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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
75 後始末篇
2845/4356

75-25 助言

 オノゴロ島に1泊した翌朝。


「お父さま、今日のご予定は?」


 口をすすぎ顔を洗い終えた仁に礼子が尋ねた。


「うーん、そうだなあ……約束した『魔導監視眼(マジックアイ)』を付けた小型機を作って、それから決勝戦を見たら蓬莱島に帰るつもりだ」

「わかりました」


 その前に仁は、ルビーナとシュウの機体を間近で見せてもらうつもりであった。

 が、まずは朝食である。

 今朝の献立は和風。

 お粥、梅干し、昆布の佃煮、油揚げとネギの味噌汁、メジカ(シャケ)の切り身、お新香。


「うん、この梅干しは美味いな」

「すっぱいでしゅ」

「佃煮もいい味だ」

「よく煮込まれていますね」


 朝食は仁、礼子、マリッカの3人で、である。もっとも、礼子は食べないので、お代わりをよそったりお茶を注いだりしていた。


「ああ、美味かった」

「美味しかったです」


 仁とマリッカは満足そうに食後の玄米茶を飲んでいる。


「もう少ししたら、ルビーナとシュウの機体を見せてもらいに行こう」

「はい」


 2機とも、決勝戦を行った飛行場の格納庫に置かれているはず。

 2回めの決勝戦は午前9時から。今は午前7時半である。あまり時間はない。


「ジン様、マリッカ様、お待たせ致しました」


 そこへ世話役のトライハルト・ランドルがやってきた。


「お、待ってたよ。行こう」


 移動は『転移門(ワープゲート)』なので一瞬である。


「あ、ジン様、マリッカ様」

「ようこそ!」


 ルビーナとシュウが飛行場の転移門(ワープゲート)で出迎えてくれた。


「さあ、見てちょうだい! そして悪いところをどんどん指摘して! 今日は無理でも、次回までには直すから!!」

「ルビーナはいつも前向きだな」

「それがあたしの取り柄だもん」

「はは」


 そんな会話をしながら格納庫へ。ここは簡易整備ドックを兼ねているようだ。


「おお」


 なかなか広い内部に、仁も感心する。

 その中央部に、2機の飛行機が置かれていた。

 全長はおよそ8メートルほど。かなり小型である。

 その横にパイロットのゴーレムが立っていた。こちらも小学生ほどの身長で、小柄だ。


「今回のレギュレーションは?」

「全長全幅が7メートル以上8メートル以下、全高は規定なし。魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン)駆動。推進機は2基まで。操縦はゴーレム……だったわ」


 細かい規定もあるが、そこまでは仁も尋ねてはいない。

 規定のうち7メートル以上、という点は、空中戦を想定していると思われた。


「なるほど、その上で空中戦か……大きいと不利だもんな」


 ターゲットが大きければそれだけ被弾しやすくなる、というわけである。


「で、ジン様、どうかしら?」

「うーん、そうだなあ……ルビーナの機体は85点、シュウは80点といったところだな」

「厳しいわね……」

「厳しいですね……」

「あ、言っておくが、俺自身が作ったものでも100点満点はないぞ? 礼子のボディだって95点といったところだ。……娘としては100点を通り越して120点満点だけどな」


