74-04 そして、また1つ傘下に加わる
『オエステ2』の統括管理魔導頭脳『ルゥカー』と『紛い物』たちとの検討会はまだ続いている。
その中で、仁が思いついていたことを『ルゥカー』が口にした。
『……『メメンタス』に『ポーセ』のデータがあるのでは? と思っているのですが』
「おお、いいところに気が付いたな。確かにそうだ」
「完全ではないが、『ポーセ』についてのデータはあるはずだ」
「我々の誰かが行けば、情報を引き出せるだろう」
「それなら俺が付き添おう」
これまで黙っていた仁Dが口を開いた。
「おお、ジン君か。君に一緒に来てもらえれば心強いな」
「早速行こう。そうだな、私と『ルセネト』、そしてジン君とレーコ嬢の4人で行くとしようか」
そう言ったのは『クフカエフ』。
「わかった」
仁Dは一言短く答えたのだった。
* * *
『転移魔法陣』を使い、短時間で『メメンタス』を訪れた仁D、礼子、『クフカエフ』、そして『ルセネト』。
『クフカエフ』はまず仁Dに、今回の質問を終えたら、『ルゥカー』や『プローテ』同様、『メメンタス』も再製作してほしい、と告げた。
「それは構いませんが、いいんですか? 皆さんの作品ではないですか」
だが『クフカエフ』は首を横に振った。
「いや。下手をすると、『メメンタス』も『ポーセ』の破壊対象になる可能性がある。基地内の平穏のためにも是非お願いする」
「……わかりました」
そういうことなら、と仁Dは承知した。
だが、まずは『ポーセ』の情報である。
仁Dは『クフカエフ』がいろいろと質問するのを斜め後ろで聞いていた。
もちろん、その聴覚を使って、老君も同時に聞いていたのは言うまでもない。
* * *
『思ったよりも『ポーセ』の情報は少ないですね』
残念そうに老君が言う。
『クフカエフ』が『メメンタス』に対して行った質問でわかったことは以下のとおり。
1.『ポーセ』は『不安定』な『魔導頭脳』を標的にする傾向が強い。
2.『ポーセ』の生産能力……戦闘用ゴーレムや武器、兵器などを作ったりする能力……はかなり高い。
3.『ポーセ』は人間には攻撃しないが、その持ち物、住居、道具などはその限りではない。従って、住居が狙われた場合、中にいると危険である。
4.『ポーセ』は狡猾な思考を持つはずである。そういう風に構成したから。
5.『ポーセ』には、『製作者』を特別視する考えはない。自分の基準に従って行動するのみである。
4と5は『クフカエフ』の説明からである。そして、『今の『ポーセ』の魔力パターンは不明』ということだった。
『情報が少ないのも致し方ないでしょうね。『今』の『ポーセ』がどうなっているかなど、誰も知らないでしょうし、それを調べようとしているわけですし』
むしろ、古い情報は足かせになるかもしれない、と老君は考えている。
思考するための基礎データと、現状を示す情報があれば、『ポーセ』のアウトラインを描くことはできるだろうからだ。
ただ、現状の情報がなかなか得られないのが難点である。
『それに、消えた山頂はどこへ行ったのか……』
さしあたっての、老君の最大の疑問である。
観察衛星『ウォッチャー』を使っても、その行方はわからないのだ。
あれだけの大きさのものを『ウォッチャー』が見逃す可能性は低い。
『こうなると、地表部にはない可能性が高まりますね。つまり……』
海中か、あるいは宇宙空間、ということになる。
もっとも、『隠蔽』系の魔法で隠されている可能性もゼロではないが。
* * *
そしていよいよ、仁Dによる『メメンタス』の再製作が始まった。
『魔導頭脳メメンタス』の説得には、『紛い物』全員が立ち会った。
8人の『紛い物』が揃って希望している旨を伝えると、『魔導頭脳メメンタス』は意外と素直に応じたのである。
仁Dとしては肩透かしでもあったが、トラブルはないほうがいいと、即作業に取り掛かった。
再製作に当たり、マリッカDも呼んでいる。
