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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
75 後始末篇
2843/4357

75-23 空中戦

「うおおおおおおおおっ!」


 仁と礼子、マリッカが転移した飛行レース場には歓声が響いていた。


「おお」


 今しも、決勝戦の真っ最中なのである。

 競技内容は『空戦』。

 飛行機の表面に、特定の光に反応する特殊な透明塗料を塗ってあり、攻撃手段はその反応する波長の光を放つ光線銃。

 光が当たった塗料は透明から赤に変色するので、それをもって被弾と判定するという。


「面白いやり方だな」


 空戦、あるいは空中戦という、血湧き肉躍る活劇を、破壊なしに行い、競い合うにはもってこいのやり方である。

 もちろん飛行機は全部参加者の自作で、操縦者はゴーレムもしくは自動人形(オートマタ)だった。


 推進機は『魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン)』なので、見た目はジェット戦闘機同士の空中戦だ。

 超音速は出していないので、観客にも視認できている。


 今は決勝戦ということで、1対1の戦いが繰り広げられていた。


「これは面白いな」

「ですよね」

「もっと早く教えてほしかったな」

「わかります。でもジンしゃまはいろいろお忙しかったですし、私も……」

「まあそうだな」


 つい最近まで、仁もマリッカも『ラシール大陸』関係でごたごたしていたのである。

 なので、老君も気を使って仁に知らせなかったのだろうと思われた。


 実際、準決勝までは、まさに『ポーセ』や『メメンタス』とやり合っていた時期だったのだ。

 この決勝戦だけはベストコンディションで行えるよう、準決勝後に機体の整備期間を設けたので今日になったようである。

 ……ほんの僅か、『オノゴロ島』の管理魔導頭脳『テスタ』が、主人であるマリッカに配慮したのかも……しれないが。


*   *   *


 後退角のついた機体が宙返りを行い、背後から迫っていたデルタ翼の機体をやり過ごし、背後についた。

 それで終わるかと思いきや、デルタ翼機は左下へとダイブ。

 そのまま斜め45度くらいの角度で降下。後退角機も後を追う。

 地面……いや、舞台は海上なので海面すれすれでデルタ翼機は機首を引き起こし、垂直上昇に移った。

 後退角機も後に続く。

 ここまでは全く互角の機動戦である。


*   *   *


「おお、見ごたえがあるなあ」

「凄いですね、ジンしゃま」


 仁とマリッカは、観客に見つからないよう、人気ひとけのないブースで観戦していた。

 このブースも『テスタ』が用意してくれていたようだ。


「あれ? あのデルタ翼機って……ルビーナか」


 見覚えのあるデザインだったのでそうかなと思って会場を見ていたら、発光掲示板にルビーナ・ギャレットの名前と『ナイルⅣ』の表示があったのだ。

 『ナイル』というのは、オノゴロ島で仁も参加した飛行機競技でルビーナが作ったデルタ翼機だった。

 その4号機ということで、スタイルも性能も洗練されていた。


 そして後退翼機は『雷光』、製作者は『シュウ・ニドー』となっていた。


「シュウはあの時作った機体は……『電光』だったか」


 決勝戦はルビーナとシュウの一騎打ちであった。


 最高速度はほぼ互角。運動性は『ナイルⅣ』の方が上だが、射撃の正確さでは『雷光』が上回っていた。

 結果、トータルではほぼ互角。

 操縦しているゴーレムの性能もほぼ同じくらいのため、非常に見応えのある決勝戦になっていた。


*   *   *


 垂直上昇ではほぼ互角、背後についた『雷光』が発射する光線を、『ナイルⅣ』は『エルロンロール』と呼ばれる回転飛行と『シザース』と呼ばれるジグザグ飛行を繰り返して避ける。

