73-45 慎重に、そして時には大胆に
『忍部隊』8体は、2体1組になって、フロアの探索を行っていた。
忍壱と組んでいるのは忍弐。
〈うむ……ここは倉庫……というより保管庫か?〉
〈そのようですね〉
珍しい、というほどでもないが、『通信の魔導具』『掃除の魔導具』『空調の魔導具』『浄水の魔導具』『滅菌の魔導具』などが棚に並べられていたのである。
出来はかなりいい。
また、製造年月日はそれほど古くなさそうである。およそ200年以内に作られたもののようだ。
〈うーん……興味深いが、取り急ぎ報告するほどではないか〉
〈そうですね〉
* * *
忍伍と陸もまた、1つの部屋を物色し、珍しいものを見つけていた。
〈これは……剣か〉
〈アダマンタイト……いや、マギ・アダマンタイトのようだな〉
〈向こうには鞭があるぞ〉
〈つまり、ここは武器庫というわけか〉
その武器庫には、他にも槍、メイス、棒、斧などが十数本ずつ保管されていた。
〈だが、目新しい武器はないようだ〉
〈だな〉
* * *
忍漆と捌もまた、発見をしていた。
〈これは……!〉
〈ゴーレムだな〉
戦闘用ゴーレムである。
〈……だが、停止してだいぶ経つのではないか?〉
〈うん、そうみたいだな〉
掃除はなされているようだが、薄っすらと埃が積もっていたり、金属部分の艶がなかったりと、長期間置かれていたことを思わせる外観であったのだ。
〈……旧型ということか?〉
〈その可能性はある〉
〈だが、危険性を測る物差しにはなるぞ〉
〈うむ、そうだな〉
そういうわけで漆と捌は内蔵魔素通信機を使い、他の面々に連絡をした。
〈どうした?〉
〈おお、これは!〉
すぐに全員……参と肆を除く8体が一堂に会した。
〈ここにあるのはおそらく旧型と思われますが、『ポーセ』側の戦力・技術力を測る物差しとして、詳細な調査をした方がいいと思ったので呼びました〉
〈うむ、漆と捌の言うとおりだ。手分けして解析を行っていこう〉
〈了解〉
〈私たちも手伝います〉
〈おお、参と肆ではないか〉
〈はい。『魔法障壁』内へ入るゴーレムがいたので便乗して、またこちらへ入れました〉
〈そうか。これでまた全員が揃ったわけだ。よし、調査をするぞ〉
思いがけず10体全員が揃った『忍部隊』は、旧型とはいえ、間違いなく『ポーセ』の持ち駒である戦闘用ゴーレムの解析を始めた。
〈身長は2.2メートル。体重はおよそ250キロ、人型〉
〈……骨格は軽銀、関節部はアダマンタイト。外装は鋼鉄と軽銀の複合装甲。内側にミスリルコーティングあり〉
〈筋肉組織は金属系〉
〈視覚センサーは2個。赤外線、紫外線にも対応〉
〈魔力反応炉の効率は80パーセントほど。ただし大型〉
〈……おっ、両肩と腰にも魔力反応炉があるぞ。小型だが〉
〈なるほど、両手両足の取付部にある『ミティアナイト』を使う際にこの魔力反応炉もアクティブになるのだな〉
次々に明らかになる戦闘用ゴーレムの仕様。
〈出力は……推定でランド隊の4分の1程度〉
〈魔法攻撃用と思われる端子が手の指先にあります。その数、合計8個〉
〈なるほど、母指を除く指先に1つずつか〉
〈足裏にスパイクはありません〉
〈すると、あの惨状を作り出したのはこの型ではないということだな〉
こうして、旧型戦闘用ゴーレムのスペックが明らかになった。
〈よし、このくらいにしておこう。……今度は伍と陸が『魔法障壁』の外に出て報告するように。同時に、見つけた武器の報告もな〉
〈はっ、了解です〉
〈……老君なら、このデータからいろいろと予測ができるはずだ〉
そして伍と陸は『魔法障壁』のある下のフロアに向かい、残る8体はさらに上のフロアを目指したのである。
* * *
〈うん? 上のフロアへ通じる階段はあったが、障壁が張られていないな〉
〈ここまで侵入する者がいるとは考えていないのでは?〉
〈……そうかもしれん。『始祖』は無駄を嫌うというからな〉
そして彼らは階段を上へと向かった。
次のフロアに出る、その手前で忍壱は玖と拾に指示を出す。
〈玖と拾はここで待機。我々になにかあった場合は速やかに撤退し、老君に報告せよ〉
〈了解です〉
こうした措置を行った後、6体の『忍部隊』は次のフロアに立ったのである。
〈ここは……〉
〈広いですね〉
これまでのフロアは、階段から出てすぐの場所は小部屋になっていたが、ここは大ホールといえるような広い部屋だったのだ。
〈さらに慎重に行くぞ〉
〈了解〉
そして6体は『不可視化』の結界をまとい、慎重に歩を進めていく。
〈……このホール内には何もめぼしいものがないのは一目瞭然だ。が、かといって中央を突っ切るのは危険過ぎる。壁伝いに右回りで向こうに見える出口へ向かうぞ〉
〈了解です〉
多少回り道になるわけだが、リスクを考えればこれがベターなルートである。
そんな危険回避策が功を奏し、『忍部隊』は何ごともなくホールを抜けることができたのである。
〈さて、いよいよ『ポーセ』の聖域に近づいたという気がするぞ〉
〈同感です〉
ホールを出た先は、真っ直ぐに伸びる金属製の通路となっており、所々に戦闘用ゴーレムが配備されているのが見えた。
〈……我々の『不可視化』がやつらのセンサーを欺けるかどうかだが〉
〈旧型の視覚センサーが赤外線にも対応していたから難しいでしょうね〉
〈とすると、新装備の出番だな〉
〈『転送装置』ですね〉
『転送装置』は、『北方民族』が使う『転移魔法』を再現した魔導機である。
今回装備しているものは、ドアを開けずに壁の向こう側へ行くためのものであるが、別に壁がなくても転移は可能だ。
〈ここから見える突き当り。その3メートル手前でどうだろう〉
忍壱は仲間に相談した。
〈いいと思います〉
〈戦闘用ゴーレムとも十分距離がありますし〉
〈それでは私と弐がまず転移する。そして安全と判断したら、残る全員も転移してこい〉
〈わかりました〉
〈よし、弐よ、行くぞ〉
〈はい〉
そして2体は消え、ほぼ同時に通路の向こう端に現れた。
〈成功だ。……そこの壁に窪みがある。そこなら全員が隠れられるだろう〉
〈では、呼びますか?〉
〈うむ〉
そして忍弐からの呼びかけで、参、肆、漆、捌の4体も転移してきたのである。
〈……この扉の向こうが怪しいな〉
果たして、彼らを待つものは何か……。
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