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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
75 後始末篇
2847/4353

75-27 仁の飛行機熱

『両機が破損しましたので、決勝戦はこれで終了といたします。優勝者、なし!』


 アナウンスに、どよめきが会場に広がった。

 これは致し方ないだろう、と仁は思った。

 今回の事故は、人間が操縦していたら大惨事になっていた可能性もあるのだから。

 そして、操縦系統のダメージも大きいため、応急修理で決勝戦再開……というわけにもいかないのだろう。

 何より、礼子が救助しなかったら大破していた可能性もある。

 よって、今回の『優勝者なし』になるわけだ。


 その代わり、次回も同じ規定で競技が行われることとなったようだ。


「次に頑張ればいいさ」

「そうですね、ジンしゃま」


*   *   *


「ジン様、マリッカ様、お名残惜しいですが、お気をつけて」

「お出でいただいてありがとうございました」


 世話役のトライハルト・スザンヌ夫妻に見送られ、仁と礼子、マリッカは転移門(ワープゲート)室に入った。


「それじゃあ、また」

「さようなら」


 名残惜しいが、他にもやることがあるので、後ろ髪を引かれる思いではあったが、礼子、マリッカと共に『オノゴロ島』をあとにする仁であった。


*   *   *


 『オノゴロ島』と蓬莱島の時差は半日。

 蓬莱島の暦……蓬莱島を経度0度とする……では、同日の午後8時。

 時差が厄介だと言いながら、仁は調整をしている。

 午前0時まで起きていて、それから6時間ほど睡眠をとれば、時差ボケも起きないだろうと考えたのだ。


「……礼子専用機というのも、いいかもしれない……」


 時間潰しに食堂でお茶を飲んでいた仁は、そんなことを言いだした。


「ジン兄、それ、何?」


 エルザも付き合ってお茶を飲んでいたので、仁の呟きに気が付いたのだ。


「ああ、実は……」


 仁は、『オノゴロ島』で見てきた飛行機競技のことをエルザに説明した。

 ちなみに、今蓬莱島にいるのは仁、エルザ、マリッカだけだ。


「……というわけでさ」

「参加してみたくなった、と」

「……うん」

「で、自分なりに作ってみよう、と」

「……うん」

「いいんじゃない?」

「……え?」

「ジン兄はここのところずっと忙しかったから、自分のやりたいこともできずにいたし」


 エルザはエルザなりに、仁のことを気遣っていた。


「そっか、それじゃあ今日は飛行機作りだ」

「ん、手伝う」

「わ、私も見学させていただきたいでしゅ!」


 そういうことになった。

 時刻は蓬莱島時間で午後9時半、構想をまとめるにはまだ十分時間がある。

 エルザが手伝うと言い出したのは、仁が一晩中製作に没頭しないように注意するためかもしれない……。


*   *   *


「スペックは今回『オノゴロ島』での競技用のものとする」


 全長全幅7メートル以上8メートル以内、全高指定なし。

 推進機は『魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン)』2基以内。

 操縦はゴーレムということなので、礼子、ソレイユ、ルーナを想定する。


 付加装置として『物理障壁(ソリッドバリア)』『魔法障壁(マジックバリア)』『風除けの結界』を備えるが、取り外し式にしておき、競技によっては搭載しない。

 武装も同じ。

 『光束(レーザー)砲』『麻痺銃(パラライザー)』『魔力砲(マギカノン)』各1門。これも着脱式。

 『力の長杖(フォースロッド)』『電磁誘導放射器インダクションラジエータ』搭載。これまた着脱式。

 『魔力妨害機(マギジャマー)』『魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)』『魔法無効器(マジックキャンセラー)』もオプションとして搭載可。

