73-41 新たな展開が待つ、次のステップへ
『オエステ2』には今、『始祖』改め『紛い物』の8人(8体)と仁D、礼子、『職人』101がいる。
「それではまず、この基地の『統括管理魔導頭脳ルゥカー』に会ってもらおう」
「うむ、そうだな」
仁Dの提案に、スポークスマンの『ジェドエフ』が答えた。
そこで、転移魔法陣を設置した部屋から移動。
2つ隣の部屋が『統括管理魔導頭脳ルゥカー』のある場所だ。
『ようこそ、過去の『始祖』たち』
『ルゥカー』が一行を迎えた。
「おお、懐かしいな」
「久しぶりに見ましたね」
「昔と変わっていないな」
思い思いのセリフを口にする『紛い物』たち。
そう、『紛い物』たちは、この『オエステ2』建造時には存命で、おそらくはかなりの部分を手伝ったのだろうと仁たちは推測していたのだ。
そして懐かしむ声を上げたのは、『クフカエフ』『ルセネト』『ルサンク』の3名。
そこから、その3名が基地建造に特に関わっていたのだろうなと思った仁Dであった。
『……『クフカエフ』様、『ルセネト』様、『ルサンク』様、そして他の皆様方も、復活おめでとうございます』
「うむ、ありがとう」
『クフカエフ』が代表で返事をした。
『今、私は『ルゥカー』と名乗っております』
「そうか。『ルゥカー』、お前もジン君に整備をしてもらったのだな?」
『いえ、再建です』
「おお、そうだったか! お互い、いい人物に巡り合ったな」
『仰るとおりです』
親しげに言葉をかわす『ルゥカー』と『クフカエフ』を見て、やはり『主人』はマリッカで揺るがないのだなあ、と再認識した仁Dであった。
* * *
一方、蓬莱島の老君は、『保安施設ポーセ』について、情報を集めようとしていた。
仁は今『仁D』の操縦をしているので、ラインハルトやルイス、エルザ、ハンナらが相談相手になっている。
『大体の位置はわかっているので『覗き見望遠鏡』で探ろうとしたのですが、『魔法障壁』に阻まれて観察できませんでした』
「なるほど、そういう相手か」
ラインハルトが顔を顰めた。
「……『始祖』が作った、制限なしの自己進化型魔導頭脳……といったところか」
今度はルイスが、呟くように言う。
「かなり厄介な相手だと思うな」
『はい。ルイスさん、ラインハルトさん。仰るとおりでしょうね』
老君も、この相手……『ポーセ』は一筋縄ではいかない相手であると感じている。
おそらく、蓬莱島が全力を出せば、制圧・破壊はできる。だが、それは仁の望むところではないし、何よりも『敵と見たら殲滅する』という考え方は物騒過ぎる。
老君の倫理観は、基礎部分が仁によるもので、そこに経験や知識が加わってできあがっている。
そしてトータルとしては仁が持っているものと大差なく仕上がっているのだ。
例外は、仁のためにならないと老君が判断した事柄への対処……くらいであろうか。
閑話休題。
『ポーセ』もまた、遥かな過去に『始祖』が作り上げた、おそらくは超優秀な魔導頭脳である。
それを危険そうだから、という理由で破壊してしまうという選択肢は、今の老君には採れなかった。
『忍部隊を派遣することになりますね』
この機会に、一旦全員を蓬莱島へ呼び戻し、メンテナンスを行い、装備を再調整してから『ポーセ』調査のために送り出そうと考えた老君であった。
* * *
『統括管理魔導頭脳ルゥカー』の次は、『守護用魔導頭脳プローテ』との対面であった。
『ご無沙汰しております、『元のご主人様』。今現在、私はジン殿に再建してもらいまして、好調です』
「おお、お前もか。調子がよいなら何よりだ」
「うむ。何が起きていたかはジン君に聞いた。大変だったようだな」
『はい。ですがもう終わったことです。今は安定しております』
「そうみたいですね。喜ばしいことです」
こちらでも、和やかな対面が行われた。
「ジン君、『オエステ2』を救ってくれたようだな。感謝するぞ」
「まったくだ。1つ間違えば『オエステ3』のようになっていたに違いない」
『ジェドエフ』と『クフカエフ』が言った。
それによると、『オエステ3』が『ポーセ』によって壊滅させられたのは、1つには『旧ルゥカー』や『旧プローテ』のように暴走しかかっていたからかもしれない、ということだった。
「それは……ありえないことじゃあない、か……」
『オエステ1』の統括管理魔導頭脳、現『モースク』も、目の前にある『プローテ』も、先程対面した『ルゥカー』も、一言で言えば『おかしくなっていた』のだ。
『オエステ3』の統括管理魔導頭脳もおかしくなっていたとしても不思議ではない。
そういう意味では、仁たちは本当にいいタイミングで『オエステ1』と『オエステ2』を救ったといえる。
ただ、『オエステ3』は間に合わなかったわけだが……。
「いつか、『オエステ3』も復元したいなあ」
仁Dがそう呟くと、『ジェドエフ』も頷いた。
「ジン君がそう思ってくれるというのはありがたい。あそこも一応我々の次世代に縁のある場所だからな」
「……それには『ポーセ』をなんとかしないといけませんけどね」
「うむ…………」
『ポーセ』の話が出ると、『紛い物』たちはなぜか言葉を濁してしまうような気がするな、と仁Dは思った。
何かいいづらいこともしくはうしろめたいことがあるのかもしれない、と推測する仁Dであった。
* * *
その『ポーセ』調査に当たり、老君は『忍部隊』全員に新装備を渡していた。
『それは、『超小型空間遮断結界』です。熱線攻撃も通しません。どんな物理攻撃も無効化します』
空間の連続性を断ち切る結界なので、衝撃さえ伝わることはない。『忍部隊』の体格でも戦闘用ゴーレムの一撃を微動だにせず受け止められるのだ。
ただし欠点もある。
それは消費する『魔力素』が多いこと。
『忍部隊』という小さな範囲なのでなんとかなっている。それでも連続で展開できるのは3秒足らずだ。
『使い所を考えてください』
「ワカリマシタ」
『それからもう1つ。『短距離転移に特化した転送装置』と、『短距離透視に特化した覗き見望遠鏡』です』
これは、体格的にドアや扉の開閉をしづらい『忍部隊用』の装備である。
『短距離透視に特化した覗き見望遠鏡』でドアや扉、壁などの向こうを透視し、そこへ『短距離転移に特化した転送装置』で転移するわけだ。
略して『透視装置』と『短距離転移装置』。
『使いこなしてください』
「アリガトウゴザイマス」
こうして新装備を携えた『忍部隊』は、保安施設『ポーセ』を目指すのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
お知らせ:11月7日(土)早朝から8日(日)昼過ぎまで不在となります。
その間レスできませんのでご了承ください。
20201108 修正
(誤)「わかりました」
(正)「ワカリマシタ」
(誤)「ありがとうございます」
(正)「アリガトウゴザイマス」
忍部隊の音声をカタカナ表記に。




