表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
73 メメンタス調査篇
2771/4398

73-37 そして彼らは過去と現在を知る

 『職人(スミス)』101は、老君からの助言に基づいてアルス人類の説明を始めた。


「まず初めに断っておく。アルス人類は、君たち『始祖(オリジン)』に比べ、かなり好戦的だ」

「……うむ、薄々勘付いてはいる。先住民がそういう気質だったからな」

「それなら話は早い。……そのため、750年ほど前に『魔導大戦』という大きな戦争があり、文明が衰退したことも最初に言っておく」

「『魔導大戦』か。……外界の情報を集めていたときに聞いたような気はするな」

「そうか。……順序を無視するが、今のうちに説明しておこう。……『魔導大戦』は、『独立派』の子孫と『融合派』の子孫が起こしたものだ」

「何と……!」


 自分たちの同胞の子孫同士が戦争を起こしたという事実は、平和を好む『第1世代』には衝撃的だったようだ。

 そこで、『職人(スミス)』101は大急ぎでフォローを行う。


「いや、裏で扇動した存在がいたのだがな」

「それは?」

負の人形(ネガドール)という。不完全な人造人間(ホムンクルス)だ。それが『操縦針(アグッハ)』を使って『独立派』の子孫を支配し、戦争へと導いたのだ」

「なんと、そんな過去が……」

「この『魔導大戦』はアルス人類の歴史を語る上で重要なエポックだ」

「うむ、そうだろうな」

「その理由はもう1つあって、『魔導大戦』の最終局面で『魔素暴走エーテル・スタンピード』が使われている」

「何だと!?」


 禁忌と言われる『魔素暴走エーテル・スタンピード』が使われたと知って、驚きを隠せない様子の『ジェドエフ』。

 そして、それを行ったのが同胞の子孫だという事実もまた、彼を打ちのめしていた。

 『職人(スミス)』101は更に続けてフォローのための説明を行った。


「だからそれは、負の人形(ネガドール)という、不完全な人造人間(ホムンクルス)が扇動したからなのだ」

「……とはいっても、その技術は、元を正せば我々のものだ……」


 打ちひしがれた『ジェドエフ』を見て、ああやはり『始祖(オリジン)』は争いごとを好まない種族なのだなあという認識を新たにした『職人(スミス)』101であった。


「……済まぬな、スミス101。代わって私が話を聞こう」


 『ジェドエフ』が落ち込んでしまったのを見かねた『テプヘレス』が名乗りを上げた。


「わかった。説明を続けさせてもらう。……その『魔素暴走エーテル・スタンピード』のせいで、このアルス上の自由魔力素(エーテル)濃度は激減したのだ」

「なるほど、そうだったか」


 ある時から急に自由魔力素(エーテル)濃度が下降したのは気付いていたが、その原因まではわからなかった、と『テプヘレス』は言った。


「調べようとはしなかったのか?」

「……思ったことは思ったが、我らは基本的に他の大陸に興味を持たなかったことと、その当時既に我々自身が切迫した状況になりつつあったからな」

「そうだったのか。……続けさせてもらう」


 『職人(スミス)』101は説明を継続する。


「その『魔素暴走エーテル・スタンピード』のせいで、ローレン大陸に住む『融合派』の子孫は……ああ、もちろんゴンドア大陸に住む『独立派』の子孫もだが……その人口を激減させてしまった」

「うむ、必然的にそうなるだろうな」


 『魔素暴走エーテル・スタンピード』についてよく知っているが故に、その結果が住民にどんな影響を及ぼすかも理解している『始祖(オリジン)』なのである。


「魔導士は文化の担い手でもあったから、その時点で人類は衰退した。そして時間を掛けて少しずつ復興してきたのだ」

「なるほど。アルス人類の歴史の中で重要なできごとを先に説明してくれたわけだな。しかも、その事件には我々『始祖(オリジン)』も無関係ではなかったということか」

「そういうことだ。わかってもらえてほっとした」


 『職人(スミス)』101は、そこから改めてアルス人類の歴史を説明し始めた。

 といっても、まだこの時点では『魔法工学師マギクラフト・マイスターアドリアナ・バルボラ・ツェツィ』や『賢者(マグス)シュウキ・ツェツィ』の名前は出さない。


 古代ディナール王国と、魔導大戦後の小群国、それに北方民族やミツホ、フソーの説明に留めたのである。

 

