74-03 罠の真相とこれからの方針と
さて、『ポーセ』調査のために罠があった大ホールまで到達した、『ルゥカー』が派遣したゴーレム、『MGー1』『MGー2』『MGー3』。
彼らは『大ホール』を調査していた。
「報告によれば、何らかの罠が作動する寸前に脱出したということだったが」
「罠、か。……どんな罠だったのだろうか」
「これを見てくれ」
MGゴーレム3体はホール内に動きが見られないことを確認すると、別れて調査に入っていたのだが、MGー2が何かを見つけたようだ。
「これは……樹脂の破片か?」
「だと思う」
樹脂、というのは合成樹脂ではなく、天然樹脂のことだ。松ヤニも樹脂である。
MGー2が見つけたのは魔導樹脂。ゴーレム製作にも使われるし、魔導頭脳にも使われている。
「随分と平たくなっているな」
そう、それは『ぺっちゃんこ』と形容するのがふさわしいほどに薄く平らになっていたのである。
「こういう形状で使うものだったのか?」
「その可能性も、もちろんある。だが、塊だったものがここまで平たくなったのではないかと思うのだ」
「それが罠の答えか」
「そうだ」
「それはつまり……」
重力増加。それが罠だったのではないかというのがMGー2の意見だった。
「これを見るに、100Gくらいは掛かったものと思われる」
「そうだろうな」
「100Gか。……我々は動けるか?」
「まあ、辛うじて、といったところだろうな」
『忍部隊』も同様だ。が、『重力魔法』で対抗すればなんとでもなる。
後に、この報告を聞いた老君は、『忍部隊』が行った緊急避難転移の座標がずれたのは、高重力により空間が僅かに歪んだためであろうと結論づけたのだった。
* * *
更に調べていくと、警備ゴーレム、整備ゴーレムなどもまた、100Gの重力でかなり骨格に歪みが出ていることがわかる。
「この部屋全部を囮に使っての罠か……」
「今回はどうなのだ?」
「可能性はあるが低いな」
一度使った罠を再利用する、という発想は『始祖』から受け継ぐ思想にはなかったのである。
そして、それは今回に限っては当たっていた。
3体のゴーレムは邪魔されることも罠にかかることもなく、大ホールを調査し終えたのである。
一番の収穫は、警備ゴーレム・整備ゴーレムが半ばダミーだったことだ。というか故障したものを配置してあったようだ。
視覚センサーは生きているが、まともには動けない。辛うじて歩ける程度のものであった。
それが100Gにさらされ、完全に壊れてしまっていた。
そして半球形ドームの中は空っぽ。
「つまり、この部屋にはこれ以上見る価値がないということだな」
「同意する」
「では、次の部屋を目指すことになるのだが……」
問題は、その方法である。
階段はこのフロアで終わりであるし、エレベーターも見当たらない。
「むむ……」
「機械的な手段がないということは、転移魔法陣か?」
「それしかないだろうな」
さらに探し回る3体。
だが、1時間を掛けても転移魔法陣は見つからなかったのである。
* * *
蓬莱島では老君も『覗き見望遠鏡』を使って大ホールをはじめとする諸施設を観察していた。
『確かに、あれ以上上へ行くルートはありませんね』
そもそも、大ホールより上に部屋はないのである。
そうなると、単純に行き止まりか、転移魔法陣のような手段があるか……ということになる。
『つまり、かつてはここに『ポーセ』があって、今は『山頂』にその存在を移動させ、そちらを拠点にしているということでしょうね』
すなわち、『メメンタス』基地内部はもう『ポーセ』の勢力範囲ではないということになる。
罠や、まだ動いているゴーレムは、単に昔の名残なのであろう、と老君は判断した。
『もう少しあの3体に調査を任せ、無害とわかったなら一気に制圧し、『メメンタス基地』としてこちらの勢力に取り込みたいですね』
『覗き見望遠鏡』で見た限り、もう罠はないようですし、ということで老君は待機することにしたのである。
* * *
そして、その3体。
「ううむ……どうやら『ポーセ』はこの基地内にいないのではないか?」
「これだけ探しても見つからないこと、それに罠の発動もないことを考えるとありえるな」
「ここは、一度帰って報告したほうがいいのではないかな?」
そういうわけで3体は『オエステ2』に帰還し、報告を行ったのである。
『なるほど、『ポーセ』は施設内にいない可能性が高いと?』
「はい」
『それならば、『メメンタス』施設を制圧するのがよいのだろうか……これは『紛い物』の方々とジン殿にも聞いてみるか』
さすがに、その施設、あるいは基地に住んでいた『紛い物』に何も知らせないのはまずいだろうと判断した『ルゥカー』は報告会を開くことにしたのである。
* * *
『…………以上が、『MGー1』『MGー2』『MGー3』らが調べてきた内容です』
「なるほど」
「話を聞く限り、『ポーセ』は施設内から出ていったようだな」
「それならば、『メメンタス基地』を制圧するのは悪い手ではないな」
『紛い物』たちは概ね制圧に賛成であった。
「だが、どうやって制圧する?」
これは仁Dの発言だ。制圧をなめてかかるのはまずいと、注意喚起するつもりもあった。
『こちらの手勢200体を送り込んで、一気に』
「……まあ、そうなるな」
この場合、力押しになるしかないのである。
「ただ、報告を聞いて思ったが、向こうのゴーレム類は、最初の指令のまま動いている節があるぞ」
「おお、ジン君の言うとおりだ」
「融通がきかないからね」
「その場合、指令を撤回する頭脳がないから、破壊されるまで抵抗すると思うが」
「何か対策はあるのかしら?」
仁Dは『紛い物』たちが比較的適切な意見を言ってくれるのでほっとしていた。
仁たちなら『魔力素除去器』をはじめとする手段もあるのだが、『ルゥカー』はいかに? と、口出しを控えている。
『あります。命令を出す『ポーセ』がいないわけですから、『ポーセ』に代わって命令を出せばいいのです』
「それはそうだが……」
『皆さん、『ポーセ』の魔力パターンをご存知では?』
悪くない手だ、と仁Dを操縦している仁は思った。
問題は、『紛い物』たちが『ポーセ』の魔力パターンを知っているのかどうかということだ。
「いや、知らぬな」
「役に立てそうもない。済まぬな」
そして案の定、『紛い物』たちは『ポーセ』の魔力パターンを知らなかったのである。
(だが、まだ手はある)
『ルゥカー』もしくは『紛い物』たちが気付かなければ自分が言おう、と、仁Dは待機した……。
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