75-24 やっぱり1泊することに
結局、仁とマリッカは『オノゴロ島』に1泊することとなった。
「礼子、老君に連絡しておいてくれ」
「はい、お父さま」
* * *
「ジン様! 見てくれた!?」
控室に行くと、ルビーナが駆け寄ってきた。
「ああ、途中からだったけどな。凄かったぞ。シュウもな」
「ありがとうございます」
同じ控室にはシュウ・ニドーもおり、こちらは礼儀正しくお辞儀をした。
「今日は『アヴァロン』へ行ってきた帰りなんだ」
「あ、そうなんだ。エイラさんたちのところ?」
「そういうこと。ルビーナやグリーナ、フレディなんかのことを聞かれてな。それで帰りに立ち寄ったというわけさ」
「そうだったんだ。……あの人たちも何か開発しているの?」
「もちろん。……そういう話はここじゃなんだな……」
仁がそう言うと、トライハルトが、
「そうですね。では、ご一緒に夕食を」
と言ってくれたので、場所を移すことにした。
仁、礼子、マリッカ、ルビーナ、シュウに加え、決勝戦には出られなかったが、準決勝まで進んだグリーナ・クズマ、シーリーン・エッシェンバッハも一緒だ。
「みんな、長足の進歩を遂げたみたいだな」
仁は子孫たちの成長を嬉しく思ったのである。
* * *
まずは風呂で汗を流してから夕食ということになった。
トライハルトが気を使ってくれて、仁は1人ゆっくりと湯に浸かることができている。
大浴場で和気あいあいと入浴するのもいいが、今日は色々あって疲れたので、1人のんびり湯を楽しみたかったので、この配慮は嬉しかった。
礼子も、今回は脱衣所で待機してくれていた。
(……楽しそうだったなあ……俺もやってみたかった)
とにかく、それが仁の正直な感想であった。
(次があったら誘ってもらおう)
とも。
一方、マリッカは大浴場でルビーナ、グリーナ、シーリーンらと寛いでいたのである。
* * *
夕食は、こういうときのために整備した迎賓館で行われた。
ただし献立は仁の希望で、派手ではないものとなる。
今夜は寿司。
寿司専門の自動人形が握ってくれる。
畳敷きの座敷で大きな漆塗りの座卓を囲んでの食事だ。
仁が好きなのは『カッパ巻き』『玉子』『ヤリイカ』『ハリブー(ヒラメ)』、『マグロ赤身』それに『稲荷』。
マリッカは『玉子』『トレバー(アジ)』『ヤリイカ』『ハリブー』『イクラ(メジカ=鮭の卵)』など。
ルビーナは『玉子』『ブリ』『ホタテ』『フコ(スズキ)』『マグロ赤身』など。
シュウは『トレバー』『ヤリイカ』『ハリブー』『ホタテ』『イクラ』。
グリーナは『かんぴょう巻き』『玉子』『ハリブー』『トレバー』『フコ』。
シーリーンは『カッパ巻き』『玉子』『ヤリイカ』『ホタテ』『イクラ』『中トロ』。
トライハルトは『カッパ巻き』『ヤリイカ』『ホタテ』『フコ』『ハリブー』『大トロ』など。
そしてスザンヌは『かんぴょう巻き』『玉子』『ホタテ』『イクラ』『稲荷』などである。
「寿司もなんだか久しぶりだ」
「たくさん召し上がってください」
欲しいネタを頼むとすぐに握ってくれるという。
未成年者がいるのでアルコール類はなし。
それでも、雰囲気がいいので話が弾む。
「……というわけで、気嚢の中に物理障壁を形成して、中を真空にしても潰れないように工夫していたんだ」
「ふうん……すごい発想ね。ジン様、それってエイラさんのアイデア?」
仁の説明に、ルビーナが関心を示す。
「そうだってさ。……それで彼らと話をしていた時にルビーナやグリーナ、フレディの話も出たんだよ」
「あー、そうだったのね。……グリーナ、残念だったわね」
「ん? 何でだ?」
「あ、ええとね……」
グリーナをからかうようなルビーナのセリフに、仁が質問すると、フレディは今カイナ村に帰っているのだそうだ。
「年末年始でいろいろ忙しいようです。エリスさんはカイナ村の領主様ですし、フレディはその孫ですから」
と教えてくれたのはグリーナだった。
「ああ、そうだよな。カイナ村か……昔の行事が残っているとすると、年末年始は忙しいだろうな……」
400年前、仁が領主をしていた頃に始めた、煤払いやら餅つきやら除夜の鐘(鐘といっても、二堂城で鳴らす)やら年越しそばやら初日の出やら初詣やら書き初めやら……要は日本風の行事の準備や指導があるというわけだ。
「その分、グリーナが頑張ったけどね」
「な、何言うのよ、ジン様とマリッカ様の前で!」
ルビーナにからかわれて顔を赤くするグリーナが初々しかった。
「そう言えば、今回の……戦闘機? 競技は誰のアイデアなんだ?」
これにはトライハルトが答えてくれた。
「ルビーナとシュウ、それにナタリアがアイデアを出してくれまして、皆でそれを昇華させました」
「そうだったか。なかなか……いや、凄く面白かったよ。ああ今回からかい?」
「あ、いえ、2回めです。前回はバトルロワイヤル方式にしたんですが、混沌としてしまって……」
「飛行機同士がぶつかって墜落したものね」
「……まあ、そうかもなあ」
それで今回は1対1のトーナメントになったのだという。
「ただ、上空でバトルをされると、観客には見えにくいだろう?」
「そうなんですよね。模型ではなく実機ですので大きさはいいのですが、やはり距離が……」
「そこは、小型機に『魔導監視眼』を付けて飛ばし、撮影させたものを大型魔導投影窓に映すとかすればどうかな」
「あ、それいい! ジン様、作ってくれますか?」
アイデアを出したらルビーナがおねだりをしてきた。
「うーん、材料さえあれば作ってもいいぞ」
「ほんと? ありがと、ジン様!」
「済みません、ジン様。お願い致します」
トライハルトが済まなそうに頭を下げたが、仁としては作ること自体に文句はまったくない。
「それじゃあ、明日の朝にでも」
「よろしくおねがいします」
そういうことになった。
そして仁からも要望を出す。
「次回、同じような競技をすることになったら教えてくれ」
と。
「スケジュールが合えば、俺もゲスト参加してみたいから」
「わあ、ジン様と競えるなんて光栄です!」
「本当ですね。また頑張らなくちゃ」
「やる気出るわ!」
「わかりました。手配しておきます」
そんな風に、和やかな雰囲気で『オノゴロ島』の夜は更けていった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日1月26日(火)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20210126 修正
※ハリブー(ヒラメ)/トレバー(アジ)/イクラ(メジカ=鮭の卵)/フコ(スズキ)
の注釈を、最初の1つだけとしました。
(誤)ただし献立は仁の希望で、派手でではないものとなる。
(正)ただし献立は仁の希望で、派手ではないものとなる。
(誤)
ルビーナは『玉子』『ブリ』『ホタテ』『フコ(スズキ)』『マグロ赤身』など。
(正)
ルビーナは『玉子』『ブリ』『ホタテ』『フコ(スズキ)』『マグロ赤身』など。
シュウは『トレバー』『ヤリイカ』『ハリブー』『ホタテ』『イクラ』。
シュウが抜けてました……ごめんなさい。