 緊急脱出用の『転移門(ワープゲート)』は常時搭載。

 最後に『力場発生器フォースジェネレーター』を……。


「どうしようかなあ……」


 悩む仁。

 『力場発生器フォースジェネレーター』まで搭載すると、完全に競技用の規定から逸脱するからである。


「……よし」


 考えに考えた末、機体に『力場発生器フォースジェネレーター』を搭載するのはやめ、代わりに搭乗者……礼子、ソレイユ、ルーナに搭載されているものを利用することにした。

 そのままでは搭乗者と機体をしっかりと固定する必要があるが、機体の重心部に『アンカー』となる『中継極』を設置し、そこを中心に『力場』が発生するように調整することにした。

 これにより、結果として『力場発生器フォースジェネレーター』を機体に載せた時同様の性能を得ることができる。


 そこまで詰めた仁は、時刻が午前0時近くになり、エルザやマリッカ、礼子らの目が険しくなってきたのを感じて、素直に寝ることにしたのであった。


*   *   *


「ああ、よく寝た」


 自分の家、自分の寝床でぐっすりと寝た仁は、すっきりとした目覚めを迎えた。


「おはよう、ジン兄」

「おはよう、エルザ」


 ご飯、味噌汁、海苔、お新香、卵焼き、焼き鮭といった朝食を摂った仁たちは、昨夜の続きを行う。


「おはようございます、ジンしゃま」

「おはよう、マリッカ」


 昨夜のメンバーが全員揃ったところで、仁は飛行機の外観図を描いてみせることにした。


「こんな感じだな」


 『魔導投影窓(マジックスクリーン)』に入力機能を持たせた、液晶タブレットのようなイメージで使える製図用のモニタだ。


「はあ……洗練されたデザインですね」

「ん。ジン兄、凄い」

「いや、そう言われると恥ずかしいんだが、これは俺の元いた世界にあった飛行機を参考にしたんだ」


 デザインの苦手な仁がしばしば使う手法である。


「それでも、このデザインを作り上げられるということが凄い」

「そうですよねえ」

「さすがお父さまです」


 仁が描いたのは、Mー346と呼ばれるジェット練習機や、Fー15(イーグル)に似ていた。

 全長が7.5メートルと小型なので風防の占める割合が大きいのはMー346ぽく、垂直尾翼が2枚あるところはFー15っぽい。


「まあ、ずるいとは思うよ。俺はこっちの技術に加えて、地球の技術やデザインも知っているんだから」

「ん、でも、それを含めての『魔法工学師マギクラフト・マイスター』だから」

「そうですよ、ジン様」

「そう言ってもらえると少しは気が楽になるよ」


 仁はそう言いながら、各寸法を詰めていった。


「よし、こんなもんだな」


 画面に描いた図面は、ゴーレムプロッターで出力することができる。

 また、魔結晶(マギクリスタル)に保存しておくことも。


「礼子、材料を用意するぞ」

「はい」


 基本的な構造材は64軽銀。要所要所はアダマンタイトで補強する。

 風防はコランダムと地底蜘蛛樹脂(GSP)の積層材だ。

 推進機の魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン)は仁渾身の作だ。それを2基搭載。


 その他の部品も、可能な限り軽量化し、かつ強度も保てるようにする。


 そして組み立ては仁、礼子、職人(スミス)1、2、3、それに搭乗者となるソレイユとルーナで行っていったのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日1月29日(金)は10:00に

 蓬莱島の工作箱  https://ncode.syosetu.com/n0493fy/

 も更新しております。

 ご覧いただけましたら幸いです。


 20210129 修正

(誤)推進機は『魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン)』2機以内。

(正)推進機は『魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン)』2基以内。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 75-27 仁の飛行機熱 更新ありがとうございます。 [気になる点] 仁にしては自重しているとか?! [一言] 次回の更新も、楽しみにしております。
[良い点] 今まで足し算で作ってきた仁が、引き算で作る事を覚えるとは。 もっとも、それもレギュレーションという物があるからではありますが。 エ「……なのに、結局全部乗せちゃうんだ……」 鞠「……ジンし…
[一言] それイタリアの練習機でしたっけ?姉妹機がロシアにあるって変わりダネ 今回は地球っぽい機体で攻めてきましたね ジ「練習機とかは、機銃も外装ポッド式が多いんだよね」 礼「競技だと、武装は追加パ…
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