73-39 まず3人がお試し移動をすることに
『ジェドエフ』『クフカエフ』そして『ルセネト』の3人が『オエステ2』を訪問することとなった。
案内人は『職人』101。
「スミス101殿、よろしく頼む」
スポークスマンだった『ジェドエフ』が代表で『職人』101に挨拶を行った。
「こちらこそ」
返答した『職人』101は、まずルートについて確認する。
「これまでは、『オエステ2』から『オエステ3』、そしてこの施設、というルートで自動人形を運んできたわけだが、もっといいルートはあるのだろうか?」
実際には『転送機』を使い、蓬莱島からやって来ているのだが、そこまではまだ明かせない。
「うむ。そのルートしかないな」
「そうか、残念だ。……だが、今後のことを考えると、『オエステ2』と行き来できる転移魔法陣を設置した方がいいと思うのだが」
「確かにそうだ。……よろしい、この隣の部屋に設置しよう」
『メメンタス』の設置された部屋の隣には、空き部屋が3つほどあったので、その1つに転移魔法陣を刻んでいく。
これと同じものを『オエステ2』に刻めば、以後は直接行き来できるようになるわけだ。
ちなみに、当然ながらその部屋には『魔法障壁』は張られていない。
「これでいいだろう」
刻んだのは『職人』101。既にそうした技術・知識があることは知られているので、最も作業が早い彼が魔法陣を刻んだのである。
「うむ……早い、な。大したものだ」
「それほどでもない。……パラメータが間違っていないか、チェックしてくれるか?」
「いいとも。………………うむ…………大丈夫だな」
『始祖』全員でチェックしてくれたので安心であった。
「わかった。それではこうしよう。……まず、私が単独で帰る。向こうについたら、できるだけ早く転移魔法陣を設置して、こちらに戻ってくる。それなら移動も楽だろう」
「うむ、それで構わない」
「そうか。それではまた後で」
『職人』101はそう言い残して『メメンタス』のある部屋を出ていった。
『魔法障壁』の外へ出るや否や、内蔵魔素通信機を使い、大急ぎで老君に連絡。
『オエステ2』での受け入れ準備を進めておいてもらう。
そして自分は『転送装置』で地上へ出て、再度『転送装置』で『ペガサス2』へ。
搭載されている『転移門』で蓬莱島へ戻る、という手順を踏んだ。
所要時間はトータルで2分強。
その間に準備が進められていた。
まず、『オエステ2』では仁Dと礼子が待ち構えるのだが、そこで『自動人形』を作っていたと思わせるよう、1体分プラスアルファの素材を送り込んでおく。
マリッカDは、今回姿を見せない。
それから、当然ながら『転移魔法陣』を設置する部屋の選定だ。
これには『統括管理魔導頭脳ルゥカー』のある部屋の2つ隣にある倉庫を当てることとした。
蛇足ながら、自動人形の製作室はその隣……『ルゥカー』のある部屋のすぐ隣である。
「これでいいだろう。……老君、チェックをお願いします」
『職人』101は、『メメンタス』のところで描いたものと同じ転移魔法陣を描き、老君にチェックを頼んだ。
そして老君からも大丈夫というお墨付きをもらう。
「それでは、行ってきます」
「行って来い」
仁Dに見送られ、『職人』101は転移魔法陣に乗り、姿を消した。
そして1分ほど後に戻ってくる。今度は3体の『始祖自動人形』と一緒に。
「ようこそ、『オエステ2へ』」
出迎えた仁Dのことを、『職人』101が紹介する。
「この方が私の製作者様だ」
「ジン・ニドーという。『魔法工学師』を名乗っている」
「おお、君がそうか。私は『ジェドエフ』。こちらが『クフカエフ』、向こうが『ルセネト』だ」
「よろしくな」
「よろしくね」
簡単な挨拶を済ませると、まず『ジェドエフ』が申し出た。
「スミス101の言うことを信じないわけではないが、君がそれだけの技術を持っていて、『魔法工学師』だったか、その称号に相応しいということを見せてくれないか?」
「……いいですよ。では、こちらへ」
仁Dは隣の部屋へと誘った。
こういうことを予想していたわけではないが、隣の部屋には1体分プラスアルファの素材が用意してあるのだ。
「いらっしゃいませ」
そしてそこには礼子がいた。
「この子は?」
「はい、わたくしはお父さまに作っていただいた自動人形です。名前は礼子と申します」
「おお、そうなのか! ……素晴らしいできだな」
「可愛らしいですわね」
「それでも一応、腕前は見せてもらいたい」
『ジェドエフ』は素直に感心し、『ルセネト』は礼子を見て目を細め、『クフカエフ』はあくまで仁Dの腕前を見ることに拘った。
「もちろんですよ。……で、何を作ります?」
「……執事自動人形を。仕様は今から説明する」
『メメンタス』のところにいた侍女と執事、2体の自動人形。
侍女型の方は、最初の腕試しに作ってみせているので、今回は執事型を作ってみせろということになった。
「身長は172センチ、体重は67キロ。銀髪、黄色の目、外見年齢50歳……」
「ふむ、それで?」
既に9体作っている仁が仁Dを操縦しているので作業は速かった。
また、『始祖』ではなく『執事』のため、極端に細かい注文ではなかった。
およそ1時間で、仁Dは執事自動人形をほぼ完成させたのである。
「ううむ……これは……」
その速さに舌を巻く『始祖自動人形』の3人。
この機会に、ちょっとした疑問を解消しようと、仁Dが質問した。
「外見年齢だが、今までも含めて、あれでよかったのだろうか?」
『アルス人類の外見年齢』が、今現在と『始祖』がいた時代とでは異なるのではないかという疑問からである。
今は医療体制も整っており、食生活も向上しているはずなので、黎明期のアルス人類より平均寿命も伸びているはずなのだ。
つまり『始祖』が言う『50歳』と、仁たちが想像する『50歳』では、『老け方』が大きく異なるのではないかという懸念があり、それを質問したというわけである。
「うむ、特に問題はないな。簡単な調整で済む範囲だ」
「そうか。それならいい」
どうやら外見上の差異は問題にならない程度らしいと仁Dは理解した。
そして仕上げに取り掛かったのである。
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