完成したらマリッカDに起動してもらうつもりだからだ。
まずは内容……記録された情報のバックアップを取るところから始まる。
「『知識転写』『知識転写』『知識転写』……」
「ふむ、何度見ても見事だな」
「……素材は?」
「はい、こちらに」
助手として、侍女自動人形の『ロボーテ』と執事自動人形の『バスチアン』も手伝ってくれている。
主に資材、素材の準備だが、『メメンタス』施設内に詳しいだけあって、なかなか役立ってくれていた。
おかげで仁Dは製作に専念できている。
どうしてもほしいレア素材だけは、礼子がこっそりと蓬莱島から取り寄せてくれているが。
「こうなっていたのか……」
「ジンしゃま、これってどう判断すればいいんでしょうか……?」
仁Dの視覚を通じて、初めて『メメンタス』の中を見た仁は感心し、また呆れた。
「『自我』を保存した『制御核』を8人分つまり8つ、メインユニットの周りに等間隔に配置しているのはいい。だけど他のサブユニットの位置が悪すぎて拡張性が乏しいよな……」
「ですよね……」
おそらく後からの拡張は全く考慮していないのだろうなと、仁Dは見学している『ジェドエフ』に聞いてみると、そのとおりだという肯定の言葉が返ってきたのであった。
例えるなら拡張スロットが全部埋まったマザーボードであろうか。……作業をしている仁Dを操縦する仁はそちら方面には疎いのだが。
「まあ、『紛い物』たちの『自我』が入っていたユニットは保存しておこう。こっちは礼子、頼む」
「はい」
完全消去されていないなら、将来的に役に立つ時が来るかもしれない、と思っている。
それで仁Dは8つの『制御核』を取り外し、礼子に保管を頼んだ。
そして、その8箇所には補助用のサブユニットで置き換えていく。
構造はそのままにして再製作していく仁D。
『紛い物』たちはそれを見ながら、感心することしきり。
「今の技術者はこれほどなのか?」
「いや、ジン君だけが特別らしいぞ」
「さもあらん」
「見ていて気持ちがいいほどの製作速度よね」
仁Dはそんな外野のさえずりに耳を貸さず、黙々と作業を続け、1時間で『新・メメンタス』を完成させたのである。
処理速度は1.5倍程度に抑えたが、サブユニットが8個あるので、記憶容量や付随機能を強化してある。
「できました。……名前はどうしますか?」
「……そうだな……『クラース』というのはどうだろう。『明日』という意味の古語なのだが」
『ジェドエフ』が言い、他の『紛い物』たちもそれでいい、と言った。
それで今回はマリッカDが『メメンタス』改め『クラース』を起動することになった。
「『起動せよ』」
『……はい、マリッカ様』
「調子はどうですか、『クラース』?」
『はい、おかげさまで上々です』
「それはよかった」
『……『統括管理魔導頭脳クラース』は、これよりマリッカ様の配下となります』
「よろしくおねがいしますね」
そういうことになったのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20201120 修正
(誤)施設内の詳しいだけあって、なかなか役立ってくれていた。
(正)施設内に詳しいだけあって、なかなか役立ってくれていた。
(旧)「8人分の『自我』を保存した『制御核』を
(新)「『自我』を保存した『制御核』を8人分つまり8つ、
(旧)作業をしている仁Dを操縦している仁はそちら方面には疎いのだが。
(新)作業をしている仁Dを操縦する仁はそちら方面には疎いのだが。
(誤)「まあ、『紛い物』たちの『自我』が入っていたユニットは保存しておこう。こっちはマリッカ、頼む」
(正)「まあ、『紛い物』たちの『自我』が入っていたユニットは保存しておこう。こっちは礼子、頼む」
(旧)4と5は『クフカエフ』の説明からである。
(新)4と5は『クフカエフ』の説明からである。そして、『今の『ポーセ』の魔力パターンは不明』ということだった。