「なるほど、そのような道を歩んできたのか」

「そうなのだ。そして近年……といってもここ300年くらいのことになるが、ローレン大陸の西外れ、ラシール大陸の北東にあたる地域に『四公国』が成立した」

「ほう、なるほどな。……大体のことは理解した。感謝する」

「参考になれば幸いだ」


 本当に簡単な説明であったが、『始祖(オリジン)』たちは満足したようだ。

 既にアルス人類に干渉するつもりはないのだろうな、と『職人(スミス)』101は思っていた。


「現状についての認識ができたことは喜ばしい。……『侵略派』などと自称したこともあったが、この惑星の上にそれだけの文明が築かれているのなら、最早我々の出る幕はないな」


 少し寂しそうなその言い方に引っかかりを覚え、『職人(スミス)』101はその真意を尋ねてみたくなった。


「それは……このまま、この拠点に引きこもるということか?」

「まあ、そうなるかな。もっとも、『身体ボディ』を得た以上、多少外の世界を見て回るくらいはするであろうが」


 最早アルス人類に干渉する気はない、と断言する『テプへレス』。

 そしてそれに続き、他の7人も同意を示したのであった。


 それを聞いた『職人(スミス)』101は、好機と見て『ヘール』のことを聞いてみることにした。


「……ならば『ヘール』に帰る、という選択肢もあるのではないか?」

「ふむ、なるほど。……『ヘール』へ、か。それも有りだな」

「左様。『種の存続』に関して、我々にできることはもうないのだから」


 気を取り直したらしい『ジェドエフ』も会話に加わった。


「帰っても、我々の知る『ヘール』はもうないのだがな」

「うむ、……だが、それはそれで仕方がない、5000年が経っているのだから」

「この身体でなら、『ヘール』で過ごすのも悪くないのではなくて?」

「そうよな。帰ることも視野に入れてもよいかもしれぬ」


 どうやらこの8人には、『ヘールに帰る』ことに対して忌避感や嫌悪感はないようだ、と『職人(スミス)』101は感じた。

 同時にそれは蓬莱島にいる仁たちにも伝わっている。


*   *   *


「老君、どうやら彼らは『ヘール』に帰ることを嫌がりそうもないな?」

『はい、御主人様(マイロード)。これは朗報ですね』


 もしも彼らが『ヘール再開発』に協力してくれるなら、かつてのヘールの再現ができるかもしれない。

 また、再現を望まないとしても、このアルスにいられるよりもヘールで隠遁していてもらう方がより安心である。


「でもまあ、今はまだ『ヘール』に行けることは伏せておくかな」

『それがいいでしょうね。少なくとも御主人様(マイロード)分身人形(ドッペル)が彼らと相対あいたいするまでは』

「それはそうか」

『もう少し、『ポーセ』の情報もほしいですね』

「うん。『職人(スミス)』101にはこのまま会話を続けてもらおう」


 そういうことになったのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20201103 修正

(誤)「この『魔導大戦』じはアルス人類の歴史を語る上で重要なエポックだ」

(正)「この『魔導大戦』はアルス人類の歴史を語る上で重要なエポックだ」

(誤)「この身体でなら、『ヘール』ですごるのも悪くないのではなくて?」

(正)「この身体でなら、『ヘール』で過ごすのも悪くないのではなくて?」

(誤)「そうよな。帰ることも視野に入れてもよいかも入れぬ」

(正)「そうよな。帰ることも視野に入れてもよいかもしれぬ」

 orz


(旧)ラシール大陸のすぐ東にあたる地域に『四公国』が成立した」

(新)ラシール大陸の北東にあたる地域に『四公国』が成立した」

(旧)それが『操縦針(アグッハ)』も使って『独立派』の子孫を支配し、戦争へと導いたのだ」

(新)それが『操縦針(アグッハ)』を使って『独立派』の子孫を支配し、戦争へと導いたのだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >ああやはり『始祖』は争いごとを好まない種族なのだなあ 仁「その割には、対人用だけとも思えない戦力は有しているんだよなあ」 ラ「……その発言、ブーメランだって分かって言ってる?」 実際、サ…
[良い点] オートマタとはいえ、ボディを得た途端一気に友好的にw しかも、反省までできるなんてw [一言] 振「オイ、どうすんだよ?!最低のお仕置きを用意してたのに…俺らじゃなくて、ステルスメンバーだ…
[一言] 年を取ると生まれ故郷に戻りたくなる人は多いですから彼らも同じなのかもしれません いずれにせよ、自分達の失敗作が大変な事態を引き起こした事や、その結果にショックを受けたのはジェドエフだけではな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