表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
76 アドリアナ記念館篇(3901年〜3902年)
2870/4348

76-17 懐かしの……

「……ああ、終わったな」


 招待客たちを乗せた最後尾の馬車が見えなくなると、大きく息をついて、仁は背伸びをした。


「ジン兄、お疲れ様」

「エルザも、ありがとう」

「お父さま、お疲れさまでした」

「礼子、お前もありがとうな」


 互いに労い合う仁たち。

 そして仁は『ハリケーン』で留守番してくれたホープもねぎらった。


「ホープ、留守番ご苦労だった」

「いえ」

「留守番してくれているから安心していられるよ」

「ん、本当に」

「光栄です」

「さて、それじゃあ記念館の残務を片付けて……」

「いえ、お父さま、それは老君に任せて、今日はもうお休みください。エルザさまもお疲れでしょう?」

「まあ、な……」

「ん……」


 仁もエルザも、慌ただしい元日だったため、精神的になんとなく疲れていた。


「じゃあ……後始末は、悪いがゴーレムメイドたちに任せて、蓬莱島に帰るとするか」

「はい、お父さま」


 礼子に勧められ、仁とエルザは一旦蓬莱島に帰ることにした。


「ええと、時間は……」


 蓬莱島とここの時差はおよそ5時間20分。今は午後5時半を回ったところだ。


「蓬莱島は午後11時頃ですね」

「夜中か……」

「では、『ハリケーン』の中でお休みいただき、ちょうど朝の蓬莱島に着くよう調整したらどうでしょうか」

「その手もあるな」


「あるいはその前に、ロイザートの屋敷で入浴なさるのもいいかもしれません」

「ああ、そうだな」


 ロイザートの屋敷は、ダイキ・ニドーとココナの夫妻に預けてある。

 本日、『アドリアナ記念館』の開館式があることは知らせてあるので、仁とエルザが来ていることは知っているはずだ。


「いきなり行って迷惑じゃないかな?」

「子孫の家を先祖が訪ねるわけですし、新年の挨拶だと考えればよろしいのでは?」

「ん、レーコちゃんの言うことも一理ある」

「だなあ。……だとすると、慣習的に『お年賀』を持っていきたいな。何がいいだろう?」


 『お年賀』または『年賀』は、年始の挨拶をするときに持参する品物を指すことが多い。実際には『松の内』(正月7日)までは『年賀』の時期とされているようだ。

 元日は避ける、ということも言われているようだが、年始の挨拶を元日に行う場合は問題ないだろう。


「ジン兄、蓬莱島特産のペルシカは?」

「ああ、いいな。老君に頼んで送ってもらおう。礼子、連絡してくれ」

「はい、わかりました」


 老君への連絡は『仲間の腕輪』でもできるのだが、礼子の場合は内蔵『魔素通信機(マナカム)』が使えるので、声に出すことなく、また一瞬で通信できるのだ。

 さらに、こういう時に頼ってやると礼子が喜ぶので、仁は大抵の場合、老君への連絡は礼子に頼んでいる。


 程なく、化粧箱に収められたペルシカ15個が『ハリケーン』内に転送されてきた。


「これならいいな」


 仁は『ハリケーン』を発進させる。屋敷までは数分の飛行だ。


 屋上に『ハリケーン』を駐機すれば、ダイキ・ココナ夫妻が出迎えてくれた。


「ジン様、エルザ様、あけましておめでとうございます」

「『アドリアナ記念館』開館、まことにおめでとうございます」

「あけましておめでとう。ありがとう」

「あけましておめでとうございます。急な訪問、申しわけなく、思っております」


 『アドリアナ記念館』開館の祝いの言葉に仁が礼を言い、エルザは突然の訪問をわびた。


「いえいえ、開館式をなさっていたのは承知しております。終わったらこちらへいらしてくださるのではと妻共々期待しておりましたよ」


 社交辞令でもそう言ってもらえて、仁とエルザはほっとしたのだった。


*   *   *


 屋内に招き入れられてから、仁は礼子に持たせていた『お年賀』をダイキ・ココナ夫妻に手渡した。


「気持ちばかりのものだけれど、蓬莱島の名産品だ」

「これはこれは、ありがとうございます」


 夫妻は仁からの『お年賀』をありがたく受け取ったのである。


「今夜はゆっくりなさっていってください」

「ジン様、エルザ様のお部屋はそのままになっていますから」

「ええと……」


 そうまで言われては、風呂にだけ入って帰るわけにも行かない。


「……泊まろうか」

