75-33 閑話125 競技の様子
3901年12月2日、ダーラト公国での運河建設が始まった頃。
少しだけ手が空いた仁に、老君が話し掛けた。
『御主人様、『オノゴロ島』の『テスタ』から貰いました『競技の映像』の編集を行いましたのでご覧になりますか?』
「お、そりゃいいな。ぜひ見せてもらおう」
『承りました』
そこで老君は研究所の食堂で上映会を行うことにした。
場所柄、お茶を飲みながら、である。コーラとポップコーンではなかった。
ちょうど今、『メメンタス』の廃棄自動人形をレストアした『仁ファミリー』は、まだ全員蓬莱島に残っていた。『長老』ターレスも含めて。
それどころか、ターレスの養女、『ネージュ』と『ルージュ』も一緒だったのである。
* * *
『それでは上映会を始めます』
「楽しみだな」
「わくわくするわね」
大型魔導投影窓が明るくなり、『オノゴロ島』の様子が映し出された……。
* * *
《それでは、これより第4回、オノゴロ島航空機競技会を開催します!》
アナウンスの声が響き、飛行場が映し出された。
エントリー順に滑走路を使い、次々に飛び立っていく。総数33機。
先頭は競技委員会が用意した飛行機らしい。ペースメーカーのようなものだ。
それの後について、それこそカモの行列のように一糸乱れぬ飛行を行っていた。
《まずは、曲技飛行によるふるい分けです!》
ペースメーカー機を含めた33機は一列縦隊で飛行を続ける。
不意に、先頭のペースメーカーが宙返りを行った。全機、それに続いて機首を上げる。
またもや見事な連携機動が見られた。
そして少しずつ機動の難度は上がっていくようだ。
エルロンロール、垂直上昇、背面飛行、そして逆宙返りまでは全機付いてきたのだが、その次の3連続インメルマンターンで2機が脱落した。
3回目の宙返り途中に失速したのだ。
さらに脱落機は続く。
ナイフエッジ(90度バンクした姿勢で行う水平飛行)で1機が失速。
最後に縦8の字で1機が脱落し、残機が28機となった時点でふるい落としの曲技飛行は終了となった。
* * *
そして場面が変わった。
《これより予選を行います。7機ずつ、4組で速度競技を行い、上位2機が本戦に進めます》
そして速度競技の様子はダイジェストに継ぐダイジェストで、ほぼ結果だけの表示となった。
結果:
1組 1位 ルビーナ・ギャレット 2位 シーリーン・エッシェンバッハ
2組 1位 エルヴィス・アルコット 2位 フローレンス・ファールハイト
3組 1位 シュウ・ニドー 2位 ユージン・フォウル
4組 1位 エディス・クズマ 2位 ヴェルナー・ランドル
ほぼ全員が、第1回飛行機競技で覇を競った顔ぶれであった。
* * *
そして場面は本戦となる。
《これより本戦を開始します。トーナメント形式で、1対1の空中戦です》
ここで、特殊塗料の説明が入ったらしいが、それはカットされ、第1戦が映し出される。
第1戦はシーリーン対フローレンスであった。どちらも後退翼機である。
……あっさりとシーリーンがフローレンスを『撃墜』。
ちなみに『撃墜』判定は機関部に4発被弾するか、キャノピーに2発被弾したとき。
その他には、被弾した箇所と回数による判定で、『撃墜』『大破』『中破』『小破』『軽微』と段階がある。
『撃墜』と『大破』は即競技終了である。
撃墜と大破の違いは、操縦者が生き残れそうか、そうではないか、の違いとなる。
第2戦はユージンとエディス。今度はどちらもデルタ翼機だ。
2回の宙返りでユージン機は背後に付いたエディス機をやり過ごし、『大破』判定を出して勝利。
第3戦はシュウとエルヴィス。シュウは後退翼機『雷光』、エルヴィスはデルタ翼機であった。
開始直後、2発被弾し『小破』判定を受けたシュウ機だったが、その後インメルマン・ターンを駆使して背後を取り、エルヴィス機を『撃墜』したのであった。
第4戦はルビーナとヴェルナー。ルビーナはデルタ翼機『ナイルⅣ』、ヴェルナーもデルタ翼機だった。
開始直後からルビーナ機は機動性を生かしてヴェルナー機を翻弄、『大破』判定で勝利した。
ここまでで4強が残ったわけである。
* * *
《さあ、次なるは準決勝、4強の戦いぶりに注目ですっ!》
またも編集された画像となり、まずはルビーナの『ナイルⅣ』がユージンのデルタ翼機『パンサー』と熾烈な空中戦を行っている場面だった。
「おお、2機ともなかなかやるなあ」
かなりの高速戦闘である。
それも、宙返り系を双方繰り返しての攻守入れ替わりはなかなか見応えがあった。
しかし、最終的には、ルビーナの『ナイルⅣ』が突然急降下を行い、それを追ったユージンの『パンサー』が付いていけなくなり、いつの間にか背後を取られて『大破』判定となっていた。
「うーん、あれって、急降下の速度を目一杯効果的に利用したわけだな」
「ユージンの機は、『ナイルⅣ』を一瞬見失ったんじゃないかな?」
「急降下性能も優秀だな。音速にも耐えるんじゃないか?」
などと評する『仁ファミリー』の面々だった。
続いてはシュウの『雷光』とシーリーンの『アザミ』。どちらも後退翼機である。
映像は編集されており、空中戦の途中から始まった。
『シザーズ』と呼ばれる機動で、2機の飛行機が並行して飛行しながら蛇行を行い、2機の軌跡が交錯している状態。
「おお、ほぼ互角か」
「このままだと接触事故を起こしかねないんじゃ?」
「ゴーレムの操縦だから、滅多なことはないだろうが……」
そして、そのままでは埒が明かないと、先にしびれを切らしたのはシーリーンの『アザミ』であった。
機首を引き起こし、巨大な宙返りを行う。
それにより、一瞬遅れた『雷光』は完全に背後を取られる。
が。
「お! 逆宙か」
『雷光』は機首を下げると逆宙返りを行い、『アザミ』の背後を取ろうとした。
が、『アザミ』はその動きに対応し、逆宙で追随。
設計の差か、僅かに『雷光』の方が逆宙返りの半径が小さく、かつ速度が高かったこと、そして偶然にも助けられ、無防備な『アザミ』の腹側に光線を当てることに成功。
『大破』判定でシュウの『雷光』が勝利したのであった。
* * *
『そして、前回御主人様がご覧になった決勝戦へと続きます』
「なるほどな。面白かったよ」
「まだまだ伸びしろがありそうだな」
「将来が楽しみですね」
「参加してみたくなっちゃいました」
「会場の観客にも、老君さんの映像のようなものを見せてあげられればいいのに」
『仁ファミリー』の面々は思い思いの感想を述べた。
『オノゴロ島』の若き技術者たちの未来は明るい。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日2月4日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
202010204 修正
(誤)《それは、これより第4回、オノゴロ島航空機競技会を開催します!》
(正)《それでは、これより第4回、オノゴロ島航空機競技会を開催します!》
(誤)最後に縦8の字で1機が脱落し
(正)最後に縦8の字で1機が脱落し
(誤)ペースメーカー機を含めた34機は一列縦隊で飛行を続ける。
(正)ペースメーカー機を含めた33機は一列縦隊で飛行を続ける。
20210603 修正
(誤)それの跡をついて、それこそカモの行列のように一糸乱れぬ飛行を行っていた。
(正)それの後について、それこそカモの行列のように一糸乱れぬ飛行を行っていた。




