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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
73 メメンタス調査篇
2772/4398

73-38 彼らは危険ではないという、その理由

 『職人(スミス)』101と『始祖(オリジン)』との会話はまだ続いている。

 一見雑談のようであるが、仁たちにとって貴重な情報が得られているのだ。

 『始祖(オリジン)』側のスポークスマンは『ジェドエフ』に戻った。


「そういえば、『パンドール大陸』に移住したという2人のその後はわかっているのか?」

「我らが存命だったときまではな。『メメンタス』に意識を移してからは没交渉だ」

「そういうことか。そうすると、他の派閥のその後も知らないわけだな?」

「左様。まったく知らぬな」


 『メメンタス』という大義名分を得て、究極の引きこもりになったみたいだな……と『職人(スミス)』101は感じていた。


「外部の情報はどうやって得ていたのだ?」

「1つには、通信だな。君が今『製作者殿』と通信しているアンテナを使い、飛び交っている通信信号を傍受し、再構成した」

「それでは断片的な情報しか得られないだろう?」

「左様。断片的どころかほとんど得られなかったな」


 そもそも魔力波での通信など、ほとんどなされていないから当然である。

 蓬莱島では、ユニーとの通信など、重要なものは収束波で行っているし、暗号化もされている。

 他愛のない会話から得られる世界情勢など無きに等しいだろうと思われた。


(あ、だが『アヴァロン』と公国間の通信はそうでもないかもしれないな)


 とはいえアンテナの位置がラシール大陸の西なので、どこまで傍受できるかは怪しいところである。


「それから、一応『情報収集用ゴーレム』を地上に派遣している」

「なるほど」


 よっぽどそれのほうが有効だろう……と『職人(スミス)』101は思った。

 が、『どこへ』派遣したのか、が重要であることに気が付く。

 それでそのことを尋ねてみると、


「派遣した場所? ラシール大陸全土だが」


 それでは、情報も不十分になるわけだ、と『職人(スミス)』101は内心で溜息をついた。実際には吐けないので。


*   *   *


 蓬莱島でも、仁たちがやや呆れた顔をしている。


「情報をあまり重視していないな……」

御主人様(マイロード)、引きこもるのに情報はそれほど必要ではありませんからね』

「それにしてもな……」


 そこへ『長老』ターレスが助言を一言。


「ジン殿、生身の頃ならいざ知らず、『メメンタス』となったことも手伝い、外部への興味を失っていたのではないかな?」


 そして『身体ボディ』を得た今、再び外部の情報に興味を持ち始めたのではないか、というのだ。


御主人様(マイロード)、そういうこともあるかもしれませんね』

「そうだなあ……」

「ジン殿、『始祖(オリジン)』の自動人形(オートマタ)を何人か、希望者を募って外に連れ出してみたらどうだろうか?」


 『長老』ターレスが提案を出してきた。


「あ、それいいかもね? ジンが行きにくいなら、向こうから来てもらえばいいんだよ」

「サキ姉の言うとおり。『オエステ1』か『オエステ2』に招待すればいい」

「その手があったか……!」


 それなら仁DやマリッカDへの危険はほとんどないとみていい。

 なにしろ『メメンタス』だった『始祖(オリジン)』の自動人形(オートマタ)は人間並みの性能しかないのだから。


『ですが御主人様(マイロード)、1つだけ懸念事項があります』


 思慮深い老君からの発言である。仁は身構えた。


「うん、どうした?」

『はい。……『始祖(オリジン)』がその『身体ボディ』を得て、再び遺跡を把握し、覇権を求めないか、ということです』

「それか……」


 例えば、今現在マリッカに忠誠を誓っている各地の施設が、真の『主人』である『始祖(オリジン)』に鞍替えしないかという懸念である。


「俺は大丈夫だと思っているんだよ」

『それは、いかなる理由によるものですか?』

「まず、魔力パターンだな」


 仁が『職人(スミス)』たちを経由して知ったのだが、どう解釈しようとしても、人間のモノとは似ても似つかぬモノだったのである。


 本来なら、『魔導頭脳の製作者』の魔力パターンとなるはずなのだが、『メメンタス』のそれは人間のモノとは思えなかった、と仁は言った。

 それは、数名が各部を手掛けた、つまり合作となっているため、数名分の魔力パターンが混じり合っているのではないか、と推測される。

 いずれにせよ、『メメンタス』の魔力パターンは『始祖(オリジン)』のモノとは大きくかけ離れていることは間違いなかった。

 それが、仁が大丈夫という理由である。


「彼らは、極言すれば『メメンタス』のユニットだ。つまり彼らの魔力パターンは『メメンタス』と同じなんだ」

『なるほど、それゆえに『魔導頭脳』が『主人』として認めることはないであろう、と』

「そういうことだな。……それに、身近なところに証明してくれる人もいるし」

『ターレスさんですね』


 そのやり取りを聞いていた『長老』ターレスが口を開いた。


「ジン殿の言うとおりだ。確かに外見は『始祖(オリジン)』そのもの。われも懐かしく思った。だが、それだけだ」

『それならよろしいのです』

「老君殿、大丈夫だ。自動人形(オートマタ)自動人形(オートマタ)。『分身人形(ドッペル)』とは異なるし、魔導頭脳が判断するのは『魔力パターン』であって容姿ではない」


 仁の説明と『長老』ターレスの保証により、老君の懸念も払拭されたのである。


「それじゃあ、あらためて『始祖(オリジン)』の自動人形(オートマタ)を外に連れ出すことを考えようか」

『わかりました』


*   *   *


 そのアイデアはすぐ『職人(スミス)』101に伝えられた。


「『ジェドエフ』、1つ提案がある」

「何かな?」

「私の製作者様は今『オエステ2』にいる。こちらに来ることは躊躇ためらわれるが、そちらが出向くなら……」

「おお、なるほど!」

「どうかな?」

「行こう」


 『ジェドエフ』は即決した。


「私は行くぞ。……お前たちも何人か来るだろう?」


 後のセリフは『始祖(オリジン)』の仲間に向けたものだ。


「うむ。ならば私は行こう」

「私も」

「大勢で行くのも、こちらのリスクがあるからな。3人で行って来い」

「それがいいか。……後で我々も外に出てみるからな!」


 そんなやり取りが交わされ、『ジェドエフ』『クフカエフ』そして『ルセネト』の3名が『オエステ2』を訪れることになったのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20201104 修正

(誤)例えば、今現在マリッカに忠誠を使っている各地の施設が

(正)例えば、今現在マリッカに忠誠を誓っている各地の施設が

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― 新着の感想 ―
[一言] ジェドエフがリーダー格だったんですかね? 或いは外部の情報を下手に取得すれば、余計に辛くなるから敢えて人との接触を減らしたのかもしれませんね 私達だって引き篭もっている人でも本当の意味で一切…
[良い点] 今回オエステ2に来るのは行動派で、残りの留守番組はヒッキーかw 仁「言い方w」 礼「おかしな真似をすれば、全員強制連行でお仕置きする事も出来ますねぇ…。」 仁「礼子、ステイ。」 [一言] …
[一言] 何千年も身動き取れない状態だったのにすっかり慣れたのか、案外あんま動きませんね 俺だったら、まず好きな物食って、娯楽を一通り消化してからナマステ2に行きますけど ジ「ナマステちゃう」あとお…
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