「ん」


 ダイキ・ココナ夫妻にわれ、仁とエルザは泊まっていくことになったのである。


*   *   *


「ああ、ここの風呂も久しぶりだな」


 仁は1人、のんびりと湯船に浸かり、手足を伸ばしていた。

 400年が経っているが、浴槽も浴場も昔のままである。

 仁が自ら『強靱化(タフン)』や『安定化(スタビライズ)』を掛けたのだから。


「……『強靱化(タフン)』『安定化(スタビライズ)』……」


 風呂からあがる際、仁は、想いを込めてもう一度工学魔法を掛けたのだった。


 これもまた昔のままの自室へ行くと、エルザが髪をかしていた。


「いいお湯だったな」

「ん」


 備え付けのドレッサーも昔のまま。

 部屋にはちり1つ落ちておらず、ダイキ・ココナ夫妻の気遣いが感じられる。


 そして夕食はショウロ皇国風のものが並んでいた。

 懐かしさもあって、エルザは喜んで食べている。

 ショウロ皇国の家で、ショウロ皇国の食材を使ったショウロ皇国の料理、というものはやはり嬉しいものなのだろう。


(蓬莱島で食べるのとはどこか、何かが違うんだろうな……)


 エルザの様子を見た仁はそう感じたのであった。


 夕食を食べながら、いろいろな話を交わす。


「今の陛下も民を大事にしてくれているんだな」

「ええ。『大明慈母皇帝』のお心は代々の皇帝陛下に受け継がれております」

「そうか……」


 目を閉じると、在りし日の女皇帝の姿が思い出される仁であった。


「それでも、『魔法連盟』の魔手がロイザートにも伸びてきましたしね」

「でも、それも今は過去のことになりました」

「これからはもっといい時代が来るよ、きっと」

「ん。今の皇帝陛下は名君だから」


 ダイキ・ココナ夫妻は仁の話に熱心に耳を傾けていた。

 仁も、当たり障りのない範囲で世界情勢を説明している。


「そうしますと、今年は『アヴァロン』でもいろいろと発表がありそうですか」

「うん。詳細は言えないけれどな」

「ジン様が播いた種が芽を出し始めた、ということですね」

「そうなるのかな……」

「そうですとも。『魔法連盟』の暴虐の嵐が過ぎ去ったあと、こうしてまた進歩への芽吹きが始まるということですね」

「そうだといいなあ」

「きっと、そうなりますよ」


 和やかな夕餉ゆうげ団欒だんらんであった。


*   *   *


 夕食後も引き続き、お茶を飲みながらの歓談である。


「そうしますと、7日から『アドリアナ記念館』が一般開放されるのですね」

「そういうことになるな」

「絶対見に行きます!」

「ありがとう」


 ここで仁は『招待券』というものを作ればよかったと気が付いた。

 ダイキ・ココナ夫妻だけではなく、今の世界に生きる知り合いに贈るためにも。


(蓬莱島に戻ったら作って配るとしようかな)


 『記念メダル発行機』と共に。


 そんなこんなで、ショウロ皇国の夜は更けていったのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日2月21日(日)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20210221 修正

(誤)仁もエルザも、慌ただしい元旦だったため、精神的になんとなく疲れていた。

(正)仁もエルザも、慌ただしい元日だったため、精神的になんとなく疲れていた。


(旧)

「ええと、時間は……」

(新)

「ええと、時間は……」


 蓬莱島とここの時差はおよそ5時間20分。今は午後5時半を回ったところだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  「ロイザートの屋敷は、ダイキ・ニドーとココナの夫妻に預けてある。」とあるのですが、ロイザードの屋敷はダイキ・ココナ夫妻のもので「預けてある」とは言えないのでは。皇帝より『三代目』に与える話…
[良い点] >社交辞令 どころか、仁達のスケジュールを把握して、到着を今か今かと待っていたはずですから、 立ち寄らない方が寧ろ不義理という物で。 [一言] >(蓬莱島で食べるのとはどこか、何かが違うん…
[一言] >「子孫の家を先祖が訪ねるわけですし、新年の挨拶だと考えればよろしいのでは?」 リアルお盆ですね分かります。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