73-32 危機感と、見通しの甘さと、その果ての窮状と
『メメンタス=クフカエフ』の説明はまだ続いている。
《我々は、自分たちで独自の基地を作った次世代に、少々危機感を覚えていた》
〈それで保安措置を?〉
《そうだ。独立した魔導頭脳を作り、判断基準を厳しく設け、幾重にも安全措置をほどこした》
〈それが反乱を起こしたというのか?〉
《反乱とは少し違うかもしれない。むしろ誤動作と言ったほうが適切だろう》
言い方を変えようが、危険性には変わりはない。
忍壱は、もっと情報を集めようと考えた。
〈誤動作? 原因は?〉
《不明だ》
〈不明って……〉
製作者としてそんなことでいいのか、と忍壱は『メメンタス=クフカエフ』に言った。
《『メメンタス』が誤ったときにも正せるようにと完全独立させたのでな……》
〈何もフィードバックがないというのか?〉
《そうなのだ。自己判断や自律性、それに自己診断、自己修理、加えて自己進化できるようにしてあった》
〈……リミッターは?〉
やりすぎないようにするための安全措置である。
仁は……というよりアドリアナ式には必ず設けられている。
《付けなかった》
〈何故に!?〉
《保安機構なのに弱体化するような装置は付けたくなかったからだ》
〈……〉
わかるようなわからないような話であった。
ここは『始祖』の考え方と割り切るしかない、と、忍壱および傍聴している仁たちは思い、先を促した。
《その保安機構……呼びづらいので仮に『ポーセ』としておこう。その『ポーセ』が次世代の作った基地を1つ、滅ぼした》
〈……我々が『オエステ3』と呼んでいる基地だな?〉
《『オエステ3』……確かにそう呼ばれていたな》
〈……そうか〉
あの惨状を作り出しのは保安機構……『ポーセ』だったのだと、ようやく真相が掴めたわけだ。
だが、まだ疑問は残っている。忍壱は、それを確認することにした。
〈……『オエステ3』の管理魔導頭脳は分解されたと言えるほどのレベルまでばらばらになっていたが、そこまで徹底するものなのか?〉
《何? ……いや、そこまでの破壊は指示されていないはずだ》
〈すると独自の判断か……〉
《そうなるな》
〈……なら、鉱山で鉱夫ゴーレムを働かせていたのはどういうことだ?〉
《何?》
忍壱の質問を、『メメンタス=クフカエフ』は理解できないようだった。
〈説明しよう。……『オエステ3』の地下にある鉱山では、5つある主坑道のうち1つだけが稼働しており、そこには黙々と採掘をするゴーレムがいた〉
《ふむ》
『A』と『B』が確認した鉱山の様子を、忍壱は説明したのだった。
《……何と、そんなことになっていたのか》
〈そうだ。『オエステ2』の『A』と『B』によれば……〉
『オエステ3』の惨状を説明する忍壱。
《……ううむ……それは『ポーセ』が、独自の『何か』を作るため、素材を欲したということなのか……?》
〈……は?〉
忍壱は、『オエステ3』地下の鉱山で採掘した鉱石が、『ここ』に運び込まれていることを説明した。
《な、何!? それは本当か!? …………いや、こんな嘘をつく必要はないし、心当たりもある……うむう……》
その時、『メメンタス=クフカエフ』の雰囲気が変わった。
《……『クフカエフ』、早いところ自動人形に『自我』を移してみろ。うまくいったなら次は俺だ》
〈……交替したのか?〉
《そうだ。俺は『フェルヘテ』だ》
〈先程、侍女と執事に命じ、我々に襲いかからせた『始祖』だな?〉
《ふ、覚えていたか。あの折の非礼は詫びよう。まさかお前の製作者がここまで精密な自動人形を作れるとは思ってもいなかったのでな》
そこに声が聞こえた。自動人形からのものだ。
「……うむ、これはいい。肉体を得た感じがする」
《そうか。『クフカエフ』、何か不具合はないのか?》
「そうだな……強いていえばこの声だな。もう少し低いといいのだが」
「それは簡単だ。調整しよう。…………失礼するぞ」
待機していた『職人』102が、声帯部分の微調整を行う。
「どうだ?」
「うむ。……おお、これでいい。気に入った」
《……そうか。……来訪者よ》
〈忍壱だ〉
《そうか。忍壱よ、俺にも身体を作ってもらえるか?》
〈私の製作者に敵対しないなら〉
《……それは約束しよう。『クフカエフ』、立会人になれ》
「いいだろう」
《俺は忍壱の製作者に敵対しないことを誓う。……これでどうだ?》
〈わかった。要求仕様を聞こう〉
こうして、2体目の『始祖』型自動人形の受注が決まったのである。
* * *
「『始祖』2体目か」
蓬莱島では、仁が喜々として製作に取り掛かっていた。
「ええと、身長は178.3センチ、体重は72.9キロ……比較的がっしりしているな」
「ん、確かに」
「男性で、年齢はアルス先住民でいう35歳相当……壮年だな」
「くふ、何度もやってると慣れてくるもんだねえ」
髪色、目の色は同じく銀髪で黄色の目、これは『始祖』に共通だった。
そして、今回はトータル1時間で完成させる仁であった。
「よし、『職人』103に運んでいってもらおう」
『向こうでの戦力が増えますね』
「それも狙いだ」
『ランド隊』に比べれば、『職人』の戦闘力は低いが、それでも一般的なゴーレムの数倍はパワーがある。
工学魔法も使えるので、搦手を含めれば、かなりの強さを誇る。
3体目の『職人』ゴーレム、103が送り出された。
* * *
《おお! これは見事だな!》
〈……気に入ったか? 『フェルヘテ』〉
《気に入ったとも。さっそく『自我』を移そう》
『メメンタス=フェルヘテ』は自動人形に『自我』……つまり記憶と思考パターンを転写した。
「……うむ、これはいい。……忍壱、貴様の製作者には感謝だな」
〈それはよかった〉
ここで、またしても『メメンタス』の主導意識が入れ替わる。
《……私は『ルセネト』。私の分も作ってもらえるでしょうか?》
〈もちろん。仕様を教えてください〉
《それでは。……身長は160センチ、体重は48キロ。年齢は先住民換算で30歳》
『ルセネト』は『クフカエフ』や『フェルヘテ』ほどには細かい注文をつけてはこなかった。
そして、第一印象どおり、女性であった。
* * *
「……それじゃあエルザ、外見の仕上げは頼むよ」
「ん、任せて」
蓬莱島では4体目……『始祖』仕様では3体目……の自動人形製作が開始されたのだった。
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本日10月29日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
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を更新します。
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20201030 修正
(誤)《保安機構なのに弱体化するような装置は付けたくなったからだ》
(正)《保安機構なのに弱体化するような装置は付けたくなかったからだ》
(誤)あの惨状を作り出しのは保安機構……『ポーセ』だったのと、ようやく真相が掴めたわけだ。
(正)あの惨状を作り出しのは保安機構……『ポーセ』だったのだと、ようやく真相が掴めたわけだ。




