73-34 種族が異なると考え方も異なるようで
忍壱は『メメンタス=ジェドエフ』に礼を言った。
〈よくわかった。感謝する。……あと一点、いいだろうか?〉
《何だ?》
〈……その保安措置『ポーセ』の武装はそれだけなのか?〉
《なるほど、知っておきたいわけだな。いいだろう、説明しよう》
〈頼む〉
思った以上に『メメンタス=ジェドエフ』が友好的なので、忍壱はほっとした。
(これもご主人さまの技術のおかげですね)
そして『メメンタス=ジェドエフ』の説明に耳を傾ける。
《1つは電撃だ。高電圧の電撃を浴びせ、ゴーレムなら魔導神経線を焼き切る》
〈ほう〉
《もう1つ、物理攻撃として短い矢を多数打ち出す『魔導連弩』がある》
〈なるほど〉
《いま1つは剣だ。近距離戦闘用ということになる》
〈ふむ、つまり近距離から遠距離、物理・魔法攻撃と、あらゆる戦闘に対応しているということだな〉
格闘、剣、鞭、電撃、熱線、連弩。
オールマイティーな戦闘ゴーレムということになる。
《しかも、今説明したのは過去に我々が備え付けたものだ。今現在は独自開発したものがあるという可能性は考慮しておいたほうがいいだろう》
〈わかった〉
自己開発ができる魔導頭脳ということで、新兵器を開発していてもおかしくはない。
《……以上だ。まだ何か聞きたいことはあるか》
〔それなら、私からいいだろうか?〕
職人101が声を上げた。
《うむ、言ってくれ》
〔その『ポーセ』はどこにある?〕
《言っていなかったか?》
〔聞いていない〕
《そうか。……この施設の最上階だ》
〔……は?〕
とんでもない情報が出てきてしまった。
《ここはこの施設の最も深い場所……鉱山関連を除いて、だがな。そして保安施設『ポーセ』は最上階に設置されているのだ》
〈うーん……〉
〔そういうことなのか……〕
まだ『メメンタス=ジェドエフ』の話は続く。
《そもそも『ポーセ』が誤動作を起こすなどということは想定外であったからな》
〈だったらなんで、誤動作する前に気が付かなかったのだ?〉
遠くに設置されていたならば仕方がないとも言えるが、同じ施設内にあったのなら、日々のメンテナンスを通じて不具合を早期検出できただろうに、と思う忍壱である。
《……自分たちのことで精一杯だったのだ》
『メメンタス=ジェドエフ』が言うには、1000年を過ぎると、身体のない苦痛がさらに増して、精神状態に異常をきたす者もいたという。
そこで自動人形を作り、一時的に『自我』を移してみたのだが、今ひとつしっくりとせず、精神状態の改善には至らなかったという。
《それでも一時的とはいえ、ストレスの解消にはなるので、交代で自動人形に『自我』を移していたのだが、どうにもその自動人形の性能が悪くてな》
ストレス解消どころか、かえってストレスが溜まる面もあったということだ。
要するに、『思いどおりにならない身体』のために、ストレスを感じてしまったということである。
《ゆえに、今回作ってもらった自動人形の素晴らしさには脱帽だ》
視覚、聴覚だけでなく嗅覚、味覚、触覚まで備えた自動人形は初めてだ、と『メメンタス=ジェドエフ』は言った。
〈ええと、『ポーセ』の話からずれてきているようだが〉
《おお、済まぬ。話を戻そう》
『メメンタス=ジェドエフ』は再び『ポーセ』の説明を始めた。
といっても、彼ら『メメンタス』と『ポーセ』がいかに没交渉だったか、の言い訳めいた説明になってしまっていたが。
元々、独立した施設として建造したこともあり、『メメンタス』側から何の連絡がなくとも、『ポーセ』は意に介さなかったのだろうということだった。
だが、次世代たち……つまり『第2世代』の基地を始めとした各施設は問題なく稼働し、『ポーセ』の出番はなかった。
そしてさらに年月は流れ、今から500年ほど前になると、『メメンタス』を構成する8人分の『自我』は非常に不安定になっていた。
本来ならば8つの魔導頭脳が協力し合うネットワークが構成されているはずなのだが、いつしか存在しなくなっていた。
〈そうすると、過去500年の間に、綻びが出始めたということか〉
《そういうことになるな》
この話を聞き、忍壱は、混乱し始めた状況を整理すべく、さらに質問を行った。
〈……我々が見つけた『使っていない自動人形』は10種類あったが、『メメンタス』は8人の集合体だという。この差は何なのだ?〉
《2種類は執事と侍女だな》
〈やはりそうか〉
錯乱した『メメンタス=フェルヘテ』の命で襲ってきた侍女と執事型の自動人形がそれであった、ということのようだ。
〈……執事と侍女か。整備や保守点検はどうしているんだ?〉
《執事自動人形がそれを行っている》
〈ええ……?〉
それなら『人間並み』という身体能力はマイナスにしかならないと忍壱は呆れた。
そして、どうやら『始祖』の拘りは病的なほどに偏っているようだと改めて思ったのである。
〈……混乱を整理するため、もう少し質問をさせてくれ〉
《いいだろう。情報の整理と統合は重要だからな》
〈感謝する。……君たちは『自動人形』という呼び方をしているが、『意志を持つ操り人形』でも『傀儡人形』でもないのは何か理由が?〉
《ほう、その呼び名を知っているか。……まず第1に、我々は『意志を持つ操り人形』という呼び名をあまり好まないこと。第2に、『意識を移して操る』わけではないから『傀儡人形』ではない》
〈なるほど?〉
《そして、これでも外界の様子を知る手段はあったのだ。そこで『自動人形』という呼び方を知り、気に入ったというわけだ》
〈なるほどな〉
《納得したか?》
〈ああ〉
《ならば、残る者たち用の自動人形製作を依頼したいのだが》
〈そうだな〉
そういうわけで、再び蓬莱島では自動人形製作が始まるのであった。
* * *
「もう大分慣れたな」
「ん、最初の侍女自動人形を入れたら6体目」
「くふ、頼られてるねえ」
「まあこれで友好関係が結べるならな」
なんだかんだ言っても、始祖は貴重な情報や知識を持っているからだ。
「今度の『サフラー』の自動人形は女性、60歳相当……か」
「ん。身長は155.4センチ、体重は44.1キロ……」
なぜか、女性型の自動人形に関しては、細かな仕様が出てこない。
「そこは『始祖』といえど、女心、かも」
とは、エルザの言。
それはさておき。
製作のトータル時間は既に1時間を切っている。
そして『職人』に運ばせるのも同じ。今回の担当は『職人』106だ。
「さて、評価はいかに」
それを待つ仁たちであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
また、蓬莱島の工作箱 も急遽更新しました。
https://ncode.syosetu.com/n0493fy/
ハロウィンですね……