 満点としてしまうと、それで進歩も発展も止まってしまう、というのが仁の持論である。

 そして、いつまでも挑戦者でいたい。それが仁の信条である。


「……なるほどね。なら、85点というのはかなりいい成績ね」

「ええと、僕の方が5点低いのはなぜでしょうか」

「うん。それはこれから、ざっと説明するよ」


 まずはシュウの『雷光』から、仁は評し始めた。


「減点したのは、水平尾翼の位置だ」

「どういうことですか?」

「前から見て、主翼と同じ高さにあるだろう?」

「はい。空気抵抗を少しでも減らそうと思って……」

「そのせいで、水平尾翼の効きが悪くなっているんだ。運動性能が悪いだろう?……もちろん、僅かに、だが」

「あ、はい」

「それは、主翼が発生させた空気の乱れの中に水平尾翼が入るからなんだ」


 主翼の後端からは乱流と呼ばれる空気の乱れた発生し、後方へ流れていく。

 その乱れの中に水平尾翼が入っているため、若干水平尾翼……昇降舵エレベーターの効きが悪くなっている、と仁は評したのだった。


「そうだったんですか……」

「以前、模型飛行機競技の時、誰かに話したような気がするんだがなあ……徹底しなかったか……」


 更に仁は、こういう時は模型を使って風洞実験をするといい、と説明した。

 風洞実験とは、人工的に風の流れを作り出し、あたかも機体が飛んでいるような状態にしておいて、空気抵抗などの発生を調べるものである。

 航空機に限らず、自動車の車体設計でも行われている。


「風洞実験ですか……なるほど」

「トライハルト、どこかに作れないかな?」


 仁は世話役のトライハルトに相談してみた。


「はい、ジン様。可能だと思います。この後手配してみましょう」

「頼む。詳細は『テスタ』宛に老君から送らせよう」

「ありがとうございます」


 蓬莱島でも風洞実験は行っている。そのデータを使えば、『オノゴロ島』でもすぐに実験用の風洞を作ることができるであろう。


「あともう1つの減点ポイントは上反角が大きすぎることかな」

「やっぱりそうですか」


 後退翼はそれ自体が上反角効果を持つため、直線翼と同等の上反角を付けると復元性が強くなりすぎる。

 そのため、運動性が落ちる原因となっている、と仁は見たのであった。


「俺も航空力学は素人同然だから、あまり突っ込んだことは言えないけどな」


 実際、仁が作った航空機は、過剰出力とも言えるエンジンパワーで強引に飛んでいる節がなきにしもあらず……であった。


「その点を直していけばいいと思う」

「わかりました」


「ジン様、私のは?」

「ああ、次はルビーナの『ナイルⅣ』だな」

「はい!」


「全体のデザインはいいな。さすがだ」

「ありがとうございます!」


 仁自身、デザインが苦手なのでそういう点はルビーナを評価している。


「ただ、デルタ翼の実機って、低速で揚力が小さいだろう?」

「あ、はい」


 折り紙飛行機の大きさであれば、空気の密度は十分に飛行機を支えてくれるが、実機になるとそうはいかない。

 離着陸時に大きな迎え角(飛行方向に対する主翼の角度)が必要になってしまうのだ。


「俺も出た大会のときは模型だったから、『ナイル』だっけ、あの大きさでも十分な揚力が得られたんだが、実機になるとそうはいかなかったろう?」

「うん……はい……」

「そのあたりは、ゴーレムパイロットなので危なげなく着陸させていたけどな」


 人間だったら10回に3回くらいは着陸に失敗しそうだ、と仁は言った。


「それが減点ポイントだな」

「わかりました……。でも、どうしたらいいのか……」

「それもまた、風洞実験で、同じデルタ翼でも前縁の角度を変えるとか、断面形状を変えるとか、実験していくことだな」

「わかりました!」


 2人と話していて、ますます自分も参加してみたくなった仁である。


 その後約束どおり、仁は礼子とマリッカを助手に、空中からも戦闘の様子を中継できるようにと、小型飛行船に『魔導監視眼(マジックアイ)』を取り付けたものを3機製作したのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210127 修正

(誤)あ、言っておくが、俺自信が作ったものでも100点満点はないぞ? 礼子だって95点といったところだ」

(正)「あ、言っておくが、俺自身が作ったものでも100点満点はないぞ? 礼子のボディだって95点といったところだ。……娘としては100点を通り越して120点満点だけどな」


(誤)もっとも、礼子は食べないが、お代わりをしたりお茶を注いだりしていた。

(正)もっとも、礼子は食べないので、お代わりをよそったりお茶を注いだりしていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「あ、言っておくが、俺自身が作ったものでも100点満点はないぞ? 礼子のボディだって95点といったところだ。……娘としては100点を通り越して120点満点だけどな」 主人公らしいと感じ…
[一言] 更新お疲れ様です! >「全長全幅が7メートル以上8メートル以下、全高は規定なし。魔法型噴流推進機関駆動。推進機は2基まで。操縦はゴーレム……だったわ」 仁『この場合は良いけど、全長全幅全…
[一言] >>決勝戦を見たら 手加減「無理無理」 >>和風 海苔・納豆・生玉子「解せぬ・・・」 >>全高は規定なし 仁「㎞単位とかでも・・・」 >>推進機は2基 仁「・・・推進用とリフト用?」 …
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