73-40 自虐を込めて、その名を名乗る
仁Dが、その技術力を示すために作った『執事』自動人形。
「……できれば肩はもう少しなで肩に。肩幅も2センチ狭く」
「顔はもう少し面長がいいですね」
「わかりました。『変形』『変形』……これくらいですか?」
「お、おお、これでよい」
「あらためてこの目で見ますと凄いですね……」
完成した執事自動人形を眺め、3人の『元』『始祖』は感心するやら感動するやら。
「現代の技術者は凄いものだ」
* * *
そんな『始祖自動人形』たちの様子は、蓬莱島でもモニタされていた。
「……なんというか、普通の人?」
「くふ、ホントだね」
サキとエルザが顔を見合わせていた。
「うむ。……君たちが『始祖』をどういう人々かと想像していたのかは知らぬが、彼らとて人間。笑いもすれば泣きもする。聖人君子ではないから誤りもする」
唯一、『生きた始祖』を知っている『長老』ターレスが補足説明を行った。
『そうなのですね……』
老君もまた、この新たな情報を吸収していった。
『しかしあの様子では、本当に野望も何もないようですね』
「くふ、本当だね」
「ん、なんというか……ご隠居さん?」
エルザが言うように、3人の言動はご隠居さんに通じるものがあった。
「それも仕方あるまい。3000年以上思考しかできないような状態にあって、ようやく身体を得たのだからな」
「それでも、感覚器官が視覚と聴覚、それも不完全なものしかない状態で3000年……よく保ちましたねえ」
「はい、マリッカ様。おそらく孤独ではなかったからでしょう」
マリッカの呟きに『長老』ターレスが答えた。
「8人いたからこそ、なんとかなっただろうと吾は考えます」
「孤独ではなかった……それは大きいかも知れませんね」
* * *
「ところで」
『オエステ2』で3体の『始祖自動人形』の相手をしている仁Dが、改まって口を開いた。
「あなたたちを今後は何と呼べばいいのかな? ああ、個人名ではなく、総括というか……」
『始祖自動人形』では呼びづらいから、と説明した。
「ふむ……呼びづらいと何かまずいかな?」
「ええと、そうだな……呼びやすいということは、コミュニケーションを取りやすいということだから」
仁Dの答えに、3人(3体)とも納得したようだ。
「ふむ、一理あるな」
「そうね。そもそも呼びにくいということは、呼ばれる側でなく呼ぶ側の方が不便ですものね」
「考えてみよう」
そういうことになり、3人(3体)は相談を始めた。
そして。
「……よし。『紛い物』と名乗るとしよう」
「『紛い物』? それでいいのか?」
「構わん」
「……では、これからは8人を指して言う場合は『紛い物』でいいのか?」
「よい」
そういうことになった。
残りの5人については、戻ってから説明するということだが、拒否する可能性は低いということなので、仁Dとしては任せることにした。
「では……。『紛い物』はこれからどうするつもりだ?」
「そうだな……。できれば、ジン君に協力してもらい、この世界を堪能してみたいものだな」
「え……?」
なかなかに図々しい要望だな、と仁Dを操縦している仁は思った。
とはいえ、この世界で他に頼る当てもないのだから、わからなくもない。
仁たちも、貴重な情報を得られると思えば、それほど図々しい願いでもないのかもな……と、仁Dを操縦しながら仁は考えていた。
* * *
「ふふ、『始祖』らしいな」
蓬莱島では『長老』ターレスが苦笑していた。
「ターレスさん、『始祖』ってこういうものなんですか?」
「うむ。……相手の都合などあまり考慮せずに自分の希望を押し通すところはあったな」
「それってわがままなだけじゃ……」
マリッカは呆れている。
「うーん、人口が少なくて、隣人とのコミュニケーションも少ないような世界だとそうなるのかもね……」
「引きこもってたサキ姉が言うと説得力がある」
「ちょ、エルザも言うねえ」
「ごめんなさい」
「あはは、仲がいいなあ」
「あ、ライ兄」
惑星ヘールにいるはずのラインハルトがやって来た。
「『始祖』とのコンタクトだって言うからな。皆来たぞ」
「こんなチャンスにリアルタイムで参加しないでどうする、ってね」
「そうよねえ。興味深いわ」
「気になることがたくさんあるものね」
仁ファミリー勢揃いであった。
* * *
「さて、『オエステ2』を見て回ることもいいが、俺としては残りの5人にもこっちへ来てもらいたいと思うんだが」
「それは問題ない。この執事自動人形を起動し、向こうに置いておけば安心だ」
侍女自動人形もいるしな、と『ジェドエフ』は言った。
「私が行って説明してきましょう」
「うむ、『ルセネト』、頼む」
そういうわけで『ルセネト』が執事自動人形と共に一旦『メメンタス』の所へ戻り、残る5人に説明をしてくることになった。
* * *
『ルセネト』が『メメンタス』のある場所に戻り、残る5人の説明をしている様子は、蓬莱島でも見ることができたし、何よりその場には『職人』102から109や『忍部隊』の壱から伍もいるのだ。
『ルセネト』が自分たちを『紛い物』と名乗ることにしたと説明する様も、残る5人がそれを苦笑交じりに受け入れる様子も見ることができた。
そして新作の執事自動人形に『バスチアン』と名付けたことも知ることができている。
さらに、全員が『ルセネト』の説得に応じ、『オエステ2』へ行くことを承認する場面も確認することができた。
留守番は『侍女自動人形』の『ロボーテ』と『執事自動人形』の『バスチアン』。
『忍部隊』の3体と『職人』8体は共に『オエステ2』へと引き上げることになる。
残る蓬莱島勢は忍肆と伍。念の為にもうしばらくの間残ってもらうことになった。
* * *
そして、『始祖』改め『紛い物』8名が『オエステ2』に揃った。
「お初にお目にかかる、ジン君。私は『テプヘレス』だ」
「はじめまして、ね。『サフラー』よ」
「『フェルヘテ』だ。よろしくな」
「私は『ルサンク』。よろしく頼むわね」
「『ネフェル』です。素敵なオートマタの身体をありがとう」
「ジン・ニドーという。よろしく」
いよいよ『紛い物』たちとの話し合いが始まる。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20201106 修正
(誤)拒否する可用性は低いということなので、仁Dとしては任せることにした。
(正)拒否する可能性は低いということなので、仁Dとしては任せることにした。
(旧)なかなかに図々しい要望だな、と仁Dは思った。
(新)なかなかに図々しい要望だな、と仁Dを操縦している仁は思った。




