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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
76 アドリアナ記念館篇(3901年〜3902年)
2874/4349

76-21 忙しい5日

 4日の夜は蓬莱島に戻って宴会となった。


「それでは、『アドリアナ記念館』開館を祝して」

「乾杯!」

「乾杯!!」


 ラインハルトの音頭で乾杯が行われた。

 アキツ、ナギ、ナミらは飲食ができないので雰囲気だけとなるが、それでもこの場の喜びを共有してくれているようだ。


「アドリアナ様の偉業を一部とはいえ人々に知っていただけることは喜ばしいことです」

「本当に。そして、アドリアナ様が目指した世の中が少しでも早く来ることを願います」


 ナギとナミも顔をほころばせ、嬉しそうだ。

 またアキツも、


「シュウキ様が人々に認められたことがこの上なく嬉しいです」


 と言って微笑みを浮かべたのであった。


「明日はパンフレットを刷って、エスカレーターを設置して、記念メダル発行機を作って……」


 仁は翌日の予定を考えている。


「ジン兄、程々に、ね」

「まあな。まずは朝イチでアキツやナギ、ナミを送り返さないとな」


 やることは目白押しである。


「でも、暇を持て余すよりはずっといいさ」

「ちゃんと、自己管理もして」

「わかってるよ」

「他のことはともかく、それだけはあまり信用できない」

「う……済まん」


 などと仁とエルザがやり取りしていると、


「はは、ジンも奥方には弱いな」


 とラインハルトが茶々を入れた。


「まあ、それが家庭内円満の秘訣なんだろうけどな」

「……ライ兄、酔ってる?」

「少し……な?」


 人造人間(ホムンクルス)は基本酔わないとはいうものの、疑似的な『酔い』を体感することはできる。

 酒好きのラインハルトは今、そうやってほろ酔い気分を堪能しているようだ。


「あと、ゴーレムも追加するかな」


 職員として『スタフィ』30体がいるが、補助要員もいたほうがよさそうだという考えである。

 一応『エンプロイ』というゴーレムを30体用意してあるのだ。

 力仕事や裏方と考えてはいるが、場合によっては表に出てもらうこともありうる。

 なにしろ『アドリアナ記念館』であり、ゴーレム・自動人形(オートマタ)が多数展示されているのだから。


「ああ、いいんじゃないか?」

「今日見てきた限りでは、お客さんが大勢来た時に『スタフィ』30体だけじゃ対応しきれなくなるかもしれないしな」

「やっぱりそう思うか?」

「うん。あの広さだしね」

「『スタフィ』も増やしたほうがいいかもしれませんわ」

「そっか……」


 仲間からの貴重な意見として、仁は心に留めておくことにした。


*   *   *


 宴のあとは、静かなお茶の時間となる。


「ああ、いい正月だったなあ」

「今年もいい年になるといいな」

「まったくだ」

「で、ジンは明日、アキツやナギ、ナミを送ってからどうするんだ?」

「ショウロ皇国で『大明慈母皇帝たいめいじぼこうてい陛下』の廟にお参りして、それからオノゴロ島だな」

「……で、パンフレットを刷って、エスカレーターを設置して、記念メダル発行機を作るのかい?」

「それは明後日だな」

「……ところで、『大明慈母皇帝たいめいじぼこうてい陛下』の廟にお参りするなら、ロイザートの2人も連れて行ってあげたらどうだろう?」

「ダイキとココナか……それもそうだな。じゃあ、そっちは8日にしよう。オノゴロ島も」

「それがいいよ」

 身体は1つしかないのだから、とラインハルトに言われた仁は、苦笑しながら頷いたのであった。


*   *   *


 明けて5日の朝が来た。

 まず仁はナギとナミを送っていく。

 転移門(ワープゲート)があるから彼らは自力で帰れるが、そこはそれ、『送っていく』という行為に意味があるのだ。

 実際に付き添ったのは仁の他に礼子とエルザ。操縦士としてホープ。

 移動手段は『ハリケーン』に乗り、老君に転送してもらうことから始める。


 まずは『ツェツィ島』に帰る前に『マグス岬』に立ち寄る。

 『マグス岬』上空に『ハリケーン』は転移した。

 ゆっくりと岬そばの草原に着陸。

 仁、礼子、エルザ、アキツ、ナギ、ナミ、そしてホープも下船する。


 仁は岬の突端へと皆を引き連れて歩いていった。

 ツェツィ島を望めるそこには、アドリアナ・バルボラ・ツェツィが建てた石碑がある。


「ここは、『初代』が『シュウキ・ツェツィ』さんをしのんで石碑を建てた場所だよ」

