75-22 アヴァロンからオノゴロ島へ
仁は現地時間でその日いっぱい『アヴァロン』に留まり、『ゴー研』や『航空研』の相談に乗ったり、これまでの研究の成果を見せてもらったりした。
その中でも興味深かったのは、やはりエイラたちゴー研の作品であるゴーレムたちだ。
『試作12型』と呼ばれているそれは、以前ルビーナたちのゴーレムと競った『試作8型』から数えて4世代目のゴーレムである。
「すごく洗練されたなあ」
「そうだろうそうだろう!」
「ジン殿にそう言われると嬉しいものだな」
開発者であるエイラとグローマは誇らしげだ。
「パワーは2倍、反応速度は3倍、精密動作性は2.5倍といったところかな」
と仁が言うと、皆驚きを隠せない。
「……見ただけでそこまでわかるのか……さすがジンだな!」
「……追いつける気がしないですね……」
更に仁は断りを入れて『分析』を使わせてもらい、より詳しいデータを得た。
「骨格は簡易アドリアナ式。筋肉組織は生体素材。全体的な効率を考えた制御核設計。……こんなところかな」
「おお!」
「す、すごい……」
「さすがジンだな!」
『分析』はもっと細かい仕様まで読み取っているが、そこまで口にするのはやりすぎだろうと仁は自重した。
「……我々も努力しているけど、以前ジンと一緒に来ていたルビーナとかフレディとかグリーナとか……彼らもきっと進歩しているんだろうな」
「多分な。ここのところ忙しかったから会っていないんだ」
「そうか。……また、機会があったら競い合いたいなあ」
「うん、今度会う機会があったら伝えておくよ」
* * *
そして、夕食は『アヴァロン』の食堂で、となる。
仁、エイラ、カチェア、グローマで1つのテーブルを囲む。
「なんか、ジンも忙しそうだな」
「ああ、そうなんだ。……今、ショウロ皇国に初代魔法工学師の記念館を建設中なんだよ」
「あ、聞きました。もうすぐ完成なんですよね?」
「うん。来年の1月1日に開館式を行って、招待客に開放する。一般向けは1月7日を予定しているんだ」
「それは、是非行ってみたいですね」
仁は頷いた。
「ぜひ来て欲しい。……『アヴァロン』からも10名を招待することになっているんだけどな」
「うーん……その中に入るのは無理そうだな……休暇をとって1月中には見に行きたいな」
「エイラたちでも無理かな?」
最高管理官であるトマックス・バートマンがどういう基準で参加者を選定するかわからない以上、仁にはどうすることもできない。
そもそも招待されているからには公務扱いなので、『アヴァロン』内での人事に干渉するわけにはいかないのだ。
「わかんないなあ。ま、休暇は余っているから一般公開で見に行ければ十分だよ」
「あの、それで、どんな施設なんですか?」
カチェアからの質問。至極真っ当である。どんな施設なのか全く知ろうともしないエイラが少々変わっているのだ。
「初代魔法工学師だったアドリアナ・バルボラ・ツェツィに関しての展示や説明が半分、2代目に関するものが4分の1、残りが関係者や一般からの作品……かな」
展示物に関しては比率はともかく、そうした内容になるだろうと思われた。
「そもそも、初代について人々に知ってほしいから、2代目と関係の深いショウロ皇国に建設したんだしな」
「なるほど、そういう理由からなんですね」
「でも、施設の意味するところはそれだけじゃないんでしょう?」
「ああ、グローマの言うとおり、魔法工学に関する資料館の役割も持たせたいと思っている。だから専門家だけじゃなく、子供にもある程度わかってもらえるように工夫するつもりだ」
「それでしたら、私が行っても楽しめますね」
「ああ、是非カチェアにも見てもらいたいな」
そんな話をしながら、時間は過ぎていった。
* * *
「それじゃあな。久しぶりに楽しかったよ」
「ジン、また暇を見つけて来てくれよ!」
「ジンさん、お元気で」
「ジン殿、また来てください」
エイラ、カチェア、グローマらに別れを告げ、仁は『ハリケーン』に乗り込んだ。
「ジン殿、帰路お気をつけて」
「はい。それではまた」
多忙な中、トマックス・バートマンもやって来て仁を見送ったのだった。
* * *
『アヴァロン』を飛び立った『ハリケーン』は、またたく間に高度を上げていく。
すぐに目視では『アヴァロン』の明かりも見えなくなる。
「お父さま、これからどうなさいますか? 転移門で蓬莱島へお帰りになりますか?」
「うーん、そうだな……せっかくだから、『オノゴロ島』に寄っていこう」
エイラにルビーナたちがどうしているか聞かれたこともあり、仁はオノゴロ島に立ち寄ることにしたのである。
「わかりました。連絡を入れておきます。……それでは、このまま『ハリケーン』でオノゴロ島へ?」
「うん、それでいい。俺はちょっと仮眠をとっておく」
『アヴァロン』とオノゴロ島の時差は8時間半ほど。
今は午後8時半くらいなので、オノゴロ島は正午頃となる。
ホープには、午後4時頃着くよう『ハリケーン』の速度を調整しながら飛んでもらい、仁は少しだけ仮眠を取ることにしたのである。
* * *
『力場発生器』を駆使した超音速飛行も併用した結果、『ハリケーン』は仁の希望通り午後4時にオノゴロ島に到着した。
ここからは転移門で移動。お供は礼子。
ホープには悪いが『ハリケーン』と共にこのまま蓬莱島へ帰還してもらうことになる。
「悪いな、ホープ」
「いえ、ご主人様、『ハリケーン』はお任せください」
仁としてもオノゴロ島に長時間滞在するつもりはなかったので、このような処置をとったのである。
* * *
「ジンしゃま、ようこそ」
「……マリッカ?」
オノゴロ島の転移門から出ると、マリッカが出迎えてくれた。
世話役のトライハルトとスザンヌは見当たらない。
「ジン様がオノゴロ島に立ち寄ると聞きまして、急いでやって来ました」
「ああ、うん、ありがとう。トライハルトは?」
「今、ちょうど飛行機競技会の最中でして、そちらに」
「そうだったか! タイミングがいいんだか悪いんだか」
「決勝戦が始まったばかりですよ」
今は11月末だが、南半球にあるオノゴロ島は夏であり、日が長いので午後4時とはいえまだまだ明るいのだ。
「ルビーナたちのところですか?」
「うん。『アヴァロン』でエイラに彼女たちはどうしているか聞かれてな」
「そうでしたか。でも、ルビーナも決勝戦に出てますから」
「まずはそっちへ行くか」
「はい、ご案内します」
そういうことになったのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は、楽しみにしてくださっている方には申し訳ございませんが、都合により
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
の更新はお休みさせていただきます。
代わりに1月26日(火)14:00に更新する予定です。
20210124 修正
(誤)「……我々努力しているけど、以前ジンと一緒に来ていたルビーナとかフレディとかグリーナとか
(正)「……我々も努力しているけど、以前ジンと一緒に来ていたルビーナとかフレディとかグリーナとか
(誤)『力場発生器』を駆使した超音速飛行も混じえた結果、
(正)『力場発生器』を駆使した超音速飛行も併用した結果、




