73-48 万能ゴーレム、その整備から見えてくるものは
一方、『オエステ2』。
仁Dは『職人』に手伝わせ、居住区の整備を行っていた。
元々『第2世代』の『始祖』が住んでいたわけだが、その部屋はそのままそっとしておくことにし、
空き倉庫を改装しているのである。
「うん、できた。これでいいだろう」
元が倉庫なので大部屋風味。
寝室は10人分で、全部個室である。ベッドの他にミニテーブルとスツール、小さなクローゼットがあるだけの簡単な作りだ。
残りは居間と簡易キッチンにした。
リビングにはテーブルセットを5組置いた。
内訳は8人用1つ、4人用2つ、2人用2つ。
キッチンには簡易上下水道、魔導コンロ、魔導オーブン、それに冷凍冷蔵庫も設置。
簡単な料理なら楽に作れる。
それにトイレ、そして魔導投影窓と魔素通信機。
空調も完備した。
「だいぶ居心地がよくなったな」
ひとりごちる仁D。
「うむ、お見事、ジン君」
「どうも」
「同じ施設を『メメンタス』のある基地にも作って欲しいものだ」
「いいですよ。……問題が解決したら、ですが」
向こうには職人も何体かいるので、老君経由で情報を転写すれば、すぐに作ってくれるだろう。
まあ、そのまえに『メメンタス』をどうにかし、侍女の『ロボーテ』と執事の『バスチアン』に許可を取る必要があるだろうが。
そして、それ以上の問題が残っているのも事実。
そう、保安施設『ポーセ』である。
『メメンタス』の上に『ポーセ』があるということなので、当面『紛い物』8体を『メメンタス』に帰すわけにはいかなかったのである。
* * *
できあがった寛ぎ空間で、仁Dは『紛い物』たちと話をしていた。
「……そういうわけで、『忍部隊』を送り込んだのですが、すんでのところで罠にかかりそうになり、撤退しました」
なので『ポーセ』の現状はまだ不明です、と言って報告を締めたのだった。
「なるほど……」
今回も『ジェドエフ』がスポークスマンを務め、他の7人は聞き役だ。
「だが聞く限りでは、おそらくそのホールは『ポーセ』があった場所に間違いないぞ」
「なら、『ポーセ』は?」
「移動したのだろうな」
「そんなことが?」
「自己進化できるわけだから、そうとしか考えられない」
「なるほど……」
『始祖』が作ったものなのだから、元始祖である『紛い物』なら、その行動を推測することもできるのだろう。
「もしかすると、最早基地にとらわれないのかもしれないぞ」
「つまり、自力で移動できるようになっていると?」
「あくまでも可能性だがな」
なんだってそんな魔導頭脳を作った、と思わなくもないが、既に終わったことと思い直し、仁は文句を言うことはなかった。
『私にやらせてください』
「え?」
「……『ルゥカー』か?」
『はい。ジン殿、『ジェドエフ』殿。……私のところにも調査に向いたゴーレムがあります。それを派遣してみましょう』
「……どう思う?」
仁Dは『紛い物』たちの意見を聞くことにした。
「いいんじゃないかしら」
「役に立ってもらいましょうよ」
「いいと思うわ」
「やらせてあげたら?」
女性陣は皆賛成だった。
そして男性陣も、
「いいのではないか?」
「やらせてやれ」
「役に立ちたいのであろう」
「試してみればいいではないか」
という意見であった。
それで仁Dも、
「そうか。それならやってもらうか」
と言ったのである。
「ただ、どういうメンバーで、どういう装備で行くのかは教えておいてもらいたいな」
『わかりました』
そして『ルゥカー』は、秘蔵のゴーレムを繰り出してきた……らしい。
『この3体は、非常時に起動させている万能ゴーレムです。戦闘、修理、諜報など、何でもこなします』
「ほう」
見かけは身長2メートルの細マッチョ、である。おそらく合金鋼の外装。
外見はすっきりしていて、突起やプロテクターなどはない。
その辺は追加装備となっているようだ。
『ジン殿、どうでしょう?』
「うーん……整備はどうなっている?」
『前回使ってからまだしておりません』
「その前回というのはどのくらい前だ?」
『およそ600年前ですが』
「……一度整備しようぜ」
仁Dがそう言ったのには訳がある。
動きが明らかにギクシャクしていたからだ。
もちろん、仁Dの目を通して見た仁に分かる程度、ではあるが。
『わかりました。お願いできますか?』
「もちろんだ。言い出したのは俺だからな」
そういう訳で、仁Dは3体の万能ゴーレムの整備を行うことになった。
助手は『職人』101と礼子。
あっというまに外装を外した彼らは、分業で手際よく半解体にまでもっていく。
それを仁Dが調整して再組み立て、という流れだ。
真っ先に行ったのは関節の調整。
僅かではあるが錆が発生し、動きが悪くなっていたのである。
そこで仁Dは『オエステ2』の資材倉庫からアダマンタイトを調達し、摺動部にコーティングを行ったのである。
「ほう、うまい使い方だな」
それを見ていた『フェルヘテ』が感心したような声を上げた。
次に仁Dは、魔導神経線をメンテナンスする。わずかに硫化して黒ずんでいたミスリル銀線を『抽出』で硫化物を取り除き、減った分を『融合』で戻しておいた。
同時に『強靱化』処理も施しておく。
筋肉組織は金属系だったので、これも劣化部分をもとに戻し、『強靱化』処理をしておく。
制御核は基本的にいじらなかった。
最後に、『ルゥカー』の許可を得て、ゴーレムの目で見たものを『オエステ2』にある『魔導投影窓』に映し出せるように改造した。
「これでよし」
再組み立てをして終了である。その間およそ20分。
仁Dを操縦している仁としても、『始祖』の目新しい技術はないかと期待していたのだが、残念ながらそういうものはなかったが。
「あと、『魔法障壁』対策に、ミスリル銀の棒を持っていかせよう」
『なるほど、魔法障壁を貫くように配置すれば、外と内で魔力的な繋がりができるわけですね』
「強化しておけば武器にも使えるからな」
『わかりました』
『ルゥカー』は仁Dの申し出を理解し、承認した。
『他にも武器をもたせようと思います』
と言って『ルゥカー』が3体に持たせた武器は、ショートソードとバックラーである。
ここでいう『バックラー』は、腕に取り付ける小型の盾だ。
円形で、表面に反発系の結界が発生させられるのだという。
ショートソードも、刃の表面にアダマンタイトがめっきしてあるため、切れ味が長持ちするということだった。
「これで終わりか?」
『はい』
「……一言いいか?」
『お伺いします』
仁Dが『ルゥカー』に言ったこととは……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20201114 修正
(誤) とい意見であった。
(正) という意見であった。




