73-35 身体を得た彼らの望みはいかなるものか
結局仁は、『始祖』8人分の自動人形を作り上げた。
『サフラー』女性。身長は155.4センチ、体重は44.1キロ。外見は60歳相当。
『ネフェル』女性。身長は159.1センチ、体重は48.7キロ。外見は45歳相当。
『ルサンク』女性。身長は152.4センチ、体重は43.3キロ。外見は40歳相当。
そして最後が『ジェドエフ』男性。身長は174.5センチ、体重は62.6キロ。55歳相当。
となる。
ついでに、既に作った『始祖』のものも併記すると、
『クフカエフ』男性。身長172.4センチ、体重は67.8キロ。外見は50歳相当。
『フェルヘテ』男性。身長は178.3センチ、体重は72.9キロ。外見は35歳相当。
『ルセネト』女性。身長は160センチ、体重は48キロ。外見は30歳相当。
『テプヘレス』男性。身長は169.6センチ、体重は52キロ。外見は75歳相当。
となっている。
『オエステ2』の碑にはない名については、おそらく『オエステ3』に同じような場所があって、そこの碑に刻まれていた名なのではないか、と老君は想像している。
とにかく、『メメンタス』を構成していると思われる8人の『始祖』、その『自我』は全て自動人形に移し替えられた。
『メメンタス』は、今は単なる魔導頭脳になっている……らしい。
忍壱は声帯モードではなく、スピーカーモードを使った音声で質問した。
なぜなら、『メメンタス』から独立して自動人形に『自我』を移してしまった以上、『始祖』らは魔力波での通信ができないからである。
そのため忍壱も、声帯モードでの音声は甲高くで会話には向かないため、スピーカーモード……発声の魔導具を使った会話に切り替えざるを得なかった。
「うむ、声の具合もいいな。忍壱、君の製作者には感謝しているよ」
「気に入ってもらえてよかった。……ところで、もう『メメンタス』は機能していないのか?」
「していないわけではない。我々というユニットがなくなっただけで、中心となるメインユニットは機能しているからな」
「……ちょっと待ってくれ。今、『なくなった』と言ったのか?」
「言った。あのタンクの中には、もう我々の自我はない。だから単なる魔導頭脳、と言ったのだ。」
単に複写したのなら『メメンタス』内部に『自我』が残っていてもおかしくはない。
なのに『移し替えられた』『なくなった』という表現をしたことを疑問に思ったので、忍壱を通じて質問した仁たちなのである。
「どういうことなのか教えてもらえるか?」
《それは簡単だ。複写後、元のデータを消しているのだ》
〈なんだって……!?〉
* * *
忍壱が漏らした声は、蓬莱島の仁たちの心の声でもあった。
「なんでわざわざそんなことを……」
バックアップになりうるデータを消去してしまうという考え方が理解できなかったのだ。
『御主人様、そこが『自我』と呼ぶ所以なのかもしれません』
「どういうことだ?」
『はい。『自我』が、その呼称どおりでしたら2つあるのはおかしいでしょう』
「そりゃあ、な」
『ですので『始祖』はあえて……コピー元を消すというリスクを採ったのではないでしょうか』
「そのあたりは理解はできても共感はできないな」
『そうですね……』
「ジン兄、消すといっても、完全消去じゃない可能性は、ないの?」
エルザが意見を述べた。
「あ、そうか」
コンピューターの情報記録装置であるハードディスクなどでは、書き込まれたデータ(0/1)を全て消す(0で埋め尽くす、あるいは1で埋め尽くす)のではなく、そのデータの位置情報だけを消す方法を取ることが多い。
なので、そのようなケースならば、特殊なツールでこの位置情報のある場所を検出し、修正してやることで消えたと思われたデータを復活させることができるわけだ。
『いえ、エルザ様。『始祖』ですので、やるとなったら徹底しているのでは』
「ん……そうかも」
それについては、機会があったら聞いてみたいなと思った仁たちであった。
* * *
「複写が失敗したらどうするんだ?」
「だから複写後、失敗していないことを確認してから消すのだ」
「むう……」
なんとなく釈然としないが、この件をこれ以上話し合うのも時間の無駄なので、忍壱は話題を変えることにした。
「……そうすると、『メメンタス』の構造は……」
「想像できるのか?」
「……うむ。『エーテノール』のような、自由魔力素を大量に含み、魔力伝導性のよい液体の中に魔導頭脳に相当する魔導機が浮かんでいる……のを想像した」
「ほほう……当たらずといえども遠からず、だな」
だが、実際はどうなっているかについては教えようとしない『ジェドエフ』であった。
当面は彼、『ジェドエフ』がスポークスマンを務めるらしい。
「さて、身体を得たからには何かやりたいことがあるのだろう?」
「……そうだな。ところで、君の製作者殿には会えないのだろうか?」
「それは、『ポーセ』の件が片付かないと難しいかもしれないな」
「……むう、確かにそうか……」
『ジェドエフ』は考え込む。
「こちらから何か働きかけることはできないのか?」
忍壱が質問したが、『ジェドエフ』は首を横に振った。
「やめた方がいい。『眠った野獣を起こす』ことになりかねん」
『藪をつついて蛇を出す』『寝た子を起こす』などと同じような言い回しらしい、と忍壱は思った。
そして蓬莱島の仁も。
* * *
「うーん……『始祖』……の『意思』? 『遺志』? ……と直接話をしてみたいけど、『ポーセ』の件がはっきりしないとなあ……」
『はい、御主人様。そもそも彼らは、身体を得たことで半ば以上満足してしまったようにも見えます』
「確かにな」
『とはいえ、『メメンタス』の『中』にいた時は非常に不安定になっていた者もいたはずですが、身体を得たためか皆落ち着いていますね』
「みたいだな……」
「ジン兄、あの人たち、ヘールが今どうなっているか、話したらどうなると思う?」
「え?」
エルザが思いがけない発言をしてきた。
ヘールを後にし、アルスに新天地を求めてきた当の本人たち。
いま、そのヘールを再開発していると聞いたらどうなるだろうか……。
それに関しては、老君がとりあえずの結論を出した。
『御主人様、エルザ様、今すぐはやめておいたほうがよろしいかと存じます』
というのも、ある意味彼らが『捨てて』きたヘールを、仁たちが再開発していると知ったら、過敏な反応をする可能性があるというのだ。
『ですので、雑談の中にヘールの話題を混ぜてその反応を見てからにしたほうがよろしいかと』
「なるほどなあ……」
「ん、わかった、助言、ありがとう」
『どういたしまして』
こういうわけで、仁はもう少し会話を行って様子を見ることにしたのである。
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本日11月1日(日)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
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20201101 修正
(誤)「ジン兄,あの人たち、ヘールが今どうなっているか、話したらどうなると思う?」
(正)「ジン兄、あの人たち、ヘールが今どうなっているか、話したらどうなると思う?」