「ここが……!」

「ジン様、お連れくださってありがとうございます」


 アキツもナギもナミも、こうして仁が連れ回さない限り自分の意志では居場所を離れられないので、今回の小旅行は本当に嬉しかったようだ。


 石碑とその周囲を綺麗にしたあと、一行は手を合わせた。


 その後、『ハリケーン』内の転移門(ワープゲート)を使い『ツェツィ島』へ転移する。


 シュウキ・ツェツィとアドリアナ・バルボラ・ツェツィの墓所に手を合わせた仁たち。

 そして仁はナギとナミに別れを告げる。


「それじゃあナギ、ナミ、これからもこの島を頼むぞ」

「はい、ジン様。お任せください」

「お兄さま、お姉さま、またいつかお会いしましょう」

「そうね、礼子ちゃん、ジン様をお願いね」

「それでは、ごきげんよう」


 短いが心のこもった言葉を交わし、仁たちは転移門(ワープゲート)で『ハリケーン』に戻ったのである。


 そして、ホープには悪いが仁、礼子、エルザ、アキツの4人は転移門(ワープゲート)で『しんかい』を経由してアキツの拠点である大サハラ沙漠地下の施設へと移動した。


「アキツ、それじゃあ、またな」

「はい、ジン様。今回はお世話になりまして、ありがとうございました」

「アキツ伯母さま、お元気で」

「礼子ちゃんもね」


 そうして仁たちは再び『しんかい』を経由して蓬莱島へと戻ったのである。


*   *   *


「さて、それじゃあ製作を始めるとしようか」

「ん、手伝う」

「お父さま、お手伝い致します」

「それじゃあ、頼むとするか」


 仁がやりすぎないようにという御目付の意味も兼ね、エルザと礼子も手伝い、まずは『記念メダル発行機』を作っていくのであった。


 これは比較的簡単なので、お昼前に完成。

 1コイン(100トール銀貨1枚)で洋白……銅、ニッケル、亜鉛の合金製のメダルに好きな文字を30文字まで入れることができる。

 それとは別に発行年月日が刻印されている。


「デザインは……『初代』の横顔と……折り鶴?」

「そうさ。これはずっと前から考えていたんだ」


 発行年月日のある方を裏と定義し、そちらは『初代』の横顔である。

 そして表側は折り鶴の図柄で、そこに好きな文字を入れることができる。字体は標準文字体、つまり一般に使われているアルス式アルファベット(と幾つかの記号)。

 上限が30文字なので、フルネームや、好きな言葉も入れられるだろう。


「文字入力はボタン式?」

「そう。アルファベットと幾つかの記号のボタンを選んで押していってもらい、決まったら『決定』ボタンを押すと、画面に文字列が表示される。そこで最終チェックをして、間違いなければ『発行』ボタンを押せばメダルが出てくる」


 昼食後、他の『仁ファミリー』メンバーにも見せたところ、評判は上々であったので仁もほっとしたのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日2月25日(木)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20210225 修正

(旧)

「それは明後日だな」

「それがいいよ」

(新)

「それは明後日だな」

「……ところで、『大明慈母皇帝たいめいじぼこうてい陛下』の廟にお参りするなら、ロイザートの2人も連れて行ってあげたらどうだろう?」

「ダイキとココナか……それもそうだな。じゃあ、そっちは8日にしよう。オノゴロ島も」

「それがいいよ」


(旧)「デザインは……アドリアナの横顔と……折り鶴?」

(新)「デザインは……『初代』の横顔と……折り鶴?」

(旧)発行年月日のある方を裏と定義し、そちらはアドリアナの横顔である。

(新)発行年月日のある方を裏と定義し、そちらは『初代』の横顔である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 暫く振りにアキツ・ナギ・ナミの健在なところを見ることができてほっとしています [気になる点] 1章24話で現在活躍中のゴーレムメイドを仁が新規に作成していますが、参考とした初代作のメイドゴ…
[一言] 転移門のおかげで送り迎えが容易だからこその小旅行ですねえ それぞれの場所を何日も空けることになるんだったら行きはしなかったでしょうし
[一言] >廟にお参り 薄い本をお供え >そこに好きな文字を入れることができる NGワードとかあるのだろうかw >アルファベットと幾つかの記号のボタン そういや純粋に文字入力用のキーボードっ…
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