73-36 いつの世にも、会話というコミュニケーションは有効なようだ
身体を得た『始祖』たち。その目的や行動原理などを少しでも知るため、会話を試みることになった。
蓬莱島側のスポークスマンは『忍壱』から代わって『職人』101。
「これからは私が代表として話をしたい」
「うむ、わかった」
『始祖』側はそのまま『ジェドエフ』である。
「それでは、少し雑談をしたいが、構わないか?」
「ああ、問題ないぞ」
老君が予想していたことだが、『始祖』たちは自分たち以外の者との会話に飢えているので、よほどのことがない限り話を拒むことはないということだったが、そのとおりのようだ。
「私たちの製作者様が気になさっていることなのだが、廃棄された自動人形に使われている生体素材の元は何なのだ?」
「なるほど。クリエイターとしては気になるのだな。……あれは、『人造人間』に使う素材で、人工培養されたものだ」
「そうだったのか」
「おや? 『人造人間』と聞いても驚かないようだな?」
むしろ『ジェドエフ』の方が若干驚いていた。
「それはそうだ。製作者様の知り合いに『人造人間』がいるからな」
「なんと! そうだったのか!!」
ますますその『製作者』(つまり仁)に興味ができた、と言う『ジェドエフ』である。
「いずれ安全が確認されたらだな。……製作者様も君たちと会うのを楽しみしている」
「そうであるか。わかった」
「もう1つ聞きたい。『オエステ3』の鉱夫ゴーレムの数がやけに少ないように感じたのだが、理由を知っているか?」
「知らぬ。だが、おそらくは『ポーセ』が何らかの目的で持ち去ったのだろう」
「そうか。……ここの地下には鉱山はないのか?」
「ない。3000年ほど前に閉山し、埋め戻してしまった」
「なるほど」
「他には質問はないか? 君との会話はなかなか楽しい」
「それは光栄だな。……そうだな……『次世代』……我々は『第2世代』と呼んでいるが……どのような者たちだったのか、聞いてもいいか?」
「おお、構わないぞ。なるほど、そうすると我々が『第1世代』というわけだな。確かに君たちから見ればそういえるからな」
『ジェドエフ』は楽しげに笑った。
「『第2世代』は、我々の母星である『ヘール』を知らない。そこでの生活も知らない。ゆえに我々の禁忌を理解せず、また、種族維持のための努力も理解してはくれなかった」
『第1世代』が必死の思いで『ヘール』を後にし、ここ『アルス』を改造して住めるようにした、その努力を理解してくれなかったのだという。
「だが、それはそれで仕方のないことなのだろうな。何をどうしても、我々という種は滅びる運命にあったのだろう」
「いや、そうとも限らないぞ?」
「何?」
「君たちは『侵略派』であり、この惑星に対し文化的に侵略してきたかもしれない。だが、『穏健派』の人たちもいたではないか」
「ほうほう、そこまで知っているとはな。これだから君たちとの会話は楽しいのだ。……それで『穏健派』がどうしたというのだ?」
「……その中の『融合派』は先住民と一つになって現アルス人類となっている。『独立派』は、若干の血を交えながらも細々とではあるが今にその血を伝えている」
「そうか……! それはいいことを聞いた」
こうした情報に関して、元『メメンタス』だった8人は非常に疎いようだ。
それというのも、『メメンタス』となって1000年を過ぎたあたりから身体がないストレスから非常に精神的に不安定になり、外部の情報など知る気にもならなかったのだという、
「自動人形を作っては、気に入らず廃棄して……の繰り返しで年月はあっという間に過ぎていったようだ」
「そういうものか」
「そういうものであるよ」
ここで『職人』101は、第一の冒険をしてみることにした。惑星ヘールの話題を振ったのである。
「……気を悪くしないで欲しいが……君たちは母星である『ヘール』に帰りたくはないのか?」
「帰りたくないといえば嘘になる……が、帰る気はない」
「なぜだ?」
「母星を捨てる選択をしたのは我々だ。今更懐かしいからといって帰れるものか」
「拘りか?」
「……ちっぽけな矜持だ」
「そうか」
これで、ヘールの話題を出すこと自体は問題ではないことがわかった。
そこで『職人』101は、もう少し突っ込んだ質問をしてみることにする。
「資源がなくなったから移住を選んだと聞いているが」
「それはそのとおりだ。だが、もう1つ理由がある」
「それは?」
「当時の学説だ。我々という種族は、既に限界を迎えており、現状では滅亡する未来しかないということだった」
それが正しいのか正しくないのか、検証することはできない。だが、当時の『始祖』たちに、その説は素直に受け入れられてしまったのだった。
「そんな、種としての行き止まりを打開するためにはいくつかの方法が提唱されていた」
「それは?」
「それこそが移住を決意させた原動力だ。……1つは、環境を変えることによる新たな刺激が種を存続させるという学説」
「他にもあるのか?」
「うむ。2つめは混血だ。若い……歴史が浅いという意味だ……種族の血を取り入れるという方法だよ」
その2つめを最も実践したのが現アルス人類となった『融合派』である。
1つめについても、『北方民族』が、多少先住民の血を取り入れてではあるが、今現在も存続しているということで有効だったことが証明されたことになる。
「当時、確かに資源の入手方法はあった。内惑星であるジパートの衛星を運んでくる、などという計画もあったほどだ」
だが、結局は種族の維持を考え、移住することになったのだという。
そしてわずかに残った『残留派』。
その最後の一人が『チコ』だった。
彼らはついに、再びの繁栄を手にすることなく滅びていったのである。
「なるほどな。そういう意味では『融合派』の子孫が最も栄えているということになるか」
と『職人』101が納得すれば、『ジェドエフ』は寂しげに笑った。
「そうらしいな。……スミス101よ、我らの子孫であるアルス人類について、話してはくれないか?」
「いいだろう。聞いてばかりだったからな。説明しよう」
「おお、楽しみだ」
『職人』101は、秘密裏に老君と連絡を取り、どのように説明するのが望ましいか、教示してもらう。
それに基づいて説明をする『職人』101であった。
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