76-20 皆での見学会
1月4日となった。
時差が5時間20分もあるので、『仁ファミリー』にルージュ、ネージュ、アキツ、ナギ、ナミを加えた一行は蓬莱島を昼過ぎに転移門で出発。
『アドリアナ記念館』地下3階に、隠された転移門があり、そこに出た。
時刻は現地時間午前7時。
職員は今のところ全員が蓬莱島謹製のゴーレムと自動人形なので問題なしだ。
「さあ、まずは1階から行こう」
地下3階から地下2階、地下1階は荷物用エレベーターがあるので、一行はそれで移動した。
地下1階から1階へは階段である。
(7日までになんとかしたいな……)
階段の幅は6メートルと広めに取ってあるので、半分をエスカレーターにすれば、上りと下り双方を設置できそうである。
そんなことを考えながら仁は一行を1階まで案内した。
「ああ、アドリアナ様ですね。懐かしいお姿です」
玄関ホールに設置されたアドリアナの像を見て、ナギとナミは嬉しそうであった。
「こっちには『賢者』の肖像画もあるよ」
特別展示室へと移動すれば、壁に飾られた絵画の中にシュウキ・ツェツィの姿が。
「ああ、よく似てらっしゃいます」
今度はアキツが感激している。
「ヴィヴィアン様がこの絵をお描きになったのでしたね。ありがとうございます」
「そう言われるとくすぐったいわね」
「でも、本当にいい絵よ」
「やめてよ、ステアまで」
「ほんとのことじゃない」
ヴィヴィアンとステアリーナ。友人同士、賑やかなやり取りがなされていた。
* * *
このメンバーなので、詳細な説明はいらないだろうと仁は判断し、ざっと説明したあとは好きなように見てもらうことにした。
* * *
「思い出すわね。『かつて、ジンしゃ……様は、いろいろな飛行機を作りました。私も、この『ノルド連邦』に相応しい飛行機を作りたいんです』だったかしら?」
「し、シオンさん!?」
抜群の記憶力を誇るシオンに、大昔の発言を再現されて慌てるマリッカ。
「うん、俺が作ったものよりも送風範囲が広いんだよな」
「ジ、ジンしゃま!?」
後ろからいきなり声がしたので慌てるマリッカ。
「『浮遊機』とか『浮揚機』って呼ばれているんだよな」
「お恥ずかしいです」
「いやいや、実用化したのはマリッカだからな。誇っていいいぞ」
「あ、ありがとうございましゅ」
真っ赤になって照れるマリッカであった。
* * *
「ああ、父さん、三胴船とスクリューが展示されているよ」
「うむ、誇らしいな……ちょっと照れくさいが」
「だね」
「いやいや、スクリューという推進方式を考えついたのは素晴らしいと思うよ」
「ラインハルト……」
「ポトロックでのゴーレム艇競技が懐かしいな」
「うん……」
* * *
「クラフトクイーン工房……あたしがいなくなったあとも独自にいろいろやってるみたいね」
ビーナはビーナで、自分が立ち上げた工房……名前だけは周囲が付けたのだが……が今も立派な仕事をしてくれているのを見て喜んでいた。
「でも、昔の作品をレプリカといえど展示されるのは恥ずかしいわ……」
「まあ、気持ちはわかるよ」
* * *
「ああ、アドリアナ様の足跡がわかりますね」
「ナミお姉さま、これは大分省略されているんです」
「そのようですね」
「ありのままに知らせるには、まだ時期尚早なのだろうね」
「お父さまはそうお考えのようです、ナギお兄さま」
礼子はナギ・ナミらと楽しげに見て回っている。
そんな礼子を見るのは珍しいと、『仁ファミリー』の皆は思っていた。
* * *
「おとうさま、これはなんですか?」
「うむ、書いてあるだろう、『ポンプ』というものだよ」
「魔導具ではないんですね?」
「そうだ。魔力を使わない道具作りもまた、人々の役に立つものなのだ」
「勉強になります」
『長老』ターレスと共にネージュ、ルージュも見て回っている。
情操教育にもいいと、ターレスは目を細めながら楽しげな2人を見守っているのだった。
* * *
「なんというか……クライン王国の技術は……正直、一歩遅れていますね……」
2階にある各国からの寄贈品を見て、リシア・ファールハイトは少し落胆していた。
「『魔法連盟』の影響を受けていたんだから仕方ないさ」
そう宥めるのは1階を一通り見終わって2階へやって来たグース。
「フランツ王国も似たようなものだよ」
「うう……あまり慰めになってません」
「済まんね、こういうことは苦手なんだ」
「正直ですね、グースさんは」
「まあ、それでサキとも時々ぶつかってるよ」
* * *
「ポンプ……コンロ……懐かしいわねえ」
「だよね、おばあちゃん」
ハンナとマーサは一緒に見て回っている。
時々、祖母と孫の共通の話題になる懐かしい魔導具が出てきたりもするので、話が弾む。
「この頃でしたね、エルザがジン様から指輪を頂いたのは」
「うん、母さま」
エルザとミーネの母子もまた、一緒に見て回っていた。
そして、『黒騎士』と『クリスタルゴーレムセレス』を見て、エゲレア王国で行われたゴーレム園遊会を思い出していたのである。
「思い出すと、顔から火が出そうですよ」
「洗脳されていたんだから、仕方ない。もう気にしないで」
「ありがとう、エルザ」
* * *
ミロウィーナ、ベルチェ、サキ、という珍しい組み合わせの3人が一緒に見て回っている。
「くふ、『魔法工学苦難の歴史』ね。本当に『宗教』が暴走するとどうしようもないね」
「旧レナード王国もまた、宗教が権力をほしいままにしていた時代があったそうだから」
「その当時の人たちも苦労なさったんでしょうね」
「ベルチェの言うとおりだろうね。圧政に苦しんで、地下に潜った人たちもいただろう。なんとか魔法工学を学ぼうと国外に亡命した人もいただろう。でもそうやって努力する人は、いつの時代にもいたんだろうね。そして細々とでも、後世に何らかの形で伝えていったんだろう」
* * *
「これは勉強になるな」
「ええ。ためになりますね、なにしろ『ノルド連邦』の恩人の軌跡ですもの」
「そうだな」
『傀儡』のロードトスと、その許嫁、『傀儡』のリュドミラは2人で見て回っている。
『2期』『仁ファミリー』のメンバーである2人には、『初代』の歩みや『賢者』の足跡、世界の出来事など、皆興味深いものばかり。
奇しくも『博物館デート』のようになっており、周囲の者たちは邪魔しないようそっと距離をおいているのだが、当の本人たちだけがそれに気が付いていないという状況であった。
* * *
全体を見て回りながら、みんなと来てよかった、と思う仁であった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210224 修正
(誤)時差が5位感20分もあるので
(正)時差が5時間20分もあるので
(誤)私も、この『ノルド連邦』に相応ふさわしい飛行機を作りたいんです』
(正)私も、この『ノルド連邦』に相応しい飛行機を作りたいんです』
(誤)「ポトロックでのゴーレム艇鏡技が懐かしいな」
(正)「ポトロックでのゴーレム艇競技が懐かしいな」
(誤)エルザとマーサの母子もまた、一緒に見て回っていた。
(正)エルザとミーネの母子もまた、一緒に見て回っていた。
orz 顔から火が出そうです
(旧)「やめてよ、リーナまで」
(新)「やめてよ、ステアまで」
20210604 修正
(誤)『2次』『仁ファミリー』のメンバーである2人には
(正)『2期』『仁ファミリー』のメンバーである2人には