 が、それでも振り切れないため、シザースの後、一瞬にして反転、急下降に移った。

 僅か0.3秒ほどですれ違う2機。

 その間に双方光線を発射するが、互いに致命弾を受けることはなかった。


 『ナイルⅣ』はループに入り、『雷光』も続く。

 2機は夕空に大きな円を描いて、いわゆる『巴戦ともえせん』に入った。


 操縦しているのが人間なら、大きなGが掛かり、身体への負担のためにどちらか、もしくは双方が脱落するのだが、2機の操縦者はゴーレム、少々のGではびくともしない。

 20回転ほどループを行ったが双方譲らず。

 千日手の様相を呈してきたのと、日没が近づいて視認が難しくなった(観客の)ため、運営から時間切れ引き分けの宣言が行われた。


『双方それまで! 本日の決勝戦は引き分けとします! 明日、改めて第2次決勝戦を行います!』


 観客からどよめきが起き、次いで双方の健闘を称える拍手が沸き起こった。


「いやあ、手に汗握ったな」

「でしゅね、ジン様」


 仁とマリッカも、途中からではあったが、ルビーナとシュウの2人……2機のバトルには魅せられた。


「じゃあ、もう少ししたらルビーナたちのところへ……」


 ……と仁が言った、その時。


『本日は、ジン様とマリッカ様も観戦においでくださいました!』


 とのアナウンスが響き渡ったのである。


「……うわあ」

「やっぱり、ばれますよね」


 そんな2人のところに、世話役のトライハルトとスザンヌ夫妻が大急ぎでやって来た。


「ジン様! マリッカ様!」

「おいででになるのでしたら、お知らせくださいませ!」

「ああ、悪い。……ちょっと、急遽思いついたものだから」

「ごめんなさいね。そういうわけなのですよ」


 仁は詫びると共に、用事があって『アヴァロン』へ行った帰りにちょっと寄った、と説明した。


「そうでしたか。でも、まだお時間は大丈夫なんでしょう?」

「そりゃな……」

「でしたら、せっかくいらっしゃったのですから、決勝戦のご感想などを皆に聞かせてやってください。マリッカ様も、お願いします」

「まあ、いいか」


 そういうわけで、仁と礼子、マリッカはトライハルトに連れられ、来賓席へ。

 そこで渡された『集声の魔導具(ボイスコンデンサ)』。

 まずはトライハルトが一言告げる。


『お集まりの皆さん! 本日は、偶然にもジン様とマリッカ様がおいでになり、決勝戦をご覧になってくださいました! これより、お二方に一言コメントを頂きたいと思います!』


 歓声と拍手が渦巻く中、仁は話し始めた。


「みなさん、お久しぶり。ジン・ニドーです。今回、本当に偶然ですが、所用があってこちらを訪れると、素晴らしい決勝戦を拝見させていただけました。両者とも見事な機体、見事なゴーレム、見事な飛行でした。そして、破壊を行うことなく戦闘技術の向上を行える方式も見事でした……」


 仁の言葉に、皆喜びの拍手を贈った。


 そして次はマリッカ。


「マリッカです。皆さん、お元気でしたか? 今、ラシール大陸の方でいささかごたごたがあってなかなか来ることができませんでしたが、ようやく情勢も落ち着き、訪問することが叶いました……」


 マリッカは近況報告から入り、仁同様決勝戦の様子を褒めたのである。


 そして2人はこの日、『オノゴロ島』で1泊していくことになる。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 202010125 修正

(誤)地面……いや、舞台は海上なので海面すれすれで後退角機は機種を引き起こし、垂直上昇に移った。

(正)地面……いや、舞台は海上なので海面すれすれで後退角機は機首を引き起こし、垂直上昇に移った。

(誤)今回、本当に偶然ですが、所要があってこちらを訪れると

(正)今回、本当に偶然ですが、所用があってこちらを訪れると


(誤)

 後退角のついた機体が宙返りを行い、背後から迫っていたデルタ翼の機体をやり過ごし、背後についた。

 それで終わるかと思いきや、後退角機は左下へとダイブ。

 そのまま斜め45度くらいの角度で降下。デルタ翼機も後を追う。

 地面……いや、舞台は海上なので海面すれすれで後退角機は機首を引き起こし、垂直上昇に移った。

 デルタ翼機も後に続く。

(正)

 後退角のついた機体が宙返りを行い、背後から迫っていたデルタ翼の機体をやり過ごし、背後についた。

 それで終わるかと思いきや、デルタ翼機は左下へとダイブ。

 そのまま斜め45度くらいの角度で降下。後退角機も後を追う。

 地面……いや、舞台は海上なので海面すれすれでデルタ翼機は機首を引き起こし、垂直上昇に移った。

 後退角機も後に続く。


 m(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] >光が当たった塗料は透明から赤に変色するので、それをもって被弾と判定するという。 塗料が透明なのは、機体のベース色に干渉しないための他、キャノピーにも塗る必要があるから、 なのですね、きっ…
[一言] で、このあと余興として、飛び入り参加のチーム戦が行われたのです どっかで見たような機体、どっかで見たようなパイロットです フ「戦争を教えてやる」ウケケケケ エ「えっとぷろとかるちゃ」ちゅど…
[良い点] 前話 >「悪いな、ホープ」 >「いえ、ご主人様、『ハリケーン』はお任せください」 >仁としてもオノゴロ島に長時間滞在するつもりはなかったので、このような処置をとったのである。 でも、 …
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