75-28 曲技部隊
「できたな」
午前中に、3機の飛行機が完成した。
それぞれ、礼子、ソレイユ、ルーナの専用機である。
色は、白をベースとし、そこに赤と青のストライプでアクセントをいれたトリコロールカラーだ。
さらに、礼子機は機首と垂直尾翼を黒で塗っている。
ソレイユ機は同じ部分を金色、ルーナ機は銀色にしている。
そして、いよいよテスト飛行だ。
研究所裏手の飛行場から発進することになる。
「緊急脱出用の転移門も付けたが、無理はするなよ」
「はい、お父さま」
「はい、お父さま」
「はい、お父さま」
3人とも揃って同じ返事をし、機体に乗り込み、風防を閉じた。
「よし、行け!」
「はい! 機関起動します! 出力順調、設定オールグリーン」
「離陸します!」
推進機が起動され、異常がないことを確認すると、まず礼子、ソレイユ、ルーナの順に離陸していく。
「うん、離陸姿勢は安定しているな」
機影を見上げながら、仁は満足そうに呟いた。
3機はあっという間に視界から消えてしまう。
「あとは研究所で追おう」
仁は研究所の司令室へと向かった。
ここの大型魔導投影窓に、老君から『覗き見望遠鏡』で撮影した映像を表示してもらうわけだ。
もちろん『魔素通信機』で通話することもできる。
「礼子、ソレイユ、ルーナ、調子はどうだ?」
との問いかけには、3人から『良好です』との答えが返ってきた。
『機体の操縦性、安定性は上々。これより運動性テストに入ります』
礼子から報告がなされ、3機はさらに加速し、斜め45度に上昇を開始した。
『これより曲技飛行を開始します』
まずは定番の宙返りから。
直径500メートルもあるような大きなループから始め、次第に径を小さくしていく。
最終的には直径100メートルまで、5連続宙返りが行われた。
速度の低下もほとんど見られず、調子は上々である。
『機関の出力にはまだまだ余裕があります。機体の剛性も十分。失速もほとんどありません』
「そのようだな」
続いては水平飛行からのエルロンロール、つまり水平飛行での錐揉み飛行だ。
人間なら目が回りかねないほどの回転数も、礼子たちは平気でこなした。
そのままインメルマンターン(半宙返りをしつつ背面状態から正常姿勢に戻す)とスプリットS(インメルマンターンの逆)を連続して行う3機。
ここまで3機は、糸で繋がっているようにきれいな同調した動きを見せている。
水平飛行に移り、ナイフエッジ(機体を90度傾けた(主翼を垂直に立てた)状態での水平飛行)。
これも安定した動きで難なくクリア。
現実に存在する航空機のデザインを参考にした機体は、空気力学的にも優秀だという証明である。
それからも、3機は高難易な機動を幾つも行い、全て見事にこなしてみせた。
『最後に『力場発生器』での試験を行います』
「よし、注意しろよ」
『はい』
礼子、ソレイユ、ルーナに備え付けられている力場発生器をそれぞれの機体に同調させて行う飛行だ。
空気力学とは無縁のそれは、3次元におけるどんな動きでも可能とする。
「おお、まずまずの動きだな」
揚力を生み出すための主翼はこの場合、空気抵抗となってしまうが、うまく機体の向きを進行方向に合わせることができているので、見ていて不自然さはない。
数十Gは掛かりそうな、超急旋回も楽々行ってしまう。
垂直状態、水平状態での停止も思いのまま。
そして。
『これより最高速度をチェックします。『風除けの結界』起動』
「気をつけていけ」
『はい、お父さま』
そして3機は『風除けの結界』の限界値であるマッハ3までをこなしたのだった。
* * *
想定した以上の性能に満足した仁は、着陸した3機を出迎え、礼子、ソレイユ、ルーナらを労った。
「よくやってくれたな、礼子、ソレイユ、ルーナ」
「はい、お父さま」
仁が代わる代わる頭を撫でてやると、3人は嬉しそうに微笑んだ。
そして仁は機体のチェックを行う。
「異常はなさそうだな」
「はい、お父さま。特に異常はありませんでした」
「そうか。気が付いたことは?」
「そうですね、方向舵の効きが若干悪いかと」
「そうか。それじゃあ、2重ラダーにして、切れ角を増やすか……」
大きさを変更するとせっかく確認した空気力学上のバランスが崩れる可能性があるので、切れ角をメインに改良することにした仁である。
この2重ラダーというのは、通常のラダーが1段しか曲がらないことに対し、2段階に曲げることで、空気の剥離を防ぎつつ舵角を増やすことができ、より効果を上げることができる。
これは特殊な船の舵にも使われている。
仁はその改造を15分で完了した。
「よし、これでもう一度頼む」
「はい、お父さま。お任せください」
* * *
改良した方向舵でもう一度飛んでもらったが、空力上の変化はなかった。
もちろん、方向舵の効きは申し分ない、という評価となったのである。
着陸し、整列した3人に、仁は微笑みながら告げる。
「よし、礼子、ソレイユ、ルーナ。お前たち3人の曲技部隊を……『ホワイト・コントレイル(飛行機雲)』と呼ぼう」
「命名、ありがとうございます。……お父さま、機体にも名前を付けてくださいませんか?」
「それもそうだな。……うーん…………『ルフト』というのはどうだろう」
「ルフト1、2、3というわけですね」
礼子の乗機がルフト1、ソレイユのものがルフト2、ルーナのものがルフト3となる。
こうして、礼子たち3人の乗機が完成し、チームも結成したのであった。
* * *
「あーあ、楽しかった」
「ん、それはよかった」
「ありがとうな。いい息抜きになったよ」
この先もまだ結構いろいろな行事が目白押しなのである。
それでも、蓬莱島と『仁ファミリー』のバックアップがあれば、こなしていけるだろうと思う仁であった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20210130 修正
(誤)それからも、3機は高難易な起動を幾つも行い、全て見事にこなしてみせた。
(正)それからも、3機は高難易な機動を幾つも行い、全て見事にこなしてみせた。




