半々くらいの割合で印刷する。 絵はもちろんヴィヴィアンに描いてもらうわけだ。 仁「『アドリアナ記念館』の全体像、『初代』『賢者』『智者』の肖…
[一言] パンフレットってそんなに頻繁に内容書き換えないんじゃないかな、 って考えちゃうのは私が貧乏性だからかもしれませんが、 私だったらパンフレットの内容は常設展示までに留めて、 随時変更のある部分…
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