73-33 敵を知り己を知れば……
サブタイ、出典では 彼を知り己を……なんですね
『ルセネト』が要求する項目がやや少なかったことと、4体目であることから、1時間掛からずに自動人形は完成した。
「よし。『職人』104、運んでいってくれ」
「承りました」
『御主人様、大分向こうの様子もわかってきましたね』
「そうだな」
『おそらく『メメンタス』とは、複数の『始祖』の……『自我』とでもいうものを宿した魔導頭脳なのでしょうね』
「そういうことだろうな」
「くふ、でもなんで不安定になるんだい? やっぱり肉体がないからかい?」
「サキの言うとおりだと思う。人間の……『始祖』も人間だから……精神は、身体がないと耐えられないんだろうな……」
そのため、個人差はあるものの『メメンタス』内の『始祖の自我』は不安定になっていたんだろう、と仁は推測した。
その差は、1つには、失敗作にせよ自動人形に『自我』を移したことがあるかどうか、にあるのではないかとも想像している。
「ん、一時的でも『身体』を所有していたなら、精神的な消耗は少し緩和された、のかも」
『エルザ様のご想像どおりかもしれませんね』
「だとしたら、全員分の『身体』を作ってやったら何か変わるんだろうか?」
『はい、御主人様。おそらくですが、友好関係を築けるとは思います。ですが、『脅威』をなんとかしませんと』
『保安措置』……『ポーセ』の無力化もしくは正常化が喫緊の課題である。
だが、そのためには『メメンタス』からの情報提供が必要で、そのために自動人形を作ってやり、信用を得る……というのが現在の仁たちであった。
『あと1体か2体作ってやれば、『メメンタス』ももっと協力的になるでしょう』
「だといいな」
* * *
その『メメンタス』は。
「ああ、これはいいわね」
落ち着いた大人の女性といった雰囲気の『ルセネト』。
「ありがとう。あなたたちの製作者に感謝を」
〈満足いただけたようでよかったですよ〉
《……忍壱よ、次は私だ》
〈名は?〉
《『テプヘレス』だ。要求する仕様はだな……》
* * *
「身長169.6センチ、体重は52キロ、か。やや痩せ型だな」
「ん。外見年齢が75歳、白髪、黄色の目。つまり、老人」
「こうしてみると、廃棄倉庫にあった自動人形の年齢や外見がバラバラだったのも納得だな」
そんな話をしながら、仁たちは4体目の『始祖自動人形』を製作していった。
もうコンスタントに1時間を切る製作速度である。
「それじゃあ『職人』105、頼むぞ」
「はい、お任せください」
そして『職人』に運んでもらうのもこれまでと同じであった。
* * *
「うむうむ、これこそが『身体』じゃな!」
『テプへレス』もまた、新たな『身体』を気に入ったようだ。
〈……これで納得してくれたか?〉
《次は私の……》
『メメンタス』が発言しかけたが、忍壱はそれを遮った。
〈待ってくれ。そちらの要望を連続で叶えてきたのだから、少しはこちらの欲する情報を教えてくれ〉
《……ううむ、それも道理か。わかった。何が知りたい?》
〈『ポーセ』について、もう少し詳しく〉
《わかった》
今回『メメンタス』のスポークスマンになったのは『ジェドエフ』という、最初に言葉を交わした『始祖』であった。
それはさておき、保安措置『ポーセ』についての情報である。
〈……まず、こちらから質問したいのだが〉
蓬莱島側のスポークスマンはそのまま忍壱。
《よかろう。何が知りたい?》
〈荒らされた場所に残っていた『床に空いた細かな穴』『天井に残された鞭らしき跡』『熱兵器』に関してだ〉
《ほほう、そこまで調べがついているのか。やはり優秀だな》
『メメンタス=ジェドエフ』は感心したように言い、次いで説明を始めた。
《我々が設定したことしか説明できぬが、床の細かい穴というのは懲罰用ゴーレムの足裏にあるスパイク跡だと思う》
〈やはりそうか〉
それは仁たちの想像通りだったようだ。
《そのスパイクは、蹴り技にも有効となる》
〈そうだろうな〉
《そして鞭らしき跡、と言ったな? それは正しい。懲罰用ゴーレムの3型は鞭を使うからな》
〈やはりそうか〉
予想は当たっていた、と忍壱は納得した。
《さて、熱兵器だったな。これは対象の温度を上げていく兵器だ。最大で3000度くらいまでは上がる》
〈そんな兵器も付けたのか〉
《これの特徴は、物理障壁でも魔法障壁でも防げないことにある》
〈何だって……〉
熱線……赤外線に類する光線なので、透明な障壁は通り抜けてしまうというのだ。
〈厄介だな〉
《……済まぬな》
思わず忍壱がぼやくと、『メメンタス=ジェドエフ』は自分たちの不手際を詫びるのだった。
* * *
「聞いたか、老君?」
『はい、御主人様』
蓬莱島でももちろんその情報は聞き逃さなかった。
「鞭とスパイクはいいが、熱線兵器か……」
『これまで、火属性魔法を使う敵はいましたが、光線系は初めてかもしれませんね』
「だな」
自分たちは使っているので、防ぎ方もわかっている。
要は波長の長い電磁波は通さないように調整すればいいのである。
『鞭は……礼子さんはもちろん、ランド隊……いえ、蓬莱島の全ゴーレム・自動人形は見切れますね』
「だよな」
仮に鞭の先端が音速を超えていたとしても対応できるはずであった。
「スパイクも……おそらくアダマンタイトだと思うから、やりようはあるな」
『はい、御主人様。知っていれば対応は可能です』
初見殺しのような攻撃でもない限り、『魔法工学師』には通用しないのである。
『そうしますと、忍壱にはもう一つ質問させましょう』
「うん? どんな質問だ?」
『はい、警戒すべき武器……いえ、装備されているはずの武器全般についてです』
「ああ、確かにそれは有意義だな。ぜひやろう」
「承りました」
早速老君は忍壱に内蔵魔素通信機で連絡をするのであった。
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